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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
153/237

迷宮攻略47

「さてと。」



 一晩迷宮内で過ごした。【鑑定眼(アナライズ・アイ)】で確認したがガイやバロンさんのステータスの値も戻っていた。



「準備はいい?これが本当に最後の試練ってことだと思う。でも今の俺達にとっては問題ないはずだ。さっさと攻略してキュクロさんを驚かせてやろう。」


「そうだな、まずはギルドに帰った時が大変な事になってるだろうがな。」



 俺が聞くとバロンさんが笑って答えた。



「そうだな。これで最後となると少し残念な気もするが。まだこれからやることも大いにありそうだから単なる通過点だろう。」



 ガイが言った。



「そうじゃな。魔石を作ったり、皆の武器も作らんといけない。わしはこれからの方が大変になりそうじゃな。」



 ブランも言った。



「私の見たものが正しければ・・・、いえ。このお話は全てが終わってから致しましょう。」



 アリアも色々と抱えてるみたいだな。



「ここのご飯も飽きてきた。美味しいもの食べに行きたい。」



 シータが言う。そう言えばこの町にずっといるし、これが終われば旅に出る事になるかも知れないな。いや、作らないといけないものがいっぱいあるからしばらくまた別の所に籠ることになりそうだが。



「なんにせよ。一つの区切りにもなるし。全力で行くぞ。」



 俺はもう一度皆にそう言って100階層に進むことにした。

 ここ最近だったらボスがいる前の階層に魔法陣があって、どこかに飛ばされていた。

 しかし今回99階層からは下に階段が伸びていた。

 普通に進むんだな。

 そう思いながら俺達はついに100階層に足を踏み入れた。そこは特に今までと変わった雰囲気はなかった。通路があって先には扉があるようだ。

 一応100階層に来てから支援魔法を使ってみる。魔法は問題なく発動した。魔法を封じられる階層って訳でもない様だ。

 そのまま進み扉の前に来た。

 100階層に合った扉は今までの物よりも少し小さ目だった。例えるとそこそこいい家の玄関扉の様だった。雰囲気的には洋風っていうより、和風に近い感じなんだけど。流石に横にスライドさせる扉ではないが。どういう事だろう?と少し悩むが悩んでいても始まらないことに気付く。

 結局は中に入ってみないとどうしようもないんだからな。


 俺は皆の顔を見る。

 皆は無言で頷く。俺は意を決して扉に手を掛け引く。扉は特に重くもなくスッと開いた。

 そして開かれた扉に俺から入る。

 入った俺は目の前に光景に言葉を失う。


 そこには庭が広がっていた。

 

 そう、綺麗に整えられた庭園と言った方がいいだろう。

 それなりの広さがあって草木が生え、池もあった。色とりどりの花が咲いている。紅葉している木もあった。季節感がバラバラだが、きっちりと手入れされている感じが見て分かる。

 それにしてもどうしてこんな所に庭なんて・・・。



「驚いたかね?」



 いきなり声を掛けられた。部屋に入って人の気配なんて感じていなかった。目の前の光景に呆気に取られていたこともあるかも知れないが油断し過ぎた。しかし俺に掛けられた声はとても落ち着いた声で、敵意など微塵もない気がした。


 俺は声の主を探し、声のした方へ視線を向ける。

 そこに立っていたのは老人だった。

 髪は全て真っ白、いや、白いというか銀色の様にも見える。男性の様で、口髭と顎髭も同じ色をしてかなりの長さがあった。服は和装というかなんとも形容しがたい服装だった。俺が抱いた感想は仙人て言われる人はこんな感じなんだろうなと思った。

 それにしても・・・。



「はい、驚きました。まさか100階層の最後の部屋にこんな光景が広がっているとは、思いもよりませんでした。」



 俺は努めて冷静に答えた。

 俺の後ろには部屋に入った時の俺と同じ様に驚いている仲間がいる。無理はないよな、最後のボスとの戦闘を意気込んで乗り込んでみたら綺麗な庭と老人が1人いるだけなんだから。



