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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
155/237

迷宮攻略49

 俺の目の前に炎が巻き起こる。

 その炎は1本の柱となる。炎の中に人の影の様な物が見える。

 炎の柱は徐々にその大きさを縮め、ついに炎が消える。

 しかし消えた柱の後には1人の男が立っていた。

 こういう場合は1柱って言うんだっけ?神様の数え方って確かそうだよな。

 燃える様な色の髪。天を突くような感じに見える。身長は俺より高い、がっしりとした体形で道着と着物を合わせた様な服を着ていた。俺は背中の方にいるから顔が見えないけど、後ろ姿だけならタイプっぽいんだけど。ってそんな目的で呼び出した訳でもないし。



「何?これは一体?」



 【青龍(せいりゅう)】が声を上げる。俺が呼び出した【カグツチ】に驚いた様子だが。

 前に【シナツヒコ】を呼び出したのは知らないのか。迷宮内の事をすべて把握してるのかと思ったけどそういう訳でもないのか。


 【カグツチ】は【青龍(せいりゅう)】の言葉を無視して右腕を突き出す。

 その右手には炎が灯り、大きさと熱量を増していく。

 あれ?これってかなりヤバいかも。



「アリア全力で水魔法と支援魔法を使って皆を守ってくれ。」



 俺は【念話(テレパス)】でアリアに指示を出す。それなりに距離を離しているが洒落にならない感じがある。だって【カグツチ】の足元の地面が解け始めてる。

 岩というか石というか、溶けだす温度って何度だったっけ?そんなことを考え始めたが俺もヤバそうなので【倉庫持ち(アイテムボックス)】から盾を出して構え【絶対防御(イージス)】を使う。俺自身【炎熱無効】のスキルも持ってるが身に付けたものまでの効果はない。流石にここで全裸になる訳にもいかないだろう。


 そんな俺の考えを他所に【カグツチ】の手に灯る炎の色が変化していく。

 赤から橙(だいだい)、黄色、そして白へ。

 確か白とかってかなりの高温だったよね。そう言えば炎って高すぎるとプラズマとかに変わるんだったっけ?

 そんなことを考えてるのは現実逃避の現れなんだろうか。いや、冷静に分析してるだけだよ。

 普通に炎魔法を使っても白の炎なんて作れるとは聞いたことがない。俺ぐらいの魔力があったら出来るかもしれないけど、目の前の【カグツチ】はいとも簡単にやってるようなんだけど。


 【カグツチ】は手に集めた炎を1つにまとめて球の様した。そしてそれをスッと【青龍(せいりゅう)】に向けて放つ。

 何気ない動作の様にしたけど大丈夫なのかよ。


 【カグツチ】の手から放たれた白い球はスピードを上げて【青龍(せいりゅう)】に襲い掛かる。

 【青龍(せいりゅう)】もいつの間にか水の塊を作っていて、それを白い球にぶつける。

 一瞬水蒸気爆発でも起きて大変な事になるんじゃないかと思ったがそうはならなかった。

 水の塊が白い球を包み込んだ。白い球は水の塊の中で暴れている様子で、水はそれを何とか抑えているような感じだった。



「ぐぅぉぉぉぉっ。」



 【青龍(せいりゅう)】の声が響く。今までの老人の声ではなく。それこそ龍の唸り声の様だ。

 なんか大変な事を仕出かしてしまってるんじゃないかと不安になる。


 水の塊に閉じ込められている白の球は少しずつ力を奪われているのか、その色が少し変化してきているみたいに見える。

 やっぱり神程の力はないのか。俺はそう思ったが、【カグツチ】は開いていた右手をギュッと握り込んだ。

 その瞬間に水の塊に抑えられていたはずの白い球が容積を増し出した。握りこぶし大だった球が一気に膨れ上がっていき、そして一気に弾けた。

 その瞬間辺りは真っ白になった。俺も一瞬何が起こったのかわからなかったが、眩(まばゆ)い光を見たと思って目を閉じていた。

 そして次に目を開けた瞬間に見た光景を疑った。

 目の前には大きくえぐれた空間。その中心には【青龍(せいりゅう)】が浮かんでいた。しかしその周囲50m位は何もなかった。天井も、床も何もかも。

 【カグツチ】の目の前までそう言う状態だった。俺はハッとなり、仲間の方を振り向く。仲間達は特に問題ないようだ。一応【カグツチ】は範囲を絞ってはいたようだ。

 しかし目の前には空間自体を削り取ったかのような状態だった。その部分だけを焼いたのか?残っている床の端などは溶けている様感じだった。

 そして目の前の【青龍(せいりゅう)】の水の膜は姿を消していた。


 【カグツチ】が後ろを振り向いて俺を見た。顔は厳つい感じの男前だった。その男前はフッと笑みを浮かべて炎の柱に包まれた。そして先程と同じように炎の柱は小さくなり消えた。

