迷宮攻略50
「まずはよくぞ試練を乗り越えた。お主に賛辞を贈ろう。おめでとう。」
俺達は先程いた庭園の東屋まで帰ってきた。そこでまた皆で席に着いた。それから【青龍】が口を開き、そう言った。
「あの、ありがとうございます。
それと本当に申し訳ありません。色々と無茶をしてしまってご迷惑を掛けました。」
俺は素直に頭を垂れ謝った。
「いや、お主も全力で挑むと言っていたのだ。その点はわしの読みが外れておっただけじゃ。
しかしのう、あれは一体なんじゃ?」
「あれというのは当然【カグツチ】の事ですよね?」
「無論、それ以外にはあるまいて。」
「えっと、あれは、まぁなんと言いましょうか・・・。俺がスキルと魔法で作り上げた偽の神という存在、と言ったらいいですかね。」
「なんじゃと?」
俺の言葉に【青龍】の眉が跳ね上がるのが見て取れた。
「いや、この迷宮を攻略するにあたって考え付いたんですけど。神は凄い力を持ってるから俺もそれに準じた存在を作ったらかなりの戦力になるかなって・・・。」
「それはお主の持つスキルだからという事なのか?」
「えっ?俺のスキルがどんなものかご存じないんですか?」
「あぁ、わしにはそこまではわからん。」
「しかしキュクロさんは俺のスキルの事を説明しなくても分かったみたいですが。」
「その事か。奴は鍛冶の神じゃ。モノの本質を見る目を持っておるんじゃ。わしにはそのような力はない。神によっても持つ力は違っておる。」
「なるほど。
まぁ俺の持っているスキルのおかげという事もあります。
俺が持ってるのは神レスティアに作って貰ったスキルで【八百万のスキル】と言います。この世界にあるスキルをどんなスキルでも好きな時に付け替えることが出来るってスキルです。」
「何?そのような事が・・・。」
俺がスキルの説明をすると【青龍】は驚いた様子だった。他の神が聞いて驚くようなスキルなのか?まぁかなりチートなスキルだと思うけど。
「それで色々なスキルを組み合わせて、魔法として確立したって感じでしょうか。前にも一度風の神を作ったんですけど、今回は火の神を作ったという事なんです。
え~っと、かなりまずかったですか?」
「う~む、それはな。正直わしにもわからん。前代未聞じゃからな。いいか悪いかなどの判断基準もない様な状態じゃな。
しかし1人の人間が使うにしては強大過ぎる力とは思った。」
「神にそう言わせるほどってことですね・・・。」
「まぁただわしも神としては若い方じゃ。
先程伝えたであろう、わしは龍から神へと昇華した存在。他の神とは根本的に違う。
他の神にしたら大した存在ではないかもしれんがな。」
「そうですか。」
「だがおいそれと使うような力ではないことは確かじゃ。今後は使いどころを考えた方がいいじゃろう。」
「そうですね。一応お聞きしておきたいんですが結構ヤバかったとかですか?」
「むっ、そこまでではないぞ。ただ、なんじゃ。力を使って吹き飛ばしても良かったんじゃが、そうするとお前たちがただではすまんかったじゃろうな。
それにじゃ、場所がな。もっと水のある場所であればあの程度を防ぐのは造作もなかったはずじゃ。
あぁ、そうじゃ。今回は場所と状況が悪かっただけじゃ。」
う~ん、なんか本当にヤバかったみたいだな。
今回【カグツチ】を呼び出した時に俺は、水の膜を無くしてついでに力も使わせる位の事を思って呼び出した。もし【青龍】を倒す様にと呼び出していたらどうなってたかだよな。
ただそうなった時は俺の方を狙ってくるだろうしな。相手倒しても自分も倒されたら意味ないし。やっぱり使い所が難しいんだよな。
「本当に申し訳ありませんでした。どうやって試練を乗り越えていいかが分からなくて、安易に力に走ってしまいました。」
俺はもう一度謝罪する。
