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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
151/237

迷宮攻略45

 それから俺達は93階層以降の攻略に取り掛かった。

 と言っても99階層までのボスはそこまでの敵ではなかったのでダイジェスト的にまとめよう。



 93階層:

 デカいハリネズミみたいな感じのモンスター。その針には色んな種類の毒が仕込まれてるらしい。

 バロンさんが龍の形の気を放って一撃で終了。


 94階層:

 不定形のスライム。【物理攻撃無効】とか持っていた。【魔法攻撃耐性】も持っていたが俺が

【凍てつく棺(アイスコフィン)】で凍らせてバロンさんが氷ごと砕いて終了。耐性ぐらいを持ってるだけで俺の魔力を舐めるなよ。


 95階層:

 首なし騎士(デュラハン)だった。今度は【魔法攻撃無効】を持っていたがブランの岩の巨人(ギガース)に半分ぐらいの大きさになるまで殴り続けられて終了。


 96階層:

 三首龍。空を飛んでた。シータが【追跡者(トレーサー)】で後ろに回って一気に首3つを切り落とし終了。特に魔法を使えない訳でもなかったのでププの力も十二分に出せたみたいだ。


 97階層:

 アンデット系。色んな生物が混ざったような感じだった。【光龍演武《サモン・ライトニングドラゴン》】を使い、ライトニングドラゴンを突っ込ませて葬った。


 98階層:

 クラーケン?デカいイカだった。一応【物理攻撃耐性】【魔法攻撃耐性】なんかも持っていて、触手みたいな腕も切っても再生するみたいだった。他よりも少し時間がかかったけど俺とアリアで動きを止めて、ガイとバロンさんが必殺技で倒した。



 なんだろう。こんな簡単に進んでも良かったんだろうか。

 正直【白虎(びゃっこ)】とか四神シリーズの方が強かった気がする。

 まぁ今までの所は10階層行ってボス1体だったからかな。こうして毎回ボス戦ってことになると違ってくるんだろうか。地上に戻れない訳だし、回復するにも迷宮内に留まるしかない。毒とか受けて効く薬なんかを持ってないとその時点で死ぬ確率は上がる。パーティ内で戦える人数が減るとそれだけ攻略率も下がるだろう。俺達みたいに膨大なHPとMP、それに回復力を持った奴なんてそうそういないはずだし。ここ位まで進めるパーティだったらもっと人数がいたりするんだろうな。

 もしかしたら四神を倒す方法みたいなものもあったのかもしれないけど。特別なアイテムを使うと弱体化出来るとか。もう倒してしまった後だから何とも言えないけど。

 キュクロさんも段々と迷宮の中身を考えるのが飽きて、適当になったんだろうか。100階層分考えるのって大変そうだもんな。神様だから時間はあったのか。暇つぶしみたいなこと言ってたし。



 しかし気付けばもう99階層。後2つの階層を攻略したら俺達の長かった迷宮攻略も終わりを告げる。

 半年近くこのクレタにいたんだもんな。

 この迷宮のおかげで俺達も大分強くなれたし。

 そう言う目的もあるんだろうか、入った勇者を鍛える為とか。でも今までの勇者は50階層位しか攻略してなかったらしい。それでよく魔王とかを倒せるもんだ。まぁここ以外にも鍛えるところは別にあるのかもしれないけどな。

 考えてみたら別にこの迷宮で鍛えなくてもいいのか。敵を倒したら経験値はもらえるけど、ドロップ品なんてものはないしな。ここで死んでも勝手に生き返る訳でもない。すぐに街に戻れない場合もあることを考えたらわざわざここで自分を鍛えなくてもってことか。

 利点は敵の種類は決まってるから戦い方が確立出来るぐらいか。一回倒さないといけないけどな。外でもスキルを使えればある程度の敵の詳細はわかるから大差ないか。

 とりあえずこの迷宮を攻略してからだよな。結局流されるまま迷宮攻略も始まったし。俺達の装備も作らないと。50階層は攻略してるからキュクロさんには加護と武器防具の作り方を教えてもらえるんだろう。ブランにお願いすると思うけど。それからどうするかだよな。特にどうするかは決めてないし。

