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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
152/237

迷宮攻略46

最終階層前の一休みっぽい話です。

「さて、99階層まで攻略した訳だけど・・・。」



 俺はそう言ってガイとバロンさんを見た。

 2人はまた終(つい)の型って言うのを使ってしまった。HPに関しては魔法で回復した。しかし軒並み減ってしまった他のステータス値は時間でしか回復しないみたいだし。



「次で100階層だよね。万全の態勢で臨みたいし、一晩ここで明かそうか。

 1日あったら確か2人共回復するよね?」 


「そうだな、前回も1日あったら回復した。明日になったら万全に戻るだろう。」



 俺の提案にガイ達が答える。終(つい)の型を使ったことによって減るステータスの値は1日ぐらいで何とか回復する様だ。それにしても。



「なんか終(つい)の型って言っても2人の技が前と違ってたと思うんだけど。」


「まぁな。終(つい)の型って言うのは名前の通り型の名前だからな。自分の全ての力を注ぎ込む戦い方って言った方がいいか。だからその後出す技は変わってもおかしくない。」


「あぁ、なるほどね。じゃあまだ他にもあるってことだ?」


「さぁな、そこまでは言えない。」


「なんでだよ。」


「一応はとっておきだからな。」


「とか言ってまだ考えてないだけとかじゃないのか?」


「そんなことはない。」


「へぇ~。まぁそういう事にしておくよ。俺は大人だからな。」



 俺はガイとそんな話をした。なんかガイもドンドン性格変わっていってる気がするんだけど。色んな人と会っていってるからかな。特にバロンさんの影響も大きいと思うけど。



「まぁいいや、とりあえず休もうぜ。」



 バロンさんはその辺に座って言った。



「そうですね。階層主倒したから俺達がこの部屋を出ない限り復活することは多分ないでしょう。

 俺達の後から他の冒険者が来るってこともないでしょうし。この部屋でゆっくりしても大丈夫でしょう。」



 それはそう答えた。流石にこのまま進んで通路みたいなとこで一晩明かすのも嫌だしな。ここの方が広いし。俺はそう思って【倉庫持ち(アイテムボックス)】からテーブルや椅子なんかを取り出す。

 考えたら迷宮内でこうしてゆっくりするのも最後かもしれないよな。

 100階層に行ったら戦闘になって、その後は全滅か、完全攻略かしかない。当然俺達は攻略するしかないんだけど。


 俺達はその部屋でご飯を食べたり、ゆっくりした。

 時間もあることだし俺はバロンさんと少し話をすることにした。



「ついに後1階層で迷宮も完全攻略ですね。」


「そうだな。」


「それで、バロンさんは全部攻略したらどうするんですか?」


「うん?どういうことだ?」


「いや、なんかどう見ても最近楽しそうだったんで。また冒険者に戻ったりするのかなって思っただけです。それにここのギルドマスターになったのって言うのもこの迷宮を誰かが攻略するところを見たかったからなんじゃないですか?」