 やることはやったと言わんばかりの顔だったな。だから帰っていったんだろう。


 それにしても・・・。

 目の前の【青龍(せいりゅう)】は初めて目のした時よりも煤(すす)けていた。所々焦げてる部分もあるみたいだ。これはやっちゃったかな。



「どうした?今は絶好の機会だと思うぞ。」



 【青龍(せいりゅう)】がそう言った。



「今ならばかなり力を使い果たしたわしに、一太刀浴びせることが出来るかもしれん。

 それともお主も力を使い果たした訳か?」


「そうですね、流石にMPが底をついてます。俺がどうやってそこまで行くか考えるのが先かもしれませんね。」


「まさかあのような事を行うとは思いもよらなんだ。何とも恐ろしいものだ。」


「じゃあ試練は合格ってことにして貰えませんかね?」


「約束は約束じゃ。今更試練の内容を変えはせん。」


「ちょっと怒ってます?」


「なぁに、ほんの少しじゃ。ほんのな。」


「いや~、俺もまさかあんなことになるとは思いもしませんで。」


「どうなるかわからないものを使ったという事か?」


「そう言われるとそうなんですけどね。試練を突破する為にはあれぐらいしないといけないかと思いまして。」


「ほう、それでどうするつもりだ?諦めるのか?」


「いや、諦めたりはしませんよ。時間稼ぎも出来ましたし。」


「何?」


「何度も同じ手が通用するかはわかりませんが、今回は影に気を付けました。」


「まさか?」



 そう言って【青龍(せいりゅう)】は上を仰ぎ見る。

 しかし【青龍(せいりゅう)】の上には特には何もなかった。



「なんじゃ、わしを謀(たばか)ったのか?」


「えぇ。」


「何の意味が?」


「意味はありましたよ。ほら。」



 俺がそう言うと【青龍(せいりゅう)】の立派な髭の一本が根元近くから切れて宙に舞う。



「何!?お主が特に魔法を使った気配もないはずじゃが!?」


「えぇ、魔法を使った訳ではありません。使ったのはそいつです。」



 俺がそう言うと【青龍(せいりゅう)】の顔の所にピョコっと小さな俺が立ち上がった。身長は10cm位の俺の姿をした分身体だった。



 どういう訳か初めから説明しよう。

 最初に俺は分身体を作る時に2体作った。1体は先程戦った普通の分身体。もう1体は【青龍(せいりゅう)】の顔の上にいる。

 前に考えたある割合だけ持たせた分身体を作れないかって言うのをしばらく前から練習していた。スキルの中には【結合(リンク)】の他にも【分割(ディビジョン)】というスキルもあった。それを併用することで好きな割合で分身体を作ることが出来るようになった。普通なら分身体1体作ると、俺と本体で半分ずつのステータス値で分けることになる。2体分身体を作るとなるとそれぞれ3分の1ずつだ。しかしそれだと、俺自身のステータス値が低くなりすぎて大したことが出来なくなる。

 そこで今回は本体の俺が7割、戦う分身体が2割、チビの分身1割で分身体を作ったんだ。

 戦う分身体もスキルを色々つけているから問題なく戦えると思っていた。それに今回は短期決戦を想定していたのでMPとかもそこまで必要ないと思っていた。【影移動(シャドウムーブ)】が1、2回使えたら問題ないだろうと。だから戦える方の分身を戻した時もMPの回復が早かったんだ。全体の2割ちょっとを回復しただけだ。

 そしてチビ分身の方だ。

 大きさは分身体はある程度変更できることが分かった。魔素かなにかで作り上げたものだろうしな。

 今回は保険として作っておいた。

 戦う方の分身が【影移動(シャドウムーブ)】で髭を切れたらそれで良し、失敗した時の保険だな。

 チビ分身には今まで使ったことのない様なスキルも持たせている。【同化(アシミレーション)】というスキルだ。

 【同化(アシミレーション)】はモンスターが持つスキルで、スライムとかが持っている。敵などに引っ付いて、その部分を自分の一部などにする。その後消化したり、そのまま乗っ取ったりなどするがそれはそれで別のスキル必要だったりもする。俺自身は使えないが分身体であれば使えることが分かった。分身体だとモンスターが使うスキルも一部使えるようになるみたいだ。さっき言ったように魔素か何かで体を作り上げてるからかもしれない。

