再会
「よっ、久しぶり。」
俺は久しぶりに見る背中に声を掛けた。
声を掛けられた主が俺の方へ振り向く。
「えっ?兄貴?兄貴じゃないっすか~っ。」
そう声を上げたのはキースだった。
「元気そうだな。」
それはそう言ってキースの所へ歩いて行った。
俺はエデバラの町へ来たんだ。とりあえずベティーさんの服作りももう少し時間がかかりそうだったからやりたいことをしようと思ったんだ。エデバラに来たのもいくつかの目的があったからだ。
「少し話がしたいんだけどいいか?」
俺はキースに言った。今はエデバラの町の中だ。町に着いてから【気配察知】でキースの事を見付けてまず会いに来てみた。キースは仕事中だったのか外で何人かの行商隊のメンバーっぽい人達と一緒にいた。
「もちろんっすよ。お前ら、すまないけど後で合流するから先に行っておいてくれ。」
キースは周りにいた人間に指示を出す。
「忙しそうな時ににごめんな。」
「そんな、兄貴が会いに来てくれたんなら、それ以上に優先することはないっすよ。」
「ありがとう。それから紹介する。今俺達のパーティにいる、アリアとシータだ。」
俺はそう言って後ろにいたアリアとシータを紹介する。
「どうも初めまして。私レスティア教神官のアリアと申します。」
「シータだよ。」
アリアとシータが俺の隣まで来てキースに挨拶する。
「えっ?兄貴、今こんな子達と一緒に旅してるんですか?」
「まぁな、色々あったんだよ。その点も説明するからどこかでゆっくり話そうぜ。」
「そうっすね、ここからなら家が近いんで来てくださいよ。」
「そうだな、分かった。」
キースはそう言って進み始める。俺達も後をついて歩いて行く。
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「へぇ、色々あったんすね。」
俺達はキースの家に行った。しかし前とは家が違っていた。かなり大きな家になっていた。その家の中に通された。失礼だが中も前の家に比べて広く、綺麗な作りになっていた。
応接間の様な所へ通されて、お茶を持ってきてくれたのはソフィアさんだった。挨拶をしたらお礼を言われた。こうしていい家に引っ越せたと。割と儲かってるんだろうな。町に来た時にもそれは感じていた。町の雰囲気が大きく変わっていたし。規模も変わっていたと言った方がいいだろうか。町の周りに壁で囲まれた区域が幾つか増えていた。土魔法で壁を作ってそこを整地したりして新しく居住区域なんかを増やしていってるんだろう。町の雰囲気も変わっている、商人や冒険者の数も増えていた。
そして先程ざっくりとした説明が終わり、説明を聞いたキースがそう言ったんだ。
「そうだな、色々あったよ。この町も色々あったみたいだな。」
「そうっすね、今は塩の行商も安定してますし、それ以外の仕入れや別の商品の流通も問題なくやれてるっす。後はかなりの数の冒険者がこの町を訪れてるっす。ここに来たら強くなれるってのが大分他の町なんかでも知られるようになったみたいっすね。」
「そうか、この町が栄えていってくれるならそれでいいや。」
「それで兄貴は今回はどういったご用事で?ただ俺の顔を見に来てくれたって訳じゃないっしょ?」
いや、その目的が8割くらいなんだけど。流石にそんなことも言えないか。
「まぁ色々ある感じかな。1つは仲間の紹介、アリアとシータのね。キースの事を2人に一度は紹介しておこうと思ってたし。」
「なるほど。しかしまさかこんな可愛い女の子がパーティに入るとは。もうちょっと一緒にいたら俺もご一緒出来たってことっすよね?残念だな~。」
「はいはい、ってアリアは俺と2つしか変わらないけどシータは大分年下だけど?」
「こんなに可愛かったら年なんて関係ないっす。」
