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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
165/237

商会2

「えっと、じゃあ俺はこれからこの町のお偉いさん達と会ってくるね。」



 俺はそうアリアとシータに告げた。

 俺達はキースの家から出て通りにいる。

 アリアがキース夫妻のお祝いをしてから俺達はケビンさん達に会いに行くと言って2人と別れた。

 2人からは子供ができるまでに子供の名前を考えてまた来て欲しいと頼まれた。俺は考えてはみると伝えておいた。

 それからキースの家を出てこうして通りに立って話してる訳だ。



「商売の話とかになるからあんまり楽しくないと思うし、2人はどこかでご飯食べるとか、買い物してみるとかで時間を潰しておいてくれ。初めて来た町だから目新しいものがいっぱいあると思うし。

 終わったら【念話(テレパス)】で連絡するよ。」


「あの、大丈夫でしょうか?」



 アリアが何か心配そうに聞いてきた。あぁ、そうか。



「そうだった。お金渡しておくよ。シータも店潰すほど食べ過ぎないようにな。」


「いえ、そうではなく。」


「違うの?じゃあどういうこと?」


「ふぅ。いえ、なんでもありませんわ。

 わかりました、では後程。」



 アリアは俺からお金の入った袋を受け取ってシータの手を取って歩き出した。

 さて、俺も行くとするか。

 俺はアンダーソン商会がある方に足を向けた。


 しばらく歩いてアンダーソン商会のあった建物の前まで来た。

 すると看板には「タイタン商会」の文字があった。そう言えば俺が商会を立ち上げたんだっけ。なんだかもう遠い昔の様な気がする。

 ドアを開き中に入る。景色は前来た時と変わってはいなかった。そのまま使ってるってことだろうか。

 手が空いてそうな従業員を見付けたので声を掛ける。



「えっと、ケビンさんに取次ぎをお願いしたいんです。冒険者のダイゴって言ってもらえればわかると思います。」



 そう若い従業員に告げた。その従業員は特に俺の事を不審がることもなく店の奥へと消えていった。行商隊とか出来たし、俺みたいな冒険者のカッコをした人もいるから変に思わないんだろうか。