「まぁそうだな。自分が果たせなかったことを誰が果たすのか、それを見たかったのかもな。

 まさか自分でまたこうして迷宮に潜って、あと一歩で攻略するってことになるとは思いもよらなかったけどな。

 冒険者か・・・。そこまでは考えてなかったな。」


「そうなんですか。

 てっきりまた冒険者とかになるかと思ったんですけどね。迷宮を攻略したらこの場所にいる必要もなくなるんじゃ?」


「それは、そうかもしれないが、 ただそれだけで俺もこの場所にいる訳じゃない。

 色々と背負うもんも出来た。俺だってこう見えても一応ギルドマスターなんだからな。」


「一応なんですね。」


「最近ほとんどギルドになんていやしねぇしな。それでも文句も言わずに協力して、働いてくれてるやつもいるし。そいつらを放っていく訳にもいかないからな。

 なんだ?もしかして、俺も一緒にお前たちの旅に付いてきてほしかったのか?」


「いや、そういう訳じゃないんですけど・・・。」


「それは正直考えた。良いよな、お前たちのパーティ。一緒にいて退屈しない。」


「バロンさんにはお世話になりました。多分俺達だけで迷宮攻略をしていたらその内取り返しのつかないことになっていたと思います。」


「あぁ、あれか。仕方ないとは思うぞ。別の世界からいきなり呼ばれて、この世界の為に戦えなんてな。俺だったらまっぴらごめんだな。

 それをお前は投げ出さずにいるんだ、それだけで凄いと思うぞ。」


「いや、そんな。俺も投げ出せるものなら投げ出したい気はしますけどね。」


「でも投げ出してないだろ?」


「そうですね・・・、なんでなんだろう・・・。」


「なんだ?それが分かってないのか?」


「ある意味受け入れてしまってるってことなんでしょうか。それが当然の事だって。」


「そんなものなのか?」


「俺のいた世界では、なんというか空想上なんですけどこういうことがよくあるって言うか。あぁ、実際にあるって話じゃないんですよ。自分がこんな目に合うとか思いもよらなかったですし。

 ただ少しだけ憧れてたって言うか・・・。今の自分でも、その。どこかの世界では英雄みたいになれるんじゃないかなって。」


「英雄願望って奴か。なるほどな。だからお前は全部背負って行こうとしてたのか。」


「いや、そういう訳じゃないとは思うんですけど・・。でも結果的にはそう言う事だったのかもしれません。」


「責任感があることはいいことだとは思う。だが英雄もなろう思ったからなれるものでもない。

 そう言えばお前は最初から勇者の肩書を持っていたんだな。」


「そうですね。この世界に呼ばれる時にはもう勇者ってことでしたから。」


「そうか。お前には最初に勝手に勇者という責任を押し付けられてこの世界に呼ばれたのか。

 そりゃ偏るのも無理ないかもな。自分から生み出した責任じゃなくて、人から勝手に押し付けられた責任を背負わされたんだからな。」


「勝手に責任を・・・、そう言えば来たばっかりの時にそう考えた気がします。

 人のことを勝手に呼びだして、なに戦かわそうとしてるんだろうって。だから俺は呼び出した国を飛び出して自分で冒険者になって世界を巡ろうと思ったんですよね。」


「自分から戦う理由を探そうと思った訳だ。だが心のどこかで勇者ってことはずっとあったんだろうな。勇者としての責任ってもんがな。」


「そう・・・ですね。」


「それで、どうなんだ?戦う理由は見つかったのか?」


「戦う理由ですか?どうなんでしょう。今もなんだか流される様に迷宮攻略をしてる感じですが。」



 戦う理由か・・・。そう考えると魔王とは戦わないといけない日が来るだろうって考えがあって、それまでに強くなっておかないといけないと思っていたんだっけ。死にたくはないもんな。

 そして誰かに戦えと言われて戦うんじゃなく、自分で戦いたい、この世界を守りたいと思って戦えるよう自分の目で世界を見ようと思ってたんだ。

 今はどうなんだろう。

 この世界を守って戦いたいか?

 そうだな、少なくとも仲間の事は守りたいと思う。

 恋愛感情とは別だな。好きだとか愛してるとか言う感情ではない気がする。

 友情?う~ん、絆?

 でもそう言えば俺はハーレム作りたかったんだよな、ラノベで出て来たみたいな。難しいとは思ってたけどここまで難しいとは思わなかった。当然と言えば当然なんだけど。

 いきなりブランが『主(あるじ)~っ、今日はわしと2人で出かける日なんですから~』とかガイが『ずる~い、俺と一緒に修行するって約束してたのに~』とか言ってくるってことにはならない気がする。ホントにラノベとかの主人公一体どうやったらそんな風になれるのか。どちらかというとブランとかだったら『主(あるじ)、わしの全てを貰ってください』とか言いそう。ガイだったら、あれかな『しょうがねぇな、今日は俺の隣で寝ていいぞ』ぐらいだろうか。

 うん、自分で思ってて、うん、ないな。



「色々と悩んでるみたいだな。」



 俺が無言で考えているとバロンさんがそう言ってきた。いや別の事考えてました。すいません。



「そうですね。戦う理由は、多分今は仲間を守りたいってことでしょうか。」


「なるほどな。だからか。」


「何がですか?」


「仲間を守るために戦う。だが仲間も戦いに参加して傷つくことがある。そこに矛盾を感じてたんじゃないか?だから独りで仲間が傷つかない様に戦うってことになっていったんだろう。」