「初めてのお客様じゃからな。わしもどうお迎えしていいかわからないんじゃよ。

 あぁ、折角だしお茶を入れよう。付いてきてもらえるか。」



 そう言って老人は庭の中を進みだした。

 俺は言われた通り老人の後ろをついて行くことにした。後ろの皆は一度顔を見合せたようだが、大人しく俺の後に続いた。


 老人がしばらく歩くと池の近くの東屋に入って行った。

 俺も続いて入る。そこにはテーブルとイスが備え付けられていた。



「さぁ、どうぞお掛けなさい。」



 きっちりと人数分のイスがあり、勧められる。



「失礼します。」



 俺はそう言ってイスの1つに座った。仲間の皆も俺に続き席に着く。

 老人も俺達の前に座った。

 老人がパンッと手を鳴らすと、テーブルの上に茶器とお菓子の様な物が現れた。

 その光景に目を見張る仲間達。

 老人は静かな動作で急須から器にお茶を入れた。そして俺達の目の前にそれぞれ配ってくれた。



「心配しなくても毒なんて入れておらんよ。」



 老人はそう笑って言った。

 俺は器を手に持ち口に近付ける。今まで嗅いだことのない様な香りがお茶からはした。ゆっくりと口に含み飲み下す。味わったことのない旨味が口に広がる。



「美味しいです。」



 俺は素直に感想を口にした。

 その姿を見て仲間達もお茶に口を付けた。そしてその味に少し驚いている様だった。

 老人は少し笑ってずっとお菓子を狙っているシータに、1つ手に取り渡していた。すぐさまお菓子を口に放り込んだシータが幸せそうな声を上げた。よっぽど美味しいんだろう。すぐさま2つ目を催促していた。



「美味しいお茶とお菓子、ご馳走になりました。

 ただ俺達もこうしてただお茶をご馳走になりに来た訳ではありません。

 失礼ですがあなたが【青龍(せいりゅう)】ですね?それとも龍神様とでもお呼びすればよろしいでしょうか?」



 俺の言葉に仲間達が少し驚く。まぁある程度は予想はしていたみたいだけどな。



「あぁ、別になんと呼んでもらっても構わない。

 そう言うお主は勇者じゃな?」


「えぇ、名乗るのが遅くなりました。ダイゴと申します。一応勇者です。」


「一応か。しかしよくわしの事がわかったのう。」


「何度か神にはお会いしてますから。」



 俺はそう答えた。俺は【青龍(せいりゅう)】と出会った瞬間に【鑑定眼(アナライズ・アイ)】で当然確認をした。しかしキュクロさんと同じ様にステータスを見ることが出来なかった。だから目の前にいるのが神だということが分かった。



「それはそうか。この迷宮に入る様に言ったのもキュクロだったろうしのう。

 しかしまさかここまでくる人間がおるとは思いもよらなかった。」


「そうなんですか?というか、この迷宮が出来てからずっとこの場所にいらっしゃるんですか?」


「あぁ、そうじゃよ。」


「来るかもわからない人間をずっと待ってたってことですか?」


「まぁのう。ここだけの話、昔キュクロと賭けをして負けてしまってなぁ。その時に頼まれたのだよ。この最後の階層いて欲しいとな。」


「それを受けたんですか?それからずっと1人でここに留まっているってことですか?」


「あぁ、そうじゃ。」


「それは・・・、なんというか寂しくはないんですか?」


「うん?まさかわしの事を心配したのか?」


「神に対して不敬かとは思いましたが、ただそう思ってしまったんです。」


「素直じゃな。何、外におったからと言っても特にすることもないしのう。ここにおっても外の様子ぐらいはわかる、わしも一応神じゃしな。」


「そうでしたか。すいませんでした。」


「別に謝るようなことではない。しかし、こうして人と話をすると言うのもいつぶりか。わしが答えられる事であれば答えてやるからもう少し話をしようではないか。」


「わかりました。では失礼ついでにもう1つお聞きしたいのですが・・・。

 あなたは元々神で生まれたのではなく、神になったのではないでしょうか?」


「ほぉ、どうしてそう思うんじゃ?」


「龍が神だったというのであれば、他の龍もその神の一族になる気がするんです。ただ他の龍やドラゴンと呼ばれる種族は神ではない。そうなると、あなたが途中から神になったんじゃないかと思ったんです。」


「うむ、正解じゃな。わしは長く生きている間に神に昇華した存在じゃ。」


「そうすると、もしかすると人や他の種族でも神になれるという事でしょうか?」


「さぁ、それはわしにもわからんが。大変難しいことだろう。神になるという事は、ある意味この世界への干渉を無くすという事にも繋がる。ここに存在するが、だからと言ってしたいことが出来るとは限らない。果たしてそれを望む者がいるかどうか。」


