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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
167/237

様子見

 ベティーさんに話を聞いて貰ってちょっとスッキリした。

 いつもの事ながら悩んでいても始まらないだよな。とりあえずやれることをやって行こう。今までも迷宮もちゃんと攻略出来たし、次に行くべき場所もわかってる。考えてみたらそれなりに順調に進んできているんだ。焦ってすぐに結果を出さないといけない訳でもないだろう。

 ゲームとかで言うとちゃんと順番には進んでこれているってことだろう。その点については俺にも運があるんだろう。ブランに出会って弟さんとの事へ行きたいってことで来てみたら、キュクロさんに会って試練を受けることなった。ブランに出会ってなかったらもっと後の方でこの町に来ることになっていたかもしれないんだ。神レスティアもちゃんとアリアを遣いとして俺に現状を教えたり、その後の行先とかも教えてくれた。それに沿って行けば問題ないはずだ。

 


 そんなことを思えるようになったのと裏腹にずっと引っかかってる事がある。

 魔王はもちろんなんだけど、俺以外の勇者の存在だ。

 最初に出会ってから一か月くらい一緒にはいたけど、そこまで交流もなかった。その後俺が城を出てからは一切見てもいないし、どうしてるかも耳に入って来ていない。

 俺の場合は自分で勇者だと知られない様に活動しているから、俺が勇者であることはそんなに広まってないんだろうけど。あいつらは別に隠してる感じでもないはずなんだけど。グラントの国自体が隠しているってことなんだろうがな。

 これまで何度か様子を伺いに行こうかとは思ってみたけど、その度にあの城に行くのかって思って嫌になって止めていた。そろそろ一回ぐらい様子を見に行っておくべきだろう。今なら俺には数々のスキルもあるし。



 そう思って俺はまた分身体を作った。

 今回分身体には俺の8割ほどのステータス値を渡している。俺自身別に宿屋の部屋の中にいるつもりだからステータス値が2割程度になった所で問題ない。それよりも何が起こるかわからない分身体の方に持たせてた方がいいだろう。

 今回は分身体には【転移の門(ポータルゲート)】や【鳥獣戯画(トランスフォーム)】、後は職業スキルの【盗賊(シーフ)】とか【大魔導士(ウィザード)】、【索敵(レーダ―)】なんかも持たせてある。


 とりあえず一旦はここからよりもエデバラまで【転移の門(ポータルゲート)】で移動させた方が近くなるか。

 俺は一旦自分の影に【転移の門(ポータルゲート)】のスキルを使い分身体をエデバラまで送った。

 

 分身体が着いたのはどこかの倉庫の様だった。周りには商品なのか、物が色々と積んであった。

 ここに俺が渡した魔法具を置いているってことか。

 なかなか空き部屋ってものはないのかもしれない。普通に使う部屋に置いおいて急に俺が出てきたらびっくりするだろうし。でもこの倉庫から出れるんだろうか。なんか普通に鍵とか掛かってる感じだが。

 仕方ないな。そう思って分身体を【鳥獣戯画(トランスフォーム)】のスキルを使って小さな虫の姿を変える。流石に虫が這い出る隙間ぐらいはあるだろうと思って羽を広げて飛ぶ。何とか風を感じ、隙間を見付けてその倉庫から出ることが出来た。

 ってキースは俺達がこの倉庫に出てきたらどうするつもりだったんだろうか。今回は先日来たばっかりだし、こそっとやってきた。普通に来たときは内側から鍵でも開けさせてもらって後で伝えたらいいかな。

 分身体が外に出たので、そのまま虫から鳥に姿を変える。このままグラントまで一直線に飛ぶとするか。そう思って俺は大きく羽ばたき高度を上げる。かなりの高さになってから風を身体に纏わせて一気に進む。

 これだったら一時間もかからず到着できるかな。



 とりあえず分身体を飛ばし何とかグラントの城が見えてきた。ここからは少しゆっくり飛ぶとするか。凄いスピードで飛ぶ鳥がいたら何かのモンスターかと思われるかもしれないしな。