 俺も魔王討伐に行った方がいいんだろうか。

 そんな考えも少しながらあって俺は迷宮攻略の予定を早めた。もう少し準備をする時間を取ってもいいかと思ったんだけど、カストが軍を討伐に向かわせたと聞いて俺も少し焦ったからだ。

 カストが魔王を討伐できるかは別として、それによって触発された魔王が自分達もこちらに攻め込んできたら?この【アルメデ】の大地が戦場になる可能性もあるってことだ。それまでに強くなっておかないといけないし、知っておかないといけないことも色々とあるだろう。

 そう思い、バロンさんの話を聞いた次の日に100階層までの攻略に踏み切ったんだ。

 100階層攻略することによって俺の悩みが少しくらいは解決すればいいんだけど。何かしらの進展はあるとは思っている。それがいいか、悪いかはわからないけど。



 途中で休憩も挟み、特に疲労もなく99階層のボス部屋の前にこれた。後少しだ。

 俺達は扉を開いて中に入った。

 部屋の中はそれなりに広かった。98階層のクラーケンが出た部屋もかなり広かった。それぐらいの広さがあった。ってことはまた大きなボスってことだろうか。

 そう思っていた俺の前に魔法陣が出来、光が集まる。

 光が集まるのを見てるが大分小さい感じがする。大きなボスだと集まる光もかなり大きなものになるはずなんだけど。

 人の身長より少し大きいくらいの光が2つ。

 ん?と思えば光が収まり中から人影が現れる。

 身長は2m近くはあるが、その外見はおおよそ人と変わらない。ただその頭には角が生えていた。

 1人は額から大きな角を1本生やし、もう1人は頭の左右に1本ずつ、計2本生やしている。

 角が生えている以外はただの人に見える。

 1本角の方は身長190位の筋肉質っぽい。服を着ているから何となくしかわからないが、服を押し上げる筋肉を見たらいい体をしているのが分かる。服は和装だった。と言ってもザ侍って感じのハカマ姿なんだけど。手には一振りの刀を持っている。この世界にもあったんだ。

 2本角の方は2mを越える大柄な体躯をしていた。服は和装は一緒だが。こちらは侍って感じではない。なんというか、お坊さん?住職?そんな感じなんだが。手には身の丈ほどもある金棒を持っていた。その為破戒僧って単語を思い出した。

 しかしこの2人って・・・。



「こんなところで会う事になるなんてな。」



 ガイがそう言った。じゃあやっぱり。



「目の前のって【鬼】ってことだよね。」



 【鑑定眼(アナライズ・アイ)】で確認すればわかるだろうが、俺はガイに聞いた。



「そうだ。こんなところで会えるとは思わなかった。しかし初めて会うのが本物じゃないなんてな。」



 ガイがそう言う。そう言えばここに出るのって迷宮モンスターだ。実際の鬼とは違うんだろうけど。



「だがここに出るってことはそれなりの強さがあるってことだろう。本物と違いがない位に。」



 そう言ったのはバロンさんだ。

 あぁ~、なんかこの流れわかちゃったよ。多分あれだよね。



「お前らは手を出すなよ。ここは俺とガイで行く。」



 ですよね~。バロンさんの言う事は先に予想がついた。どう考えてもいい敵に巡り会えたってとこだよね。こうなった2人を止められないのは重々わかってる。



「わかった。2人共気を付けてね。」



 俺はそう言って後ろに下がった。ブランやアリア、シータも承知してるのか、俺と一緒に後ろに下がっていく。



「俺はあのデカい方だ。」


「あぁ、俺は1本角でいい。どれほどの力を持ってるか楽しみでしょうがない。」



 バロンさんとガイは楽しそうに話をしてる。

 ゆっくり楽しんできてくださいとは言えないな。敵もかなりの実力を持ってるみたいだし。【鑑定眼(アナライズ・アイ)】で見てもスキルは2人と大差はない感じだけどそれだけじゃない感じがする。