ハッキリ言いきりやがった。アリアとシータが凄い表情してるんだけど。なんか汚いものを見る様な目?だな。アリアはわかるけど、シータのこんな顔を見るの初めてだな。シータもキースのタラシっぷりをすでに感じ取ってるんだろうか。全ての女の敵だもんな。
「うん、キースが離れてから出会ってよかったのかもしれないな。
で、2つ目は様子見ってとこかな。言ったようにもしかしたらまた俺暫く魔法学園ってとこに行くことになるかも知れないからその前にね。【ソルトプラント】の栽培とか行商とかも落ち着いてきたんだったら新しい物にも着手できるかなって。」
「それって・・・。」
「俺は昔【ソルトプラント】以外にも色々作っていたんだよ。香辛料の木とか大量の蜜が取れる花とかね。それを渡しに来たって言ったらいいかな。【ソルトプラント】以外の植物なんかの生産ラインも今だったら作れるようになるだろうし、販売するにあたってもルートも確立されてきてるだろうしね。」
「それはケビンさんとか驚くだろうなぁ。」
「多分ね。後で顔出しに行こうとは思ってるよ。それからキースにはこれかな。」
そう言って俺は【倉庫持ち】から迷宮で手に入れた弓を出す。
「さっき話した迷宮で手に入れた弓。俺達弓使う人いないからキースにお土産として取っといたんだ。」
「えっ、そんなの良いんすか?」
「うん、キースもここで頑張ってくれてると思うしね。」
「ありがとうございます。」
キースはそう言って俺が出した弓を受け取った。
「後は実験を兼ねてこの町に来たんだ。」
「さっき話してた新しいスキルって奴っすか?」
「そうそう、それでキースにもお願いがあって。これをどこかに置いておいて欲しいんだ。」
俺はそう言って【倉庫持ち】から魔法具を取り出した。
大きさは握りこぶし大程。正方形の黒い箱だ。今まで作った魔法具の典型的な形と変わりない。
「これは?」
キースが俺から箱を受け取り、ジロジロと眺めながら質問する。
「う~ん、転送用の魔法具になるんだけど。移動先の目印になるものっていったらいいのかな。」
俺はそう説明した。
この前に俺は転移の為のスキルを作り出した。名前は【転移の門】とした。
いくつかのスキルと魔法を組み合わせて作った。基本的には【影移動】とは変わりない感じだな。自分の影に入る、すると目印として作った魔法具の所へ移動できるっていうスキルだ。
目的地をどういう形で作るかは悩んだけど、やっぱり魔法具を目的地を決めた方がやりやすかったのでこういう形に落ち着いた。
ただこれもいくつかの制約が出来た。基本俺しか使えない。まぁ俺だけが持つスキルだからな。ただ俺と一緒にだったら別の人間も移動できる。俺しか使えないんで世間一般に広めることは出来ないってことだ。広めるつもりもないんだけどね。
後はこの目印となる魔法具のある所しか移動できない。これに俺が色んなスキルを駆使して扉としての機能を持たせてるからだ。正直その点はめんどくさかった。魔法具に魔法は封じ込められるが、スキルを封じ込むなんてことは出来ない。だから俺の持ってるであろう【倉庫持ち】への空間の扉をというものを、魔法として確立させないといけないからだ。それも試行錯誤して闇魔法で必ず俺の持つ空間へ繋げるような魔法を作ったんだ。その上でやっと何とかこの魔法具を作り上げれたから【転移の門】のスキルも生かせるようになった。魔法具を使わない場合は分身体の影にしか移動できない。
ゲームみたいに1回行った町になら行けるとかならいいんだけどな。そうはいかないみたいだ。まぁこの魔法具を置いておいたらいいんだけど。ただこんな魔法具をポンとそこら辺に置いていたら持っていかれたり、バラされたりしたら大変だ。中には結構大きな魔石を入れてある。かなりの価値になる。
「とりあえずどこかある一定の広さのある部屋とかに置いておいて欲しいんだ。そこを起点に人が出てくることになるから狭い所だと出れないんだ。後魔石を使ってあるからかなり高価なものになるはず。誰かに盗られない様に注意してくれ。」