 しばらくすると奥から急いで走ってくる音が聞こえる。



「どうもダイゴさん。いや、いきなり来られるなんてびっくりしました。」



 そう言いながら現れたのはケビンさんだった。その後ろにはエリックの姿も見えた。



「いきなりですいません。少しお話したいことがありまして伺いました。お時間取って頂いてよろしいですか?」


「そんな、当たり前じゃないですか。ダイゴさんはこの商会のトップなんですから。」



 ケビンさんがそう言うと周りの従業員が一斉に俺の方を見た。なんか恥ずかしいな。



「いや、そんなの形だけですって。とりあえずゆっくりお話ししたいんですが。後可能であればヒューイさんも同席して頂けたらな~、なんて思うんです。」



 俺がそう言うとケビンさんは近くにいたエリックに指示を出していた。エリックは直ぐに店の外に出て行った。



「すぐに呼んでこさせます。ヒューイも一緒にという事はまた何か商売の話でしょうか?」


「えぇ、そうですね。」



 俺が言いたいことはケビンさんはすぐに分かった様だ。流石だな。



「では、こちらにどうぞ。」



 ケビンさんはそう言って俺の前を歩きだした。俺も後に続く。

 通されたのは応接室だった。今回は外で話じゃなくてもいいか。



「どうぞおかけください。」



 ケビンさんにソファを勧められたので座る。俺の前にケビンさんも腰かけた。



「お話はヒューイが来てからにしましょうか、それまでは最近のお話を伺っても?」


「そうですね、結構色々とありました。」



 途中秘書っぽい人がお茶を持ってきてくれた。それを飲みながら俺は当たり障りのない近況をケビンさんに話した。

 しばらく話をしているとドアをノックされた。



「エリックです。ヒューイさんをお連れしました。」



 ドアの外からエリックの声が聞こえた。そして扉が開きエリックとヒューイさんが部屋に入ってきた。



「ヒューイさんお久しぶりです。」



 俺は立ち上がり、ヒューイさんに挨拶した。



「えぇ、お久しぶりです。いきなり呼び出されるとは少し驚きました。」


「すいません、いきなりお呼び立てしてしまって。町がどんな様子か気になったので来ちゃいました。」


「とりあえず2人とも座って話しませんか?」



 ケビンさんに言われて俺とヒューイさんはソファに座った。



「それでタイタン商会はどうですか?」



 俺から話を切り出す。



「そりゃあもう大変な勢いですよ。ここまで町が発展するとは夢にも思いませんでした。」



 そう答えたのはヒューイさんだった。



「順調ってことですね。」


「えぇ、【ソルトプラント】から取れる塩はどこに行っても好評です。売れ行きも申し分ありません。

 それに行商隊もかなり活躍してます。今まででしたら町から出た商人の1割ぐらいは戻ってこないこともありました。それが今は一切ありません。それに新しい町への開拓も進んでいます。少ない人数で体力もあるので機動力が違います。以前の様に護衛を代わる代わる見付ける必要ありませんしね。

 以前はどこからどこまでの間の護衛で、なんて契約で雇っていましたから。今はそのまま好きな所へ動ける訳です。」


「なるほど、そう言った利点もあったんですね。」


「当初の収益見込みの2倍程になりました。」


「そんなにですか?何か問題点とかは出てきてないんですか?」


「問題点ですか?そうですねぇ、問題点と言えば町の方でしょうか。」


「町ですか?」


「えぇ、今はかなりの商人や物なんかが町に入ってきて、溢れかえってるのが現状です。

 この町へ越して来たいという商人がいたりしますし。ただ住む場所なんかはすぐに用意できる訳でもありませんし。こちらとしても急いで人の住める居住区を作ろうとしているんですが、なかなか捗らないんです。一気に人が集まり過ぎたってことでしょうか。」


「そんなに商人の人が集まるんですか?ここにはタイタン商会っていう大きな商会があるから競合を避けるために別の町に行くのかと思ってましたが。」


「あぁ、それはですね。行商隊が荷物だけでなく商人も運ぶことにしたんです。」


「それは一体?」


「ある町に行った時に希望する商人を馬車に乗せてこの町まで連れてくるんです。そしてその商人はこの町で商売をしたりする。行商隊が行く町へ一緒に乗せて行ったり、帰る時も行商ついでに送って行ったりもします。」


「そんなことが。それだったらこの町に商人が集まりますね。

 しかし何故そんなことを?その町の名産品なんかはタイタン商会で仕入れて持ち帰って売ればいい話ではないんですか?」


「それは、まぁそうなんですがね・・・。」



 ケビンさんとヒューイさんが困った表情で顔を見合わせる。



「儲けだけを考えたらそうでしょう。他の商人が売ったものに関してはこちらには一切入ってきません。馬車に乗せるだけの料金はもちろん頂いてますけど、それも護衛の冒険者を雇うよりかなり安い金額です。

 申し訳ありません。これは私達のエゴかもしれません。

 私達だけが安全に商売できる。だが他の町の商人は護衛に高い金を払い、危険な行商をする。それが見ていられなかったんです。

 ダイゴさんに相談もせず勝手な真似をして申し訳ありませんでした。」


「いや、そんな。別に俺は責めたりしませんよ。ただどうしてかなって気になっただけです。

 それに、それは素晴らしいことだと思います。

 俺自身そこに気付くことが出来ませんでした。

 俺はこの町だけが良くなればいいって思ってただけなんだって。

 そうですよね、他の町で苦しんでいる人がいて、自分達に何か出来るのであれば手を差し伸べるべきですよね。お2人は当然のことをされているだけです。

 それに全てまかせっきりの俺がどうこう言える事じゃないですよ。」



 俺は頭を下げる2人に慌ててそう言った。



「良かった。ダイゴさんならわかってくれるとキースさんも言ってたので。」



 ってキースこの話を知ってたのかよ。だったら言ってくれたらいいのに。俺が2人に会いに行くのが分かったから言うのが面倒だったんだろうか。というか結婚報告の事で忘れていた方かもな。



