お悩み
俺はロイドさんに別れを言ってギルドを後にした。
さてと、もうこの町でのやることは終わりかな。またザールに戻って色々と研究やらをするか。
そう思って【念話】でアリア達に連絡を取った。
合流した2人はそれなりに町を満喫したみたいで楽しそうだった。ちょっと前まではずっと迷宮に籠ったりしてたしな。新しい町なんて来るの久し振りだったろう。
俺は誰もいない路地裏で【転移の扉】を使う。
先にアリアとシータを影に入れてから俺も影に入る。
一瞬でザールの宿屋の一室に移動出来た。エデバラの町に行く前に泊まっている宿屋の部屋にちゃんと魔法具はセットしておいた。ホントに便利なスキルだよな。どこか安全なところにこの魔法具を置いておいたら緊急避難も一瞬で出来るんだろうな。
じゃあまた俺は俺でスキルとかの研究に入るとするか。
今の所【八百万のスキル】が新しくなって思いつくことはやっていってる。
いくつものスキルを組み合わせて使えそうなスキルを作ってみたり、職業スキルもその1つだな。
後は魔法とスキルの組み合わせだな。これも色々と出来てきている。
こうやって行けば強くなってるってことなんだろうか。
確かに出来ることは格段に増えたと思う。だがな、決定的な何かが足りていない気がするんだよな。
俺の中では知識とかそういう事の様な気もするんだけど。わかっていないことが多すぎるんだよ。情報とかあれば対策を取ったり出来るんだが。
【八百万のスキル】についてもまだまだ分かってない所も多いし。俺は普通にどんなスキルでも好きな時に付け替えられるだけのスキルと思ってたけど何か違う気がするんだよな。根本的な何か・・・。
スキル、魔法・・・。元々どういうものなんだろうか。スキルでこの世界は誰もが持っていて、しかも生まれた瞬間に1つ持って生まれるんだもんな。
魔法は・・・、あれ?魔法って火魔法なんかのスキルを持ってるから使えるようになるんだよな。
ってことはある特定のスキルの力を一部分だけ取り出したようなものか?スキルがなかったら魔法って使えないもんな。スキルがあるから魔法が使える。ひょっとして魔法にスキルを乗せることが出来ずに、スキルに魔法を乗せることが出来るって言うのはそれがあるからか?
大本であるスキルに他のスキルの一端を組み合わせることは出来ても、ある力の一端という魔法にスキルという大きな力を乗せることが出来ない、そういう事じゃないんだろうか。だから【転移の門】や【絶対防御壁】はスキルとしてしか使えないんじゃないか。そう考えると少し納得できた気がする。
待てよ。魔法がスキルの力のある一部分としたら、他のスキルのある一部分だけを切り取って使うことが出来るんじゃないだろうか、魔法と似たような感じで。そうすれば【魔法陣作成】なんかで魔法具として作れるんじゃないか?いや、もしかしてそれが今ある伝説級の魔法具がそれじゃないのか?
ギルドカードの使用者のMPを吸いとったりするのは【魔素吸収】っていうスキルの力の一端を使ったとか。使用者を特定するのは【目標補足】の一端を使ったとか。昔にそう言う風に作られた物なんじゃないか。だとしたら俺にも伝説級とされる魔法具とかも作れるようになるってことか。
俺も【分割】のスキルとかを駆使すれば作れるのかもしれないな。
いや、待て。そもそも俺は既にスキルの一部を切り取って魔法にしている。【転移の門】で目的地として作った魔法具に込めた魔法がそうなんじゃないか。【分割】と【魔法作成】を自分で勝手に組み合わせて使ってたんじゃ。
新しい武器に使ったのもそうだよな。使用者のMPを吸いとる力って言うのは既に誰かがスキルの一部を魔法に転化したものじゃないのか。その魔法を俺が解析して使ったんだ。元々スキルから力を取り出して魔法に出来たってことか。【退魔結界陣】の魔法を作った時に気付くべきだった。あれも単なる光魔法の1つだ。その中に相手を特定し魔素を吸収するって効果がある。それはその効果持つ魔法だったから組み込めたんだ。あぁ、もうなんて今まで気づかなかったんだ。馬鹿馬鹿馬鹿、ダイゴのお馬鹿。
でもその頃はそれがスキルの力の一部だってことをわかってなかったしな。
しかし【八百万のスキル】も持たずにそんなことを出来た奴がいたってことなのか。いくつかの珍しいスキルを持っていないと出来ないはずだ。