 ゆっくりとした速度でグラントの城のところまでやってきた。どこかに止まって、と適当な屋根に分身体を降ろした。それから【索敵(レーダ―)】の出番だ。あいつ等とは会ったことがあるから簡単に見つけられるだろう。そう思って城の中を確認する。そうすると上手い具合に2人共同じ部屋にいるみたいだ。じゃあちょっとこの目で見に行くか。

 そう思い分身体をネズミの姿に変えて走り出した。城の中に入ってその部屋目指し全力で走る。【盗賊(シーフ)】のスキルのおかげで誰の目にも止まることなく進んでいけた。部屋の中へはまた虫に姿を変えてドアの隙間から中に入った。部屋の中に入りネズミに姿を変えて物陰に隠れた。

 部屋には勇と、彰以外にもこの国の姫、セレナの姿もあった。



「勇様と彰様、今夜はどちらが私と一緒に過ごして頂けるんですか~?」


「う~ん、セレナはどっちがいいの?」



 セレナの猫なで声に勇が聞いた。



「え~っ、そんなのセレナ困っちゃう。本当はお2人といつも一緒にいたいのですわ。」


「彰はそう言うの嫌いだもんね。」


「あぁ、お前と一緒にするな。」



 若干不機嫌そうな彰がそう答えた。

 

 なにこれ?今の会話だけで軽く殺意沸くんだけど。どういう関係?夜一緒に過ごすってそういう関係ってことだよね?セレナはビッチなの?勇と彰はそんなビッチでもいいの?どう考えても2人共関係持ってるよね?ビッチを2人で共有してるってこと?それでいいの?

 こちとらそんな関係なんて全くないんだぞ。この間ブランをギュッとして幸せ感じてただけなんだぞ。鎧があってあんまり抱き心地なんてわかんなかったんだぞ。ブランの顔が俺の胸にギュって密着した位なんだぞ。てめぇら一体どういう了見だ。


 いや、落ち着け自分。違う、俺はこんなことが知りたかったわけじゃないんだ。そう思って勇と彰の事を【鑑定眼(アナライズ・アイ)】で確認する。



名前:立花 勇(たちばな ゆう)

年齢:20

種族:人族

性別:男

レベル:15

HP:570/570

MP:420/420

STR:240

INT:360

AGI:210

DEX:370


スキル:


【福音(ギフト)】

【剣術 LV.4】

【槍術 LV.3】

【弓術 LV.3】

【体術 LV.3】

【火魔法 LV.4】

【水魔法 LV.2】

【土魔法 LV.2】

【風魔法 LV.3】

【生活魔法(デイリーマジック)】

【世界順応】



称号:勇者 オールラウンダー 才能ある者 自己愛者 



名前:佐藤 彰(さとう あきら)

年齢:20

種族:人族

性別:男

レベル:23

HP:715/715

MP:680/680

STR:540

INT:591

AGI:343

DEX:520

スキル:


【断罪(ジャッジメント)】

【剣術 LV.10】

【体術 LV.6】

【世界順応】


称号:勇者 剣聖 質実剛健 



 2人のステータスを見て愕然とする。

 弱すぎないか?

 冒険者のランクとしたらBランクかAランク行くかじゃないのか?

 俺と別れてから大してレベルも上がってないし、スキルも大したことない気がするんだけど。でもまぁ一般人に比べたら勇者の称号のおかげか、ステータス値もスキルのレベルも上なんだろう。

 勇の方は適当なスキルが使えるって感じだけど、それでもな。俺の仲間の方がよっぽど強いだろう。しかし【福音(ギフト)】はかなり強いスキルだったはずだ。どんな状況になっても自分に有利な状況へと変わる。実も俺も一度使ったことはある。どんなスキルかと思ってな。敵のモンスターの攻撃はなぜか当たらないし、こちらの適当に振った剣が敵に当たるとかそんな訳の分からない感じだった。俺はそれで【福音(ギフト)】を使うのを止めた。このスキルに頼り出すと自分自身で強くなれないと思ったからだ。勇のレベルが低いのはそれがあるからじゃないのか。