 その【同化(アシミレーション)】のスキルを使ってまず戦う方の分身体に同化した。そして分身体が【影移動(シャドウムーブ)】で【青龍(せいりゅう)】の顔に移動した時に分身体から離れて【青龍(せいりゅう)】の顔の一部に同化したんだ。

 チビ分身だけで接近しなくても戦う分身体と気配なんかも同じだから瞬時に移動すればバレないだろうと思った。チビ分身だけだと移動するのが大変だしな。

 【追跡者(トレーサー)】なんかのスキルも考えたが、相手は神だ。いくらスキルで存在を隠してもバレる可能性はある。というかバレると思う。後【追跡者(トレーサー)】は基本背後に現れる。チビ分身が【青龍(せいりゅう)】の背後に現れても髭を切れるぐらいの距離まで移動するのにどれぐらいかかるか。

 だが同化なら自分の一部になるのだから気付かれることはなくなるんじゃないかと考えた。しかも戦う分身体が降り立った顔の部分に同化できる。

 神に同化出来るのか?ってことも考えたけど何とか出来たみたいだ。

 恐らくその一部分に引っ付くような感じにはなるんだと思う。そこから吸収したり、乗っ取ったりしようとすると気付かれたり、出来なかったりするだろうがな。 で、チビ分身を潜ませて機会を伺っていた。【青龍(せいりゅう)】が隙を作る一瞬を。

 チビ分身も同化を止めればすぐにでも気付かれるだろう。一応【隠匿(インビジブル)】や【気配遮断(ヒィドゥン)】も持たせていたが効果があるかわからない。

 同化を解いた瞬間に髭を切らないといけない。その隙をどう作るのかっていう事だ。

 とりあえず【カグツチ】のおかげで【青龍(せいりゅう)】も力を大分使ってくれて、疲弊した。そこへ俺は上からの攻撃を匂わせた。そして【青龍(せいりゅう)】が視線を上げた瞬間を狙った。

 その瞬間は流石に自分の髭の部分は見ていないだろう。だから潜んでいたチビ分身が同化を解き、手を刃物に変えて髭を切ったんだ。

 ナイフを持たせたりすると同化できないかもしれないので【変身(メタモルフォーゼ)】のスキルを持たせて手を刃物に変えた。【断罪(ジャッジメント)】も持たせてるから切れないってことはないだろう。しかし渡した俺の1割のMPだったらこの1度の攻撃を逃せば2度目なかっただろう。

 何とか積み上げた作戦が上手くいった。俺の作戦もこれが打ち止めだ。失敗していたらまた一から全部やり直しだった。

 本当に緊張した。



「うむ、幾重にも作戦を張り巡らせていたようじゃな。

 仕方あるまい、約束は約束じゃ。お主の勝ちとしよう。」



 【青龍(せいりゅう)】がそう言った。

 良かった。怒らせて、もっと大変な目にならなくて。いや、怒ってるかもしれないな。



「まずは、落ち着くために先程の場所に戻るとするか。ここも直さんといけないじゃろうしのう。」


「なんかすいません。」



 俺は謝っておいた。

 【青龍(せいりゅう)】は飛んで俺のところまで来た。そしてその身が光に包まれ、徐々に小さくなり先程見た老人の姿になった。

 空中からチビ分身が降ってきた。そう言えば戻すの忘れていた。心の中で労(ねぎら)いの言葉をかけてから分身体を消した。

 俺の隣に【青龍(せいりゅう)】が降りて来た。その表情は読めない。怒ってるんだろうか・・・。

 【青龍(せいりゅう)】はそのまま皆の方へ歩いて行く。俺もその後をついて行く。



「みんな、何とか最後の試練も乗り越えることが出来たよ。」



 俺はみんなの所に行ってそう声を掛けた。

 しかし皆あんまり喜んでない様子なんだけど。



「お前あれはないと思うぞ。」



 バロンさんが呆れたように言った。

 あれ?



「俺達に言っておいて、お前が神を倒そうとするなんてな。」



 ガイにそう言われて気が付いた。あぁ、あれか。



「いや、そんなつもりはなかったよ。ただセーブが効かなかったというかなんというか。でも流石にあれぐらいじゃ倒す事なんて出来ませんよね?」



 俺は【青龍(せいりゅう)】に向かってそう言った。

 しかし【青龍(せいりゅう)】は無言だった。

 えっ?マジで?



「その事を含め、また話をしようではないか。」



 【青龍(せいりゅう)】はそう言って手をパンと鳴らした。

 するとこの場所に入ってきた時の扉が目の前に現れた。

 【青龍(せいりゅう)】は扉を開き進む。俺達もその後に続いてこの場所を後にした。

お読み頂きありがとうございます。

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