「わかったっす。」
「だったらこれで俺はこの町へはいつでもすぐに来れるってことだ。」
「じゃあ今回もそれでこの町に来たんすか?」
「そうと言えばそうなんだけど。またそれとは別の方法を取ったかな。」
俺はキースからの質問にそう答えた。
この町に来る時にも結局目的の場所となる魔法具を置いておかないと移動してくることは出来ない。一度はこの町に来ないといけないってことだ。普通に移動しても今の俺なら1日かければこの町まで来ることぐらいは出来ただろう。ただもっと早く移動できる様にならないかなって思ってまた別の事も試してみたんだ。
今回この町に再度訪れたのは俺の分身体だった。
【八百万のスキル】がパワーアップして一番恩恵を受けたのは分身体かもしれない。分身体には作る時に与えるスキルを決める。それは9つしか選ぶことが出来ない。今まではある程度のスキルしか持たせることが出来なかった。でも今は元々のスキルを幾つも組み合わせたものを作れるようになったんだ。だから作ったスキルによっては何十個ものスキルを中に含んでいる。それを分身体に持たせれば百近いスキルを持たせる事も出来るようになるってことだ。
そして今回分身体ならではのスキルを作ってみた。
【鳥獣戯画】というスキルだ。
このスキルを使うと人以外に姿を代えれるという事だ。動物に限るが俺が知ってるものであればたとえドラゴンであっても姿を代えれる。分身体は魔素を固めた様な存在だから体の大きさも変えれるからな。
今回は分身体を鳥の姿に変えて空を飛ばせてこの町までこさせた。分身体の見ている光景が俺にも見れるから、空を飛んでる景色ってなかなか良かった。後は風魔法なんかも持たせているし、俺のステータスを半分持たせていたから凄いスピードでこの町まで飛んでこれた。この町に到着してから【鳥獣戯画】のスキルを解いた。するといつもの俺の姿の分身体だ。服も魔素で作ってるだろうから変身を解いても全裸になったりはしない。もし普通に俺が使った場合は服とかどうするかって問題が出るな。まぁ俺自身では使えないスキルなんだけど。
ともかくそれで分身体をこの町に来させてから魔法具を【倉庫持ち】から出させて俺は【転移の門】で転移した。ちゃんと距離が離れていても使えるかの確認だな。そして問題なく俺達はこの町へ転移できた。
その内容を簡単にキースに説明した。
「じゃあ、その分身体ってのを使ったら色んな所に魔法具を届けることが出来るんすね?」
「そうなるかな。ただその後の魔法具の保管方法もあるから誰か信用の出来る人の所に預けとく感じかな。
分身体さえその場所に行かせれば移動は出来るから、俺が移動できる範囲はかなり広くなったよ。」
「じゃあ魔王の所へいきなり行こうとしたら行けるってことっすね。」
「まぁね、でもまだ俺じゃ倒せるかわからないし。先に色々やることあるかな。」
まぁ奇襲をかけることが出来るのは凄いけど、分身体が気付かれて倒されたらどうしようもないからな。
「とりあえずそんな感じでこの町に来たんだ。だからこの後はケビンさん達に挨拶に行くつもり。」
「そうなんっすね。あっ、それじゃ俺から兄貴に言っておきたいことがあるっす。」
「言っておきたい事?」
「ちょっと待ってて欲しいっす。」
キースはそう言って立ち上がってそそくさと部屋から出て行った。
何のことだろうと俺は首を傾げてその姿を見送った。
しばらく待ってるとドアがノックされキースが入ってくる。と思ったらキースの後にもう1人女性が部屋に入ってきた。
誰だろう?多分俺は会ったことはないと思う。
キースより少し背が低い。髪はセミロング、後ろで1つに纏めていた。顔は中々の美人だった。雰囲気としては大人しいっていうよりも活発な感じが前面に出てる、というか勝気な感じというか。