 彰は彰で剣術しか殆どスキルがない。まぁ【断罪(ジャッジメント)】なんてスキルを持っていたら相手を斬り放題だよな。防御されることないし。強い敵じゃない限り一回斬ったら倒せるだろう。だから剣術以外のスキルが全くないんだろうな。


 こんなんで大丈夫なのかよ。今の俺ですら魔王を倒せないって言われたんだぞ。しかし基準がないからわからないんだよな。今の時期にこいつらぐらいの強さが正しいのか、俺が勝手に強くなり過ぎただけとか?一応チートみたいな力を持ってはいるんだし。

 今これぐらいの力しかなくてもキュクロさんの迷宮とか行けば色々と鍛えられるかもしれない。そこそこの強さぐらいでは50階層は攻略できないだろう。

 【福音(ギフト)】も絶対的な能力ではない。意識がない状態ではスキルは働かない。それに自分に有利な状況になるだけで仲間まではスキル効果はない。到底1人だけで戦っていく事なんて出来ないだろう。有利な状況にはなるが、不利な状況が重なり過ぎるとそれを覆せるまでの力はないらしい。絶体絶命の状況にまで追い込まれると効果はなくなるみたいだ。そういう状況にはまた別の【起死回生(ラストチャンス)】というスキルがあった。まぁそのスキルはそういう状況に追い込まれた時にしか効果がないというかなり変化球っぽいスキルだけど。


 しかしこの2人はずっとこの城の中にいるんだろうか?モンスターとか倒してるのか?

 レベルが上がってるってことは一応戦闘とかはしてるんだろうけど、その程度のレベルだったら数十回戦ったことがあるレベルじゃないのか?魔獣などとは戦ったんだろうか。

 なんで俺がこんなに不安な気持ちにならないといけないんだろう。このまま今見たことは忘れて放置した方がいいのか。しかしな・・・。



「では勇様、彰様また後程、お待ちしておりますね。」



 ビッ・・・セレナはそう言って部屋から出て行った。これはチャンスという事なんじゃないか?正直気は進まないが仕方がない。



「勇者様。」


「誰だ?」



 俺は2人に話しかける。声はもちろん変えてある。分身体が持つ【鳥獣戯画(トランスフォーム)】のスキルの中には【変身(メタモルフォーゼ)】のスキルも入れてあるから人の姿も俺以外にも変えれる。今回はまだネズミの姿だが発声器官だけ変えれば声ぐらいは出せる。しかも今回は女性の声にしている。そっちの方がこの2人には良さそうだ。



「初めまして、私は神レスティア様の使いでございます。」



 俺は隠れていた物陰から出て、姿を隠すのに使っていたスキルも全て解除した。そしてネズミの姿から女性の姿に変わる。姿自体は元の世界で見たことのあるモデルをイメージした姿にした。要するに美人ってことだ。



「レスティアの使いだと?」



 勇が俺を見てそう聞いてきた。



「えぇ、今回はお2人に伝言がありましたので参りました。」



 そう言って俺は片膝をついて頭を下げる。何やってるんだろうと本気で思うが仕方ない。とりあえずこちらのいう事を信じてもらえる様に演技するだけだ。



「伝言だと?」



 今度は彰が聞いてきた。



「左様でございます。この度の魔王は大変な力を持っております。お2人にも早急に神の試練を受けて頂きたいとのことです。」


「神の試練?」


「左様でございます。ここより離れた地、商業国エルバドスにザールという町がございます。そこには鍛冶の神キュクロ様がいらっしゃいます。是非ともその地へ赴きキュクロ様の試練を受けて頂きますようお願いしたします。」