「まずは。」



 ガイがそう言って姿を消した。そして1本角の横に現れる。いつも通り【瞬行(しゅんこう)】で移動して一気に攻撃するつもりだろう。ガイの剣には既に赤色の気が纏ってあった。

 1本角は腕を少し動かし、迫りくるガイの剣を軽く受け止めた。1本角の刀にも赤色の気が見て取れた。

 あいつらも気功術を使える?しかも一瞬で間を詰めたガイの剣を受け止めるだなんて、どんな反応速度だ。

 【瞬行(しゅんこう)】で移動して斬り付ける場合は、一瞬で間合いを詰めて斬りかかれる。だが普通に斬り付けるよりも、ただその場で剣を振るっただけになる。どちらかというと奇襲的な意味合いが強く、剣を振る時腰などは入ってない。気を纏わせることによって切れ味を良くしているから今までの相手だと一瞬で切り裂くことが出来た。物凄く切れ味のいい刃物をただ振るっただけだ。剣で斬るって言うのはただそれだけではない。

 目の前の敵は同じ様に気を操れるみたいだ、だから移動して斬り付けるだけの攻撃なんかは簡単に受け止めることが出来たんだろう。



「だよな。」



 ガイはそう言って受け止められた剣を引いて構え直し、斬りかかっていく。【瞬行(しゅんこう)】を使うのを止め、普通に剣を振るう事にしたようだ。

 それから何合も1本角とガイが剣を打ち合せる。ガイの剣はどちらかというと西洋風の戦い方だ。対して1本角の方はまた違った剣の扱い方だった。自然体と言った方がいいのか、その都度剣に合わせて振るっている感じだった。まるで1本角が構えた剣の所に後からガイが打ち込んでるように見えた。



 一方バロンさんの方はこれまた全然違う戦い方だった。

 初めにバロンさんは剣を担いだまま2本角に突進していって、大きくジャンプしてからその剣を振るった。それを2本角は避けようともせず、金棒を上に掲げ真っ向からバロンさんの剣を受け止めた。

 2本角の足元が砕け、体が沈む。だが2本角はしっかりとバロンさんの剣を受けきった。そして金棒を振るい、バロンさんを吹っ飛ばす。バロンさんも空中で受け身を取ってしっかりと着地する。


 両者とも戦い方が似てる感じだな。

 それからも両者とも幾度となく剣を打ち合せる。

 お互い有効打がないまま、剣を重ね続ける。実力はそう変わらないみたいだな。皆剣術なんかのスキルはマックスまで行ってるし、気の使い方も変わりがない。実力伯仲とはこのことだろう。

 このままだったらいつまで経っても勝負がつかないんじゃないのか?そんなことを考えた。



「いつまでも楽しい時間を過ごしてる訳にもいかねぇな。」


「そうだな。ずっとこの時間に浸っていたいが俺達にも目的があるしな。」



 バロンさんがそう言って、ガイも答える。



「次で終わりにしてやるよ。」


「こちらもだ。」



 2人はそう言って気を溜める。あれを使う気か。

 鬼達の方も何かを感じ取ったのか、深く構えて気を溜めているようだ。



「いくぞ!終(つい)の型、奥義【龍王爆砕破(りゅうおうばくさいは)】」



 そう言って剣を振るうバロンさん。剣からは前に見た龍王が現れて2本角へと向かう。しかし同じぐらいの力を持っている奴に効くのか?万が一耐えられたらもう戦えないって言うのに。

 2本角は武器の金棒に力を注ぎ込んでいる様だ。それで飛び来る龍王を粉砕しようとでもしてるんだろうか。バロンさんの様に同じぐらいに力を注ぎ込んでいたら龍王が叩き壊されてもおかしくはない。