「兄貴、紹介します。俺のカミさんでアマンダっす。」
「えっ?」
俺は思わず言葉を無くした。
「兄貴にどうやって伝えようかと思ってたんすけど・・・。後なんか俺なんかが先にカミさん貰っていいものか考えたんすけどね。」
「アマンダって言います。家の馬鹿亭主がお世話になってます。」
もじもじしているキースの横でアマンダさんが元気にそう言った。
「あぁ、すいません。ちょっと驚いてしまって。俺はダイゴって言います。こちらこそお世話になってます。
キース、いつの間に?」
「いや、兄貴と別れてから暫くは行商隊の事で忙しくしてたんですけど、その時に丁度こいつと出会ったんすよ。ケビンさん所で働いていて、何とか顔合せるようになってから、まぁその、なんと言うかそれから色々あってから一緒になったって言うか・・・。」
「そう・・・、なんだ。ゴメン、お祝いが先だったね。キース結婚おめでとう。末永くお幸せにね。」
「ありがとうございます、兄貴。いや、なんか兄貴に行商隊任されたのに、いきなり嫁貰うなんて何考えてるんだって言われるかと思ってビクビクしてたんすよ。」
「いや、俺はそんな事言わないよ。しかし、そのキースが1人の女の人の所で落ち着いたところに驚いたって言うか・・・。あぁすいません、奥さんの前で言うセリフじゃないですよね。」
「いや、私もその事はわかってるつもりです。まぁ私の目の黒い内はそんなことさせませんけどね。」
アマンダさんはそう言ってニッと笑った。
あぁ、これは尻に敷かれてる感じか。キースの場合はそれの方がいいと思うけど。
「でも奥さんいるのにさっきアリアとシータにあんな風な事言ったんだ?」
「兄貴、それシーッですって!」
キースは口の前に人差し指を立ててそう言ったが、もう遅いと思う。
「へぇ、その件は後でじっくりと伺いましょうか、旦那様。」
アマンダさんが指を鳴らしながらキースに優しく言った。額に青筋入ってるけどな。
なんか奥さん出来てもあんまり変わらない気がするけど。
「いや、そんなお腹に触るようなことはしない方がいいと思うぞ。」
キースがそう言った。
「お腹って・・・、もしかして・・・?」
「あぁ、すいません。もうこいつの腹には子供がいるんすよ。」
「えぇっ?早過ぎないか?」
「まぁそれは、そうなんすけどね。それもあって・・・、俺も男なんでちゃんと責任とらないと。
あぁ、もちろんそれだけで嫁に貰った訳じゃないからな。ちゃんと愛してるんだからな。」
キースはそう慌ててアマンダさんに言った。
出来ちゃった婚なのか。
「いや、それにしても驚いたよ。そうか、子供も出来たのか。それについてもお祝いしないとな。おめでとう。いや、それにしてもキースの子供か・・・。」
「そうっすね、家族が増えるんすよ。生まれてきた子供の名前は兄貴が付けて下さいね。」
「はぁ?俺が?」
「そうっすよ、それ以外考えられないっす。兄貴がいなかったら今の俺はいないっす。それにカミさんとも出会ってないと思うっす。」
「えぇ、私からもお願いします。ダイゴさんの事はいつも亭主から聞いてます。是非ともこの子が生まれた時には名付け親になって下さい。」
「そんな、折角の子供の名前なんだし自分達でつけた方がいいと思うよ。」
「いや、兄貴がいてこその子供っす。兄貴も自分の子供の様に思って欲しいっす。」
「俺の、子供・・・。」
「あぁ、すいません。兄貴もこれから嫁さん貰って子供出来るでしょうし。」
「あ、うん。」
「まぁなんて素晴らしいことでしょう。私は神官です。お2人を祝福させて頂きたいですわ。」
言葉に詰まる俺を見てか、アリアがそんなことを言いだした。そしてアリアは立ち上がり2人に対して仰々しく祝福の言葉を贈った。
俺はそれをボーっと眺めていた。
お読み頂きありがとうございます。
キースが・・・、キースが~って感じですね。色んな意味で。