「えぇ、タイタン商会に問題がなければいいんです。何かあって俺が出来ることがあるのであれば手を貸そうと思ってただけなので。」


「そうですか、しかし私とヒューイ、2人に話があるってことならば、別のお話もあるのではないでしょうか?」


「あぁ、そうですね。聞くところによると【ソルトプラント】も順調の様なので、別の香辛料の木などもお渡ししようかと思ってたんです。それでまた商品を増やせるかと思いまして。」


「「なんですって!?」」



 2人共俺の言葉に驚く。

 


「ケビンさんには会った時にお話ししましたよね?別の香辛料の事と、大量の蜜が取れる花の話とか。」


「そう言えば・・・。【ソルトプラント】があまりに衝撃的過ぎて忘れていました。」


「【ソルトプラント】である程度生産ラインや行商ルートも確立できたでしょうし、新しい商品を作れるようになっても対応できる頃かなって思いまして。」


「えぇ、まぁ、それは。実物を見ない事には何とも言えませんが。」


「例によって俺がスキルによって作った植物なので育成方法も簡単で問題はないと思います。採取方法なんかが違いますけどね。今回はベースになった植物からそう遠くない感じなので【ソルトプラント】を作れるぐらいなら大丈夫でしょう。」



 俺はそう言って【倉庫持ち(アイテムボックス)】から種をいくつか出してテーブルの上に並べた。



「元々の植物を知ってる人だったら簡単に栽培できるでしょう。俺がいじったのは採取できる量を増やしたり、病気なんかに強くしたりってことです。あぁ、でも蜜を作る花の方は少し違うかな。花から袋みたいなところに管が伸びててそこに蜜が集まる様になってます。虫とかを使わなくても人が採取できるようになってます。」


「それはまた・・・。商業ギルドに持っていかないといけませんね。」


「そう言えばそうですね。その点はまたヒューイさんにお願いすることになりますかね。」


「その点はお任せください。それにしても、これは・・・。」


「そうだな、【ソルトプラント】でもあの収益だ。それ以外に、これほどまでの物があればどうなるか・・・。予測も付けられない。」


「流石に俺にも予定がありますので、ここにしばらく残って育て方なんかを教えることは出来ないので。後の事はよろしくお願いします。

 すいません、色々とまた押し付けちゃうことになりますけど。」


「いえ、そんな。これによってまた新たな産業や、商売も生まれるでしょう。それによって得られる恩恵は計り知れないものがあります。単純に食卓も豊かなものになるでしょう。」


「えぇ、そう言えば俺はまた畑を作ったりしなくてもいいですか?後は居住区を作るとか。前みたいに壁で囲んで整地するだけなら直ぐなんですけど。」


「それは、ありがたいお申し出なんですが、その壁を作ったり、整地するという事も誰かの仕事となるんです。そこで雇用が生まれることになりますので、私達の方で何とかします。」