「済んだことであるし、お主を特に罰せようとは思って思っておらぬよ。
ただ神になってこれほどまでに驚くことがあるとは思わなかった。
それにしても・・・、どういう理由で・・・、まさかな。」
「何か?」
「いや、なんでもあるまい。」
なんだろう?何か含みを持たされてる感じがするけど。
「しかし、初めてこの迷宮を攻略したお主の目的はなんじゃ?」
「えっ?!あぁ、ちょっといろいろ事情がありまして。ここの100階層を攻略した報酬に用事があるって感じでしょうか。」
「そうなのか?魔王討伐に関係があると?」
「それはちょっとわかりません。」
「わからないのにここまで攻略してきたという事か?」
「端的に言うとそうですね。仲間の【神託】というか【天啓】かもしれませんが、それによって迷宮を攻略しろって言われたからです。」
俺はそう言ってアリアの方を見た。【青龍】も俺と同じ様にアリアを見る。
「その通りでございます。申し遅れましたが私はレスティア教の神官アリアと申します。今回は【天啓】より得たビジョンをダイゴ様にお伝えいたしました。」
アリアがかしこまった口調で言った。今回は【天啓】の方だったのか。
「レスティア様の・・・。なるほど、そう言えば預かっておるこの階層の攻略報酬は確かレスティア様の力を宿したものであったな。」
そう言った【青龍】が手をパンと鳴らす。するとテーブルの上に箱が現れる。大きさは50cm四方の飾りのついた綺麗な箱だった。
「遅くなったがこれがこの階層の攻略した証兼報酬じゃよ。」
【青龍】はそう言ってその箱を俺の前に押した。
俺はその箱を受け取りゆっくりと開いた。
中には装飾を施した首飾りが入ってあった。
【鑑定眼】で見ると『神レスティアの力が宿った首飾り。持つスキルの力を引き上げる』とあった。これが・・・。
俺はその首飾りを箱から出した。
「アリア。」
そしてその首飾りをアリアに渡す。アリアは特に驚くこともなく受け取った。
「失礼いたします。」
アリアはそう言って席を離れた。首飾りの留め金を外し、自分の首元へとその首飾りを付けた。そして東屋から出て庭の少し広くなったところへ移動する。俺や、仲間そして【青龍】も言葉なくアリアの様子を見て、一緒について動く。
アリア両膝を地面に付き、胸の前で手を組み目を閉じた。まるで神に何かを祈る様に。
いや、実際には祈っているのだろう。
アリアの周辺に光の粒が出来始める。最初はポツポツとあった光の粒が増えていきアリアの体の周囲を回り始める。光の粒が多くなりアリアの姿も見えなくなると思った瞬間に、その粒が集まりアリアの中に消えた。
そしてアリアは目を開け、立ち上がる。俺達の方へと向き直り言葉を発する。
「お久しぶりですね。勇者ダイゴよ。」
アリアの口から発せられたはずの声はいつもと違っていた。しかし俺はその声に聞き覚えがある。
この世界に来ることになった時に聞いた声だ。
「そうですね、神レスティア。」
俺の言葉に仲間だけではなく、【青龍】も驚いた様子だった。
この迷宮を攻略しようとアリアに言われた時に神レスティア絡みだという事は直ぐに分かった。今回は【天啓】の方だったみたいだけど、恐らく今この状況のビジョンがアリアには見えたんだろう。迷宮を攻略して首飾りを手にし、自分が着けている光景とかだろうか。
最初攻略しようと言われた時に考えた、一体何の為に?ってな。
俺は【八百万のスキル】があるからわざわざスキルのレベルを引き上げる様な神器とも言える代物は必要ないと思った。全てのスキルをレベルマックスで使うことが出来るからだ。仲間に使うって言うのもしっくりこない。恐らく順当に鍛えていけば仲間もスキルレベル上限までは達することが出来るだろう。それなのになぜ必要なのか?そこで思い当たった。