 しかし次の瞬間に驚くべき光景が広がる。

 なんとガイが2本角の後ろに現れたんだ。



「終(つい)の型、奥義【絶刀(ぜっとう)】」



 ガイがそう言って剣を振るう。上段から振られた剣は2本角の頭に吸い込前る様に入り、スッと地面のギリギリまで抜けた。まるで何もない所でただ剣を振るっただけの様な動きだった。しかし確かにその剣は2本角の体の中を通っていた。ゆっくりと2つに割れる2本角。

 その光景に驚いたのは俺達だけではなかったようだ。1本角の方もそんなことになるとは思ってもいなかったのか、刀を構えたままだった。しかし動かないガイを仇だと言わんばかりに構え襲い掛かる。

 ガイも終(つい)の型を使ったばかりもあったのか動けないでいた。その背中に向かって刀が振り下ろされそうとした時、ガイの横をすり抜けバロンさんが放った龍王が1本角に襲い掛かった。

 龍王は1本角の刀に噛み付いた。1本角は予想をしていなかったことがまた起きたのか、一瞬ためらった様な仕草をした。龍王は刀に噛み付いたまま始点にして、その体を1本角に絡ませた。刀を噛まれた瞬間に手放していたらこうはならなかったかもしれないがもう遅い。1本角は体を龍王に巻き付かれ、締め上げられる。龍王は飛んできた勢いそのまま1本角を連れて突き進む。そして大分距離が離れてからいきなり爆発した。物凄く大きな爆発だった。バロンさんがかなりの力を込めて作った龍王だ。その爆発力も納得出来る。

 爆発が収まった所を見ると何もなかった。あの状態で爆発されたら跡形も残らないだろう。まぁ迷宮モンスターは倒されたら消えて何も残らないけどな。


 部屋の出口の方の扉が開いた。ボスの鬼2体を倒したからだろう。

 それにしても。



「あんな感じの終わりでよかったのか?」



 俺はガイとバロンさんの方へ行ってそう聞く。



「あんな感じとは?」



 剣を収めながらガイが聞いてくる。



「いや、なんか真っ向勝負みたいな空気出しておいて背中から斬るとか。」


「言っただろう。俺達には目的がある。この迷宮を攻略するってな。あいつらと正々堂々と戦うのが目的じゃない。」


「それはそうなんだけど。騎士道に反するとかないの?」


「今の俺は騎士なんかじゃない。ただの冒険者だ。一番確実に倒せる方法を取ったまでだ。」


「ガイがそう言うならいいんだけどね。バロンさんも最初から狙ってたんですか?」


「ん?あぁ、あれな。そうそう、俺に注意向かせたらガイもデカいの斬りやすいだろうと思っただけだ。デカい奴なら俺のとっておきも耐えられる可能性があったしな。だったらもう1体の方を狙った方がいいだろうと思ってな。あそこまで上手くいくとは思わなかったけどな。」


「2人ともよくお互いの動きが分かりましたね。特に話し合ってる感じはしませんでしたけど。」


「まぁな。大体何しようとしてるくらいかはわかるさ。一番倒せそうな手を考えたらそうなるだろって感じだな。」


「そうそう、一番勝てそうな手を取ったまでだ。」


「なんか、2人だとそう言うのよりも根拠もなく絶対に自分が勝つってことだけで戦いそうだと思ってたんだけど。」


「俺達の事をどう思ってるんだ?さっきも言ったが今の目的は100階層を攻略することだろ。

 自分がやりたい事だけ優先する訳ないだろ。」


「なんか御免。」


「それに、多分本物の鬼はあんなもんじゃないだろう。」


「そうなの?」


「あぁ、あいつらには俺達みたいな技とかなさそうだし。もしかしたら作ったのが昔だったからとかかもしれないがな。本物はもっと強いだろう。だから本物と戦うまでそう言うのは置いておくことにした。」


「そうそう、楽しみは後に取っておいた方がいいだろう。」



 ガイとバロンさんはそう言った。そう言えばキュクロさんがこの迷宮を作ったのはかなり昔だろう。その当時の鬼のデータでここのボスを作ったのかもしれない。流石にそれから鬼の一族が強くなっていったからっていってアップデートみたいなことはしてなさそうだもんな。

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