「わかりました。お願いします。

 今回お話ししたかった事は以上です。またご面倒かけると思いますけどよろしくお願いします。」


「いえ、また新しいことへの挑戦が出来るので楽しみですよ。また是非とも様子を見に来て下さい。その時にはもっと大きな町してみせます。」


「はい、楽しみにしてます。」



 俺はそう言って立ち上がった。



「もうどちらかに戻られるんですか?」


「えぇ。今はザールという町を拠点にしています。暫くはそちらですね。」


「戻られる前に是非ロイドにも会いに行ってやってください。私達だけがお会いしたなんて知ったらあいつに何を言われるかわかりませんから。」


「そうですか、じゃあこの後会いに行ってきます。」


「かなり喜ぶと思いますよ。」



 俺は話したかったことを伝えれたのでタイタン商会を後にした。

 そしてその足で冒険者ギルドへ行ってみた。



「こんにちわ。ギルドマスターのロイドさんいらっしゃいますか?冒険者のダイゴって言います。」



 受付でそう伝えた。

 しばらく待ってるとこれまた遠くから走ってくる音が聞こえた。



「久しぶりじゃねぇか。」



 そう言ってロイドさんは俺の前に現れた。



「お久しぶりです。お忙しい所じゃなかったですか?」


「あぁ、そんなもんほっときゃいいんだ。今日は1人か?ガイやブランは一緒じゃないのか?」


「え?えぇ、そうですね。ガイやブランはやることがあるのでザールの町にいます。俺はちょっとキースに会いにと商会に届け物をしに来たんですよ。」


「そうか、って俺に会いに来たってのが抜けてんぞ。」


「はははっ、そうですね。その後ギルドは順調ですか?」


「当たり前だろ。昔に比べてうちに来る冒険者の数は増えに増えたぞ。遠方からもうわさを聞き付けた奴が来るようになったんだよ。」


「それは良かったですね。でもそうなったら依頼の取り合いになりませんか?」


「あぁ、大体の奴はここへ鍛えにやってきてるってのが多いからな。鍛えてから自分が拠点にしていた町に戻って冒険者業をする奴の方が多い。」


「なんか、冒険者ギルドっていうよりも道場みたいな感じですね。」


「そうかもな。でも俺はそれでいいって思ってるよ。強くなった奴が色んな所にいた方が、そこに住んでるやつは安全に暮らせるようになるだろうしな。」


「そう言えばそうですね。」


「そう言えば、どっかの町でギルドマスターやってたガンドロって奴が来たぞ。なんでもお前に勧められたとかなんとか言ってた。」


「ガンドロさんが来たんですね。そうですね、ちょっと色々あってこの町の事、っというかこのギルドの事をお話ししたんです。」


「今も頑張って鍛えてるぞ。会って行くか?」


「う~ん、いえ、やめておきます。そこまでの関係ではないので。」


「そうか、だったらいい。」


「そう言えばこちらのギルドで困ったこととか、何か変わったこととかはないですか?俺で出来ることがあったらお手伝いしますけど。」


「困ったことか・・・。特には思いつかないな。あぁ、冒険者が増えすぎて泊る所がいっぱいだってことぐらいだろうか。」


「あぁ、ケビンさんのとこでもそんな話が出ましたね。商人が町に増えて大変だみたいな。」


「そうだな、この町に一気に人が来るようになったからな。まさかこんな感じで人が集まる様になるとは思わなかった。それもこれも全部お前のおかげだな。」


「いや、俺なんてきっかけ作ったぐらいでしょう。それ以外は全部皆さんに任せてしまってますし。」


「そのきっかけってのが大事だったってことだ。そう言えば師弟契約の話はギルドの上の方に報告しておいた。あれから結構経つから他のギルドでも始めてるところあるんじゃないか。」


「いいですね。そうして皆強くなって行ったらモンスターの脅威も減って行くことでしょう。」


「そうだな。それはそうと、カストの遠征の件は聞いてるか?」



 ロイドさんが声を抑えて言った。



「えぇ、耳に入ってます。ただ色々とあって俺にはまだ魔王を倒せないみたいなんで傍観してるって感じですね。」


「そうなのか?」


「えぇ、神様にそう言われたので。一応これからの事も言われたのでその通り行動しようと思ってます。」


「そうか、しっかりな。」


「ありがとうございます。」



 それからロイドさんと少し話して別れた。またそう遠くない日でこの町を訪れるだろうから、その時にと告げて。

お読み頂きありがとうございます。

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