レベルがない様なスキルでもその力を引き上げることが出来るんじゃないか?ってことに。
いわゆるセカンドステージみたいなものか。俺も使ってるスキルの中でいくつかレベルの付いていないスキルがある。元々そのスキルの力は一定、そんな感じの能力だ。【断罪】や【絶対防御】もそうだな。そして手に入れた神器はそう言ったスキルの力も引き上げれるんじゃないかってことだ。
だが普通にそう言ったスキルの能力を引き上げて何するのか?ってのを疑問に思った。そこでアリアが俺達の傍にいる理由ってもしかして、という考えに至った。アリアは暫く俺達と一緒に旅をしないといけない、そして神器は神レスティアの力を宿す。その点を考えてもアリアがこれを使うんじゃないか?ってことだ。
アリアが使えて俺が使えないスキル・・・、それは【神託】だ。そう考えるとなんだかしっくりきた。【神託】はいつかはわからないが、信仰している神から言葉を受け取ることが出来るスキル。そのスキルの力を引き上げたらどうなるのか?それが今目の前に起こっていることなんだろう。
「それにしてもこうしてまたお会いすることになるとは思いませんでした。
言い方は悪いですが今回はあなたがアリアに伝え、こうなる様に仕掛けたんですよね?」
「そうですね。あなたにはどうしても伝えねばいけないことがあるからです。」
「どうしても伝えねばいけないこと?それは一体?」
「率直に申しましょう。勇者ダイゴ、今のままでは魔王に打ち勝つことは出来ません。」
「えっ!?」
俺は驚き言葉を無くす。
「今なんと・・・?今のままって、俺達迷宮を100階層まで攻略したと思うんですが。」
俺は何とか言葉を絞り出す。
「えぇ、存じてます。あなた達の力も、そしてあなたが神を自身で作り上げようとしたことも。
その上で話しています。」
「そんな・・・。いきなりそんな話をされても。では俺は一体どうすればいいんですか?」
「先程申しました様に、今のままならという事です。そこで私から新たな力を授けます。
今のこの状況もその為に整えました。」
「えっ?もう何が何だか理解できないんですが。」
「私も今までにこういった事態になったことはありませんでした。しかし今回の場合は・・・。
いえ、悠長に話している時間はありません。」
レスティアは右手を伸ばし、俺の方へ向けた。その手から光の粒子が俺に向かって放たれる。その光の粒子は俺の体に当たったと思えば、そのまま俺の体の中に消えていった。
「今のは?」
「あなたに新しい力を与えました。ただあなたが今までにしてきたこととそこまで大きく変わる訳ではありません。」
「それはどういう事ですか?」
「私が与えた力は束ね、生み出す力。あなたは今までにも色々なスキルを組み合わせて使っていたかと思います。」
「えぇ、そうですね。」
恐らく俺が使っている【索敵】なんかのことを言っているんだろう。
「その力を確固たるものにしたと言えばよいのでしょうか。組み合わせたスキルを新しいスキルとして使える様になるのです。」
「えっ!?」
俺は何度驚かされるんだろう。
「スキルは束ねることで強くなります。その力を使いこの世界を救ってください。」
「えっと、なんだかよくわからないんですが・・・。それにお聞きしたいことも沢山あります。
魔王っていったい何なんですか?何故勝てないんですか?今までの勇者って50階層を攻略しただけでも倒せていたんですよね?」
「それは・・・、今は時間もなくお答えすることが出来ません。」
「それってどういう・・・?」
「アリアの身に大変な負担がかかっているからです。神をその身に宿すなど、普通の人間にはどれほどの負担となるか。
疑問に思う事は多々あるでしょう。知識の神を訪ねなさい。あなたであればきっと試練を乗り越え、知りたい真実に出会うことが出来るでしょう。」
「知識の神?」
