表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
133/237

迷宮攻略27

「先行するから付いてきてくれ。」



 俺はそう言って走り出す。

 分身体も俺と並走して走り出している。全く同じスピードでだ。

 同じステータスを持った同じ人間なんだから当たり前なんだけど。

 でもここまで全く一緒のもう一人の自分がいるって言うのは、なんだか気持ちのいいもんではないのかもしれない。

 分身が作れるってスキルを見付けた時には喜んで楽しみにしていたものの、実際使ってみるとな。

 まぁなんかそのままの自分を客観的に見ると変な気持ちになる。

 変な気持ちって言ってもさっきアリアが言ったような興奮するとかそういう話ではない。

 

 この間スキルのどっちが強いかって言うので【絶対防御(イージス)】と【断罪(ジャッジメント)】を確認した時にこの分身体を使ったんだ。

 分身体に【絶対防御(イージス)】のスキルを付けて、俺が【断罪(ジャッジメント)】で斬り付けるってことをした。結局【絶対防御(イージス)】が効かずに分身体は真っ二つになった。

 いや~、自分が真っ二つになるのを見るってシュールだなって思った。しかも分身体だから痛がるとかなく無表情だったし。やろうと思えば笑顔とかに出来たけど、それの方が更に狂気を感じる。

 その後も色々なスキルを分身体と試したんだ。主にこっちが色んなスキルを使って攻撃してどうやったら耐えれるか、どのスキルなら防げるかを試したんだけどね。

 敵も俺が使えるスキルを使える可能性は当然あるんだから対処法については知っておいた方がいいと思ったからだ。

 でも自分と同じ姿をしたものを倒すって言うのは、なんだかな。あまり気持ちのいいものではないな。

 それもあってか俺は分身体にはあんまりいい感情を持てなかったのかもしれない。

 今回は分身体は攻撃に回ってもらうからそう言う事にはならないだろうけど。ただ無表情で淡々と敵を倒して行くのを見るのもな~。と言うかいつも俺はどんな顔をして戦ってるんだろうか。

 自分のやることを本当の意味で客観的に見れるってことが嫌なんだろうか。ビデオに撮った自分の姿に気恥ずかしさを憶えるのと変わらないか。



 おっと、そんな俺の感情はさて置かないとな。

 これからは結構大変な思いをしないといけないしな。 

 走る俺達の前にモンスターらしき影が見えてくる。後ろに続いてくる仲間の為にも早目に片付けて行かないとな。

 そう考え、分身体を影に潜らせる。そして俺も影に潜る。戦闘開始だ。


 別に分身体に合図を送ったりする必要はない。考えは共通だから自分自身の様に分身体を動かせる。

 まぁこれも普通はノータイムで分身体を操るのは至難の業なんだろうがな。俺は【並列思考(マルチタスク)】や【高速情報処理ハイクイックオペレーション】なんかのスキルが使えるから、2つの別々の事を行うことが出来る。


 俺と分身体はそれぞれ影から出て攻撃を始める。

 分身体はサイの様なモンスターに剣を振るう。その剣に音もなくモンスターは斬られて姿を消す。

 ここで倒したモンスターは消えてくれるからありがたいな。

 死骸が残ったらそれを乗り越えていかないと進めなくなるかもしれないしな。

 でも死骸が残ったら皮や牙、爪なんかが武器とかの素材になって売れるかもしれないが。

 こんなところでおちおち剥ぎ取ってる訳にもいかないんだけど。


 分身体はまた影に潜り別のモンスターの影から現れて斬っていく。

 俺も同じ様に別のサイの様なモンスターを倒して次の敵を探す。

 モンスターを倒すのが目的ではなく、俺達が進める道を切り開くのが役目だ。


 それから俺と分身体の怒涛の連携が始まった。

 分身体は基本的にはサイの様なモンスターを優先的に狩っていく。ただそれだけだと俺が動きにくいのでたまに俺が相手するモンスターの気を引いたりもした。

 俺はチビ【玄武(げんぶ)】の相手だ。ナマズは今回も無視していっている。

 しかし作った槍足りるだろうか。このペースでブン投げていったら何本いるのかわからないな。

 うん?今考えたらチビ【玄武(げんぶ)】の核に攻撃が刺さればいいんだよな。

 ってことはと思って俺は実験することにした。


 分身体にしばらくはモンスターを倒すのは任せて俺は別の事をする。

 【倉庫持ち(アイテムボックス)】から必要なものを取り出してスキルも付け替える。

 素になるのはあるんだから後は繋ぎ合わせていったら・・・と思って必要な部分に必要な材料と、必要なスキルを使う。元々のノウハウや材料、スキルは揃っていたので思ったよりも時間がかからず完成した。

 さっそく試してみるか。


 俺はそう思って影に潜り、1匹のチビ【玄武(げんぶ)】影から出てくる。

 そして何も持っていない右手をチビ【玄武(げんぶ)】に向ける。

 すると手のひらから【神槍(グングニール)】で使っていた槍が飛び出る。

 俺の右手から飛び出た槍はドンドンとその長さを増し、チビ【玄武(げんぶ)】の体に突き刺さる。しかし槍は止まらずそのまま進む。そして刺さった方とは逆の甲羅からその先端をのぞかせた。