「そうだったのか・・・。」


「まぁそれ以外にもある気がするけど、そればかりはわからないからな。

 誰かを守るために戦うって言うのは戦う理由としてはよくある話だ。大事なものを守る為だったら強くなれる奴はいる。

 だがなそれは諸刃の剣でもある。その大事なものが守れなかった時には戦えなくなる。人って言うのは大事なものが1つだけとは限らない。増えていくもんだ。その内1つでも欠けた時戦い続けれるのか?」


「それは・・・、分かりません。」


「そうだな、仮定の話だしな。

 まぁ俺は好きだけどな、そういう方が。ただ戦えと言われたから戦ってますとか、英雄と呼ばれる為に戦ってますとかよりもずっといい。

 1つだけ言わせてもらうけどな、お前の仲間はお前と肩を並べられる奴らだ。だからただ守りたいからじゃなくて、一緒に守りたいものの為に戦うってことでいいんじゃないか?

 仲間の為に仲間と一緒に戦う、それでいいんじゃないか。」


「一緒に・・・。」


「あぁ、俺は他の奴らもお前と同じ気持ちでいると思うぞ。あいつらも地位や、名声、金の為に戦っているとは到底思えない。

 とりあえず今はそれでいいんじゃないか?もしかしたらその内別の理由が出来るかもしれない。

 話が大分逸れたな、お前が聞きたかったことって俺が迷宮攻略した後の事だったか?」


「あぁ、すいません。変な話しちゃって。ただまた少し自分の中で色々と整理できました。ありがとうございます。」


「いや、いいってことよ。なんでも悩むのなんて若いうちの特権だからな。年取ってくると悩むのも面倒になるもんだ。」


「そうなんですか?」


「そうなんですよ。俺が悩んでるように見えるか?正直迷宮攻略した後の事なんて考えたくもない。そうなったらそうなった時考えようってな。そのまま冒険者に戻るか、ギルドマスターに落ち着くかなんてその時になってからの話だろってな。」


「さっきと言ってる事違いませんか?自分には責任があるようなこと言ってませんでした?」


「あぁ、そうだよ。人間なんて思ってても上手くいくかはわからないだ。その時その時で考え方も変わるってことだ。ずっと考えていたって何がどう転ぶかわからない。

 現に今だってまさか自分が迷宮を完全攻略することになるなんて思ってもみなかったしな。予定ってつくが。」


「そうですね。いくら考えても絶対にそうなるとは限りませんもんね。

 今俺が思ってることは、今俺がここにいる理由。それは変わりませんよね。」


「また何か話てやがるな。」



 そう話してた俺達にガイが声を掛けながら近づいてきた。



「若人の悩み相談だよ。」


「お前もつくづく悩むよな。」



 バロンさんが俺の代わりに答え、ガイがため息をついた。



「なかなか相談できる人間がいないからじゃないか?お前とかに相談しても答えなんて出てこなさそうだしな。」


「なんだと、てめぇ。」



 バロンさんがなぜかガイを煽る。それに乗っかるガイ。



「だって人生経験が足りてなさそうだしな。もうちょっとそういう方面も気にした方がいいぞ。」


「人が気にしてることをズケズケと言いやがって。」


「なんだ、やっぱり気にしてたのか。」


「今日という今日は許さん。」


「じゃあどうするんだ?」


「こうするに決まってるだろ。」



 ガイはそうって剣を抜いてバロンさんに斬りかかった。バロンさんは笑いながら背中に背負った剣を抜いてガイの剣を受け止める。

 またじゃれ合いが始まった様だ。

 バロンさんもよくやる。しかしバロンさんも何か考えがあってやってるんだろうか。何となくそう深読みしてしまう。ガイの性格も大分変ってきた気がするし。俺達だとそういう所を指摘してってことはない。ガス抜きをしつつ、人としての在り方を教えてる?ん~、そんな事もないか。

 思いっきり打ち合ってる2人を見ると単純に楽しそうって言う雰囲気しか感じられない。ガイの上手い煽り方を知ってるだけかもしれない。それで自分が戦えるようにしてるだけってことも。なんにせよ、バロンさんの言葉は色々と為になった。

 

 この先どうなるかわからない。だったらいつか俺にもハーレムが出来るかもしれないってことだ。

 あれ?違うか。

お読み頂きありがとうございます。


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