全くなぜこういう事を思いつかなかったんだ。何となくこういうことできないかなって考え付いて、深く考えずにスキルの力で出来てしまうから何故そう出来たかなんかを考えてなかった。何かしらの法則や、論理は必ず存在するはずなのに。
あー、もう頭がこんがらがってきた。俺は一体なにをどうやっていくのが正解なんだろうか。誰か教えてくれないんだろうか。あなたの考えてることが正解ですとか、違ったら違ったでいいから教えて欲しいもんだ。合ってるか間違ってるかどうかもわからない状態なんだよ。
神レスティアに聞いたら教えてくれるんだろうか。でも聞く方法もないしな。俺は【神託】使えないし、アリアも多分もうこの間の様に自分の身にレスティアを降ろすことは出来ないだろう。そんなことが出来るんだったらレスティアもあそこまで焦って話なんてしないだろう。いつでも話せるんだったら、次の機会にとかいうだろうしな。だからアリアには頼まないし、神器も渡さない。なんか無理してでもやりそうだ。
誰かこういう相談に乗ってくれたりしないんだろうか。と思っていたらとんだことになった。
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「ベティーちゃんのお悩み相談コーナー~。ドンドンドン、パフパフ~。」
「えっとこれは一体?」
前にベティーさんと食事しに来た店に呼び出された。席にはベティーさんとアリアが座っていて、俺も席に着いたらいきなりベティーさんがそう言った。
「言ったでしょ、お悩み相談よ。」
「はぁ。」
俺は適当に相槌を打った。お悩みって言っても俺が悩んでることにベティーさんが答えてくれるとは思えないんだけど。
「この間行った町で何かあったみたいね?」
「エデバラの町でってことですか?」
「そうよ、アリアンヌから聞いたもの。ダイゴっちが元気ないって。」
「いや、別にそんなことないですよ。まぁ色々とこれからの事を考えてるだけですよ。」
「それよ。何か悩んでることがあるんだったらお姉さん聞くから何でも言ってちょうだい。」
「ベティーさんに相談するような悩みじゃないって言うか・・・。」
「あら、酷い。そんなの言ってみないと分からないでしょ。」
「いや、まぁ。そうかもしれないですけどね。
単純に色々とわからないことがあって何をどうしていけばいいかわからないんです。
誰も俺がやってることを正解だとか、間違ってるとか言ってくれる訳でもありませんしね。」
「ホントに普通の悩みなのね。
でもそれって解決方法は簡単じゃない。」
「そうなんですか?それっていったい?」
「どうすればいいかわからないなら、片っ端から思いつく事やっていけばいいのよ。」
「そんな事ですか。」
「そうよ、だってそれしかないじゃない。人の悩みなんて誰かがちゃんと教えてくれることなんてほとんどないのよ。そんな事の方が稀よ。だから誰かに正解を求めないで自分で探すしかないと思うわ。そうなった時には立ち止まってても仕方ないから思いつく事片っ端からやってみるべきよ。その中で答えが見つかるかも知れないじゃない。」
「そうかもしれませんが・・・。」
「何を怖がってるの?失敗すること?無駄になること?」
「それは、全部かもしれません。」
「ダイゴっちって慎重派なのね。でも失敗したって取り返せるわよ。無駄になることなんて1つもないわよ。次に同じことがあればそれを糧に乗り越えられるんですもの。」
「そうでしょうか。」
「当たり前よ。こんな私でされ生きていけてるんですもの、きっと大丈夫よ。それにしてもそんなことで悩むなんてダイゴっちって結構おセンチなのね。」
「そうみたいですね。」
「まぁその件はいいわ。後は自分で解決できるはずよ。
それよりも私が聞きたいのは別の話なの。」
「別の件って言われても・・・。アリアから何か聞いてるんですか?」
「まぁ何となくわね。」
「特にその事で悩んでることはありませんよ。」
「えぇ、悩むじゃなくて、ショックだったとか?」
「うっ、まぁそう言われるとそうだったかもしれませんけどね。」
「その会いに行ったっていう彼の事好きだったの?」
「好き・・・、まぁ好きか嫌いかだと好きだと思います。」
「久し振りに会いに行ってみたら結婚してて、子供も出来てるなんてショックだった?」
「そう、ですね。喜ばしいことなんでしょうけどね。」
「ダイゴっちの気持ちを当ててあげましょうか?