「なんでそんなことしないといけないの?」



 勇が不満一杯の声で聞いてくる。



「先程申しました様に今回現れた魔王は強大です。その魔王に立ち向かう為の力を手に入れて頂きたいのです。」


「俺達は強い。そんな必要があるとは思えない。」



 彰も不満そうな声で言ってきた。



「それはどなたがおっしゃっているのでしょうか?」


「俺達を召喚したこの国の王だ。」


「御冗談を。ただの一国の王にそのような事を判断することなど出来ません。」



 俺はちょっとムカついたのでそう答えた。



「だから俺達はこうして城にいて魔王を倒す機会を伺ってるんだ。」



 彰はそう憮然していった。

 なんだこいつら。いつまであの王の言ってる事信じてるんだ。バカじゃないのか。そんなもんで魔王倒せるんだったら俺達は召喚なんてされていないっての。



「もしかして、あれか?俺達の事を騙してそこまで誘き寄せようって言う魔王の差し金か?」



 勇がそんな事言いだした。ホントにバカなのか?

 はぁ、もういいや。なんかバカバカしくなってきた。なんて時間の無駄遣いをしてるんだろう。もうこいつらの事はどうでもいい。勝手にやって貰おう。どのみち最初から当てにはしていなかった。



「そのようなことはございません。ただ信じて頂けないというのであれば私からお伝えすることは以上でございます。私はレスティア様よりの伝言をお伝えに来ただけでございます。それでは失礼いたします。」



 俺はそう言って分身体に【転移の門(ポータルゲート)】を使わせた。一瞬で俺のところまで分身体は帰ってきた。

 それにしてもただただムカつくだけだったな。ちゃんと情報を教えてやったのに。俺も勇者なんでレスティアの使いといっても問題ないだろう。だから俺は嘘を言わずにちゃんと2人には伝えた。後はあの2人次第だろう。もう考えるのは止めにしよう。

 いい風に考えよう。もう奴らとは接点を持たなくていいってことだ。どうせこの町にも来る気ないだろう。そうだ、そうだ。こんな事忘れて別の事を考えようっと。



 そんなことを考えているうちに部屋の扉がノックされた。

 こっちの部屋の扉をノックするってことは・・・。



「ダイゴ様、今お時間宜しいでしょうか?」



 そう扉の向こうから聞いてきたのはアリアの声だった。



「うん、大丈夫だよ。」



 俺がそう答えるとアリアが部屋の中に入ってきた。



「少しお話をしてもよろしいでしょうか?」


「うん、何かあった?」


「そうですわね、少しご相談したいことがありまして。」


「教会絡み?」


「えぇ、そうですわ。」



 俺の問いにアリアはそう答えた。

 ベティーさんと話したりした後アリアは一旦自分のいた教会に帰ると言っていたんだ。とりあえずの報告と、前に言っていたスラグスルへの入国の相談にだな。

 それから実は数日経ってた。俺も他の勇者の所に行こうかどうしようか迷ってたから別の事をしながら考えて、やっと今日決心がついたから行ってきたんだ。

 その間にアリアは急いで自分のいた教会まで戻って、話をして帰ってきたようだ。



「それで一体どういう内容の話?」


「それがですね、実はダイゴ様のお話をしたところ、司教がどうしてもお会いしてお話されたいという事でした。」


「あぁ、まぁそうなるんじゃないかと思ってはいたな。」


「申し訳ありません。レスティア教ではダイゴ様はレスティア様に次いで崇拝の対象ですから、会いたいというのは当然の話だとは思いますが。」


「で、会わないと紹介してもらえないってことだろ?」


「まぁ、そのようなものですわね。その話に一切触れませんでしたから。一度会わせろ、そう私が何を言ってもそう返されました。」


「そうか、仕方ないな。じゃあ一度会いに行ってみるか。」


「よろしいんですか?」


「それしかないならね。とりあえずやれるところからやっていくだけだな。」


お読み頂きありがとうございます。


久々に他の勇者登場です。

ただまた暫く出る事はなさそうですけどね。

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