 突き通されたチビ【玄武(げんぶ)】の姿が消えると、俺の手からは10m以上の長さを持った槍が右手から生えていた。

 生えるって表現しているが実際に生えてる訳ではないけどね。



 俺はふと思いついたことを試してみた。

 槍を投げるのではなく、ものすごく長い槍を使って突いたらいいんじゃないかってことだ。

 それだったら投げ槍と違ってなくなることがない。ただこの長さの物を槍と呼んでもいいのかわからないけど。

 とりあえず俺は【倉庫持ち(アイテムボックス)】にあった投げ槍のいくつかを分解して、それを材料にして何本かの槍を繋ぎ合わせたんだ。長さは15m位になった。この長さであればチビ【玄武(げんぶ)】の体も突き通すことが出来るだろう。ただそんな長さの槍を持ってたり、振り回したりするのは大変だろう。そこで【倉庫持ち(アイテムボックス)】に入れておいて、右手から滑り出す様に出して見せたんだ。思った通りの動きをしてくれた槍は、あたかも俺の手の平から生えたようにも見えた。

 【倉庫持ち(アイテムボックス)】から取り出すときに一瞬で手元に取り出せるから、こんな取り出し方が出来るのかと考えた。しかし【倉庫持ち(アイテムボックス)】の中に入れている水なんかは必要な量だけどれぐらいの水量で取り出せるかなんて調節ができた。だから槍に関しても先端から伸びる様に取り出せるんじゃないかって思ったんだが問題なかったようだ。やっぱり出来ると思えばたいていの事は出来るような気がするな。


 これは【神槍(グングニール)・改】って名前にでもしておくかな。

 これでチビ【玄武(げんぶ)】を倒すのに投げ槍を使わなくても済むな。でも【神槍(グングニール)・改】は槍はなくならない代わりに、俺が全力で投げてる訳ではないからスピードがあまり乗らないんだよな。素早い相手だったら通用しないかもな。その時はやっぱり【神槍(グングニール)】を使わないといけないだろう。その時はその時だな。攻撃のレパートリーが増えただけで良しとしよう。


 

 俺がこんなことしている間にも分身体は頑張って敵の数を減らしていっている。

 【影移動(シャドウムーブ)】で敵の多いところに突っ込んでそのまま剣を振るって何体ものモンスターを葬ってる。攻撃は今の所喰らっていないがMPは徐々に減っていってる。ホントにこの階層持つか持たないかぐらいか。


 ただ仲間達も色々と動いてくれている。

 アリアとブランはこちらに近付いてきそうな敵に【岩の人形(ロックゴーレム)】や【水の駆け馬(サモン・アクアホース)】を使って敵の注意を引いてくれている。

 アリアには今回50階層の時に手に入れたマジックバックを渡している。その中を全て水で満たしているからこの場でもそれなりの水の魔法を使う事は出来る。ただそこまでの威力は出ないからどちらかと言うと牽制位なんだけど。それでも注意を引いてくれてる間に俺と分身体がモンスターを倒して行ける。

 ガイとバロンさんもそれぞれモンスター相手に戦っている。

 2人共顔を狙って確実に目を潰しに行ってる。それでなくても衝撃系の気を使って頭を攻撃してるんだ。攻撃を受けたモンスターはダメージが脳に行ってるのかふらふらと倒れていった。そう言う方法もあるんだな。モンスターを倒し切らなくても、横を通るだけなら無効化しておいたらいいんだもんな。

 2人も色々と考えていたようだ。まぁ魔素を固めたモンスターに脳ミソみたいなものがあるとは思わなかったけど。ある程度の作りはちゃんとモンスターとしているんだろう。元々この世界にいるモンスターか、キュクロさんが勝手に作り上げたモンスターかはわからないけど。



 それで俺達は少し時間はかかっているが、何とか次の階層に進む魔法陣まで進めている。

 このままいけばもう少しで次の階層まで行けるだろう。

 ただこの階層が物量なら、次の階層はどうなってるんだろう。いやな予感しかしないんだが。

 本当にゲームの世界に入り込んだみたいだ。俺の予想とか結構当たるしな。次は85階層だろ。絶対に何かあると思う。

 何故だかわからないが俺はそんなことを感じ取った。こういうのを第六感と言うんだろうか。

 その第六感が当たることになるんだが。



 次の階層への魔法陣が見えた。

 俺達はその魔法陣へ走る。俺達の後ろには分身体がモンスター相手取っている。そのおかげで俺達の方へはモンスターはやってこない。もう少しだけ頑張ってくれよな。そう思いながら俺達全員が魔法陣に辿り着くことが出来た。


 最後に大技決めて終わりにするか。

 皆のおかげでMPが空になってしまうかと思ったが結構残ってる様だ。

 分身体には【影移動(シャドウムーブ)】が出来るように【闇魔法】のスキルを持たせている。

 だからあの魔法が使える。

 分身体が右手を前に出して構える。そして残ったMP全てを使って分身体の目の前広範囲に黒い影を吐き出す。

 【玄武(げんぶ)】を倒した【黄泉の門(ハデスゲート)】を使ったんだ。ただ範囲指定なんかは一切せず、自分へ負荷や万が一の巻き込まれることも度外視して放ってやった。大きな黒いものが辺り一帯を包んでいく。そしてその黒い影が消え、そこにあったものを全て削り取っていった。分身体から前方100m位のものが全て削り取られた。制御せずに放つとこうなるのか。勉強になった。こういうのは自分で試したりしようとは思わないからな。分身体は全てのMPを使い切ってその身を消した。

 お疲れさん、ともう一人の自分に対して告げ、俺も次の階層に続く魔法陣へ足を踏み入れた。

お読み頂きありがとうございます。


一週間に1回の更新も出来なかった・・・。

でも少しやらないといけないことも落ち着いたので更新のペース上げれると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