「えぇ、残念ながらもう限界の様です。あなたには大変なお願いをしているとは承知しています。
ですがどうかこの世界を救ってください。」
レスティアはそう俺に告げた。
目の前にいるアリアが目を閉じ、ふらつく。そのまま倒れてしまうかと思ったらガイがアリアの横に現れ、その身を受け止める。【瞬行】を使ってアリアが倒れてしまうのを受け止めてくれた。
俺もすぐにアリアの元に駆け寄る。
「アリア、大丈夫か?」
「えぇ、何とか。」
アリアは頭を横に振って答える。しかしその声には力がこもっていない。先程レスティアも言っていた、神をその身に降ろしたん、だかなり負担だったんだろう。ステータスを見るがHPやMPには変動がない。魔法とかでは回復できない感じの疲労か。しばらく大人しくしてもらうしかないだろう。
それにしても。
「申し訳ありません、ダイゴ様。」
「何の話?」
アリアが俺の目を見て謝った。
「私にもう少し力があればダイゴ様が知りたいことも聞けたでしょう。」
「そんなことないよ。色んな謎が出て来たけど、次にやることがはっきりしたし、それだけでも前進したと思ってるから。気にしないでゆっくり休んでくれ。」
俺はそうアリアに言った。
「ともかくこの迷宮を攻略して分かったことと、わからないことが色々出来た。アリアをゆっくり休ませてやりたいし地上に戻ろう。多分ここにいても俺達の問題が解決するとは思えない。」
「それが良かろう。残念ながらわしもレスティア様がおっしゃったことはわからん。
レスティア様の言葉に従うのが一番であろう。」
俺が言ったことに答えたのは【青龍】だった。
「何かバタバタとすいませんでした。かなりご迷惑をかけたと思います。」
「いや、何、わしも色々と初めて経験することがあった。神になっても驚くことはあるのだと分かっただけでも良い経験になったと思っておるよ。」
「そう言えばここから地上に戻る方法は・・・。」
「あぁ。」
【青龍】が手を叩くと近くに何度も使った魔法陣が現れた。
「それに入れば地上まで戻れるであろう。」
「ありがとうございます。しかしこの階層はメダルなんかはないんですか?」
「なんじゃ?またここに来たいとでも?」
「一応、またお話しする機会が出来るのかと思いまして。」
「まさかそんなことを言うとは思ってはおらんかった。ここにはそのようなものはない。もう攻略してしまったらここにくる必要ないじゃろう。それにわしもここを引き払うしのう。」
「そうなんですか?」
「あぁ、流石にお主に渡した報酬はこの世で1つだけの物じゃ、ここを攻略しようとするようなものも現れんじゃろう。」
「そう・・・、ですか。」
「一応礼を言っておこうか、ありがとう。お主達のおかげでわしも義理を果たすことが出来た。」
「いえ、そんな。じゃあどこか別の場所に行かれるんですね。」
「そうじゃな、お主達にはもう会う事もないかもしれんがな。」
「そう言えば、俺のスキルが分からなかったのに俺が勇者ってどうしてわかったんですか?」
「それか、この世界の者かそうでないかぐらいはわかる。他の世界から来てこの階層までこれるとなると勇者ぐらいしかおらんじゃろうという事じゃ。」
「なるほど。」
「お主もこれから大変な道を歩むことになるじゃろう。会ったのも何かの縁じゃ、陰ながら見守ることにさせてもらうぞ。」
「ありがとうございます。お世話になりました。」
俺達はそう言って【青龍】に別れを告げて魔法陣へ進む。アリアはガイがおぶってくれている。
魔法陣に入って【青龍】にお辞儀をした。顔と上げると【青龍】が笑っていたような気がした。しかし次の瞬間にはいつもの見慣れた部屋に俺達はいた。
お読み頂きありがとうございます。
迷宮も攻略して、少し話が進むことになります。
ほんの少しだけですが。