「なるほど。」



 そう言えば神は人にあまり干渉できないんだったっけ。神になったからって自分の好き勝手に何かできるようになる訳でもない。例えば俺が神になったらなったでその時点でハーレムの夢なんて捨てないといけない。そうなったら何の為に神になるのかってことだよな。他の人の願いを叶えたりするだけの存在になるとか、欲がある人間には難しいだろう。この世界のシステムの一部になるってことだろうか。そうなりたいなんて奴は探す方が難しいだろう。



「しかし何故そんなことを聞くんじゃ?お主は神にでもなりたいのか?」


「いや、そんなことは思ってません。ただ、俺のいた世界には神っているとは言われていますけど会うなんてことは出来ませんでしたから。こうして目の前に神がいてお話しできるんだったら神ってどういう存在なんだろうって思っちゃったんです。すいません。」


「なるほど、なるほど。知的好奇心と言うことじゃな。」


「そうですね。特に途中から神になるってどういう事だろうって考えてしまって。」



 そんな話をしているが仲間達は皆は固まったまま聞いている。俺がこんなに気安く話してるのがおかしいのか?いや、でもな。



「なかなかに面白い奴よの、お主も。神と聞くとお前の仲間の様に委縮する者も多いというのに。」


「そうですね。大変失礼な事を色々としてしまってるのかもしれません。

 ただ、このお話が済めばあなたと戦う事になるでしょうし。ずっと委縮してしまってもよくないかと思いまして。」


「ほぉ、何故そう思う?」


「いや、それはここが迷宮の最後の階層だからでしょう。

 まさか最後の階層が神とお茶をして終わりとは到底思えません。試練にはなりませんからね。

 わざわざキュクロさんがあなたにここに留まる様に言ったのは、あなたが直接試練を与える様にと言ったからじゃないですか?」


「うむ、その言葉に間違いはない。」



 【青龍(せいりゅう)】の言葉に皆にも緊張が走る。



「ただお主に尋ねたい。神に勝てると思っておるのか?」


「いや、単純に考えて無理でしょうね。神を倒せるって、それはもう神ぐらいじゃないでしょうか?」


「それが分かってなお、わしと戦うつもりか?」


「そこはそれかなと思ってます。試練の場なんで完全に倒すみたいな感じではなく、腕試しぐらいに止めておいてもらえるんじゃないかと予想はしているんですが。」


「ふふふっ、なかなか聡いではないか。

 その通りじゃよ。まさかわしを倒せなど言うはずはない。先程お主が言ったように神を倒せるのであればそれはもう人ではないだろう。」


「ですよね。では具体的にはどうすれば認めて頂けるんでしょうか?」


「さぁてな。お主はどうしたい?」


「えっ?」



 俺は流石にそう聞かれて驚いて声を上げる。



「いや、なに。考えてみたらここへ来たのはお前たちが初めてな訳だ。それにわしはまさかここに人が来るとは思ってもいなかった。今までも70階層位までしか攻略する者もおらんかったしのう。

 実はわしも試練の内容なんて考えておらんかったのじゃよ。」


「マジっすか?」


「大真面目じゃよ。」



 思わず普通に言っちゃったよ。それにしても何も考えていなかったって。そう言えば何かの賭けで負けてここにいるって言ってたしそこまで深く物事を考えない性質なんだろうか。



「えっと、基本的には戦う感じで間違いはないですか?」


「そうじゃな、その方が分かりやすいじゃろう。」


「龍の姿に戻って戦われるんですよね?」


「わしはどちらでも構わんが、その方がお主も戦いやすいであろう。」


「そうですね、出来ればその方が戦いやすいかもしれません。」



 老人の姿相手に魔法打ち込んだり、剣で斬ったりって言うのはな。



「でしたら、どこか一部分でも攻撃を当てたらという事ではどうでしょう?」


「それは流石に簡単すぎるだろう。」


「でしたら、その。髭を切り落とすとか・・・。」


「ほうっ、髭であったらわしに一太刀浴びせれるという事か?」


「あぁ、いや、なにかすいません。わかりやすいかなってことです。俺も狙う部分が特定してるし、そちらもそこを守るのが分かりやすいかなって。それに髭ならまた時間が経てば生えてくるかと思いまして。」


「ふむ、なるほど。しかし良いのか?お主の狙いが髭だと分かっていれば近づく事さえ難しくなるかもしれんのに。」


「そこは、やっぱりそれぐらいをしないと認めて頂けないかなって思いまして。」


「面白そうじゃ。良し、それで行くとするか。しかし髭なんて切られたら不格好になるじゃろうから、そうそう切らせたりはせんぞ。」


「最後の最後がこんな戦いになるなんて思ってもいなかったですが、やるだけです。」

お読み頂きありがとうございます。

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