その人の事を凄く遠くの人になったように感じたんじゃない?手の届かない様な所へ行っちゃったとか、そんな感じ。
さらに言うとその人が幸せになるって言うのに素直に喜べない自分がいて、そんな自分にも嫌気がさしたとか。」
「なんでそんな事・・・?」
「なんでそんなことが分かるのかって?そりゃ私も経験したもの。これでも人生色々と経験してるのよ。
そうよね、いくらこっちが好きでも結婚して、子供が出来るとね。向こうはゴールしちゃったって感じよね。自分だけ置いてけぼりで。
しょうがないって気持ちにもなる、けど自分には絶対に到達できないゴールに行っちゃったんだもん。なんだか寂しいわよね。」
「それは・・・。」
「こういう言い方するのは悪いけど、そのゴールなんてものは自分が勝手に決めただけなの。相手もそのゴールを目指してるなんて思うのはお門違いもいいとこよ。皆が皆同じゴールに向かってる訳じゃないの。
でもね、きっと同じゴールに向かって進む人は現れるはずよ。それも1人だけじゃないかもしれない。だから立ち止まっちゃだめよ。歩いて行く内に同じゴールを見て、一緒に歩いて行く人が見付かるから。
それにね、ゴールしちゃったって思ってる相手も、もしかしたら相手はダイゴっちとは別のゴールを見てるのかもしれないわよ。ダイゴっちが思ってるゴールと違う道を一緒に歩いていると思ってるのかも。ダイゴっちは相手が先にゴールして、自分は置いて行かれていると思うかもしれないけど。相手はまだダイゴっちと別のゴールに向かって歩いている最中だって思ってるかもしれない。
だから相手が遠くに行ってしまったとか、自分は置いてけぼりを食ったって言うのはダイゴっちが勝手に思ってるだけなのよ。そう考えたら寂しくなんてないしょう?」
「なんか・・・、凄いですね。」
「あら、それは褒め言葉かしら?」
「えぇ、そう考えたらいいのかって思ったらなんだかスッキリしました。
俺が勝手に決めたことをそうなんだと思い込んで、勝手にショックを受けてたんですよね。
別にホントに離れて行ってしまう訳でもないのに。
結婚して、子供が出来たって聞いた時になんだか拒絶された気がしたんですよね。俺とは相容れない存在なんだって。そんなの俺が勝手に思ってるだけなんですよね。」
「そうよ、そんな付き合い方してないでしょ?向こうもきっとダイゴっちの事思ってくれてるわよ。相手が思う最大限でね。」
「そんなの分かるんですか?」
「ダイゴっち見てたらわかるわよ。それに一緒にいる人達もね。まだ一緒にいる時間は少ないけどそれぐらいちゃーんとわかりますぅ。こう見えても人を見る目はあるのよ。
私から見て羨ましいくらいに仲良しなんですもの。」
「なんか、ありがとうございます。まさかこんな話が出来るとは思いませんでした。」
「あら、私をなんだと思ってるのかしら?こう見えて、お姉さん経験豊富なのよ。今度試してみる?」
「それは遠慮しておきます。」
「あら、残念。じゃあ別にいい人紹介してくれたらいいわよ。」
「いい人ですか?そう言われてもな~。どんな人がいいんですか?」
「そうねぇ~、結構色々好きなのよ。王子様タイプもいいし・・・。最近はワイルドな感じもいいかもって思えてきたわ。」
「ワイルドですか・・・。あぁ、そう言えば1人話をしていて思い出しました。その人も俺の相談に乗ってくれてたりして、こうしてきっちり答えてくれてたんです。」
「えっ!?マジマジ!?どこ?どこにいるの、私の未来の旦那様は。」
「いや、そうなるとは限りませんし。この町の人でもないですよ。」
「そうよ、ならないとも限らないんだから。ねぇ~、紹介してよ~。」
「えぇ?う~ん、どうかな~。奥さんはいなかったはずだけど。」
「大丈夫、紹介だけしてくれたら後はこっちで勝手にするし。」
「いや、なんかさっきから急に目付きが変わってて怖いんですけど。なんか獲物を前にしたドラゴンみたいな感じなんですが。」
「いやん、恋する乙女のつぶらな瞳って言ってね。」
「まだ会ってもないじゃないですか。」
「だとしてもよ。まだまだ恋に恋してる年頃だも~ん。」
「そうですか・・・。」
「まぁ何はともあれダイゴっちのお悩みも解決したみたいだから、これにてベティーちゃんのお悩み相談室は終了ね。
結論は立ち止まってても仕方ない。思い付く限りやってみなさいな。失敗してもいいじゃない、周りには支えてくれてる人がいるわよ。それにダイゴっちならきっと乗り越えていけるわ。
そして目指すゴールはきっと1つじゃない。それぞれが思うゴールが色々あるの、でもきっと同じゴールを目指す人は現れるってね。」
「そうですね。わざわざありがとうございました。それにアリアもね、一応心配してくれてたみたいだから言っておく。」
「そんな、私はまだまだでしたわね。是非ともベティー様には色々とご教授頂きたいものですわ。」
「いや、これ以上変な知識をつけられても俺が困る。」
「それはおいおいとして。
それよりもよ、お悩み相談室も終わったんだからさっきのナイスガイの事もっと聞きたいわ。
どんな人なの?」
そんな感じで俺はその後ベティーさんからの質問攻撃にあった。
ついには渋々だが会いに行くときには一緒について行くことを了承してしまった。
ごめんなさい、俺には止めれませんでした。後は頑張ってくださいね、そう言うしかないよね。まだ先の話なんだろうけど。
でもこんな相談にも簡単に答えちゃうなんて俺の周りの大人の人は凄いな。
俺もいつかはあんな風になれるんだろうか。
お読み頂きありがとうございます。
ベティーさん男前だな~。そんなことを書きながら思いました。
そしてダイゴがかなり混乱してます。
作者も混乱してます。
いや~、どこでどの話を書いたかあまり覚えてなかったりするんですよね。だからホントはそこで説明しないといけないことをすっ飛ばして、後から気付いて補足説明するという流れ。
あれですよ、帳尻合せで設定変えてる訳ではないですよ。最初から細かい設定は考えているのですよ。
多分・・・。




