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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
132/237

迷宮攻略26

 俺達の前に姿を現したのは以前に戦った【玄武(げんぶ)】を小さくした感じのモンスターだった。

 全長は10m位で、高さが4m位の甲羅を背負っている。

 ご丁寧に尻尾が蛇の様になっているのも変わらない様だ。大きさが違うだけで本当に【玄武(げんぶ)】そのままの様だった。


 しかしまずいな。

 あれだけ大きいとなかなか一撃で倒すってことは難しい。

 【断罪(ジャッジメント)】のスキルを使えば硬い甲羅なんかも簡単に切り裂けるだろう。ただそれでも一撃で体の中心に刃を到達させるのは難しい。最長でも2m位しか伸ばすことが出来ないし。

 気を放つような感じで刃を打ち出すことが出来ればいいが、【断罪(ジャッジメント)】のスキルはあくまで持ってる剣にしかスキルが乗らないみたいだった。その為に遠距離に【断罪(ジャッジメント)】の刃を放つことは出来ない。

 【玄武(げんぶ)】と同じく鈍重そうなので素通りをすればいいと思うんだが、見たステータスには【土魔法】があった。

 【玄武(げんぶ)】と戦った階層では魔法が封じられていたから【玄武(げんぶ)】は使ってこなかったが、ここでのモンスターは【土魔法】を普通に使ってくるだろう。

 素通りしようとして魔法での攻撃や、蛇の様な尻尾の攻撃を受けると簡単には前に進めなくなる。やはりここは倒して前に進むしかないだろう。



 俺の必殺技第2弾のお披露目と行くか。

 俺はある物を【倉庫持ち(アイテムボックス)】から取り出して、手に持ち影に潜る。

 そしてチビ【玄武(げんぶ)】の影から飛び出し、手に持った物を投げつける。

 投げつけられた物はチビ【玄武(げんぶ)】の甲羅を易々と貫き、反対側の甲羅から飛び出した。

 俺からの攻撃を受けたチビ【玄武(げんぶ)】は小さく呻きスッとその姿を消した。


 俺が今行ったのは【神槍(グングニール)】と名付けた攻撃だった。


 

 【玄武(げんぶ)】と戦った後に、硬い甲羅や外殻、鎧を纏った敵に対して何か有効な攻撃が出来る様にならないかと色々と試した上で出来上がった攻撃方法だった。

 最初に考えたのが【断罪(ジャッジメント)】による攻撃だった。ただ先程にも言ったように【断罪(ジャッジメント)】がいくら何でも斬れると言っても、リーチの長さが心もとなかった。【玄武(げんぶ)】の様な大きなものや、空を飛んでいたりしたら簡単には有効打を与えることは難しい。

 そこで他に何か良いスキルがないかと探していた時に見付けたのが槍のスキルだった。


 槍のスキルの中には【一点突破(ブレイクスルー)】と言うスキルがあった。恐らく槍のスキルの中では最上位に位置するスキルだと思う。

 このスキルはその名称通り、突いた物がどんなものであろうが貫き通すというスキルだった。万物を突き通せるって感じだろうか。どんなものでもこのスキルを使って突けば必ず貫くことが出来る。

 剣の最上位スキルが【断罪(ジャッジメント)】なら、【一点突破(ブレイクスルー)】は槍の最上位スキルってところだろう。

 【断罪(ジャッジメント)】と同じように槍の先に薄い光の様なものが宿る。【断罪(ジャッジメント)】と違う点は槍が俺の手を離れてもスキルの効果が持続するって点だな。槍には投げ槍って言うのもあるからだろうか。俺の手から離れた槍もある程度の距離まではスキルの効果が付く。確認してみたが大体2~30mぐらいだろうか。ただその間にある物はどんなものでも貫いて飛んでいく。

 【神槍(グングニール)】はこの【一点突破(ブレイクスルー)】と言うスキルを元に作った攻撃方法だ。

 後は投げ槍なので槍も自分で作った。投げて飛んでいった槍を拾いに行ったりするのもなんだか少し恥ずかしい気がするし、戦闘中だと拾いに行けないような気がした。だから【土魔法】で鉱物を作り圧縮して、【錬金術(アルケミー)】なんかのスキルも使って使い捨ての投げ槍を作った。

 ちなみに投げた槍は【一点突破(ブレイクスルー)】のスキルの効果が切れると分解される様にした。かなり強力な槍なんで敵に拾われて使われたりしたら嫌だからそうした。

 それから【鑑定眼(アナライズ・アイ)】や【観察眼《オブザベーション・アイ》】なんかのスキルを組み合わせて相手の弱点と言うか、核を調べることが出来る様にした。名前を【弱点発見(ウィークポイント)】って名付けた。

 どんな生物にも心臓や脳と言った重要な器官がある。【弱点発見(ウィークポイント)】はそう言った場所を正確に判別する。スキルを使うと相手の体がレントゲンの様に透けて見え、重要な器官などの部分が、重要度に応じて赤色に光って見える。一番赤色が濃い部分を狙って攻撃すれば、ほぼ一撃で倒すことが出来る。ただ全身がそれぞれの細胞単位で集合している様な生物だと意味はない。そう言う生物はまれだし、この迷宮のモンスターは今のところすべて核の様な物が存在している。そこさえ狙えば問題なく一撃で倒せる。さっきのモンスターも体の中心にある核の様な物に槍を投げつけた。

 

 まずは【弱点発見(ウィークポイント)】で相手の弱点を見付けて、マーキングする。スキルを付け替えて【一点突破(ブレイクスルー)】を付けた槍をその弱点目掛けて投げる。その時には腕力を強化するようなスキルや、投擲のスキル、槍術のスキル、命中アップのスキル、そして【強打(クリティカル)】と言うスキルも付けてる。

 その一連の攻撃方法を俺は【神槍(グングニール)】として名付けた。


 この攻撃の効果は先程試した通りだ。

 硬い甲羅を持つモンスターであっても一撃で倒すことが出来た。

 まぁただこの【神槍(グングニール)】にもいくつか弱点の様な物がある。

 一つは槍が使い捨てなので、なくなったら使えなくなるってことだ。一応今は時間があったので結構な数を作って【倉庫持ち(アイテムボックス)】に入れてある。一度普通の槍で試してみたけど駄目だった。かなりのスピードで投げるので槍の強度が持たずに途中で折れたり、曲がったりして真っすぐに弱点に当たるかが確実ではなかった。だから一つ一つ作らないといけない羽目になった。なかなか投げ槍なんてものも売ってなかったしな。一回一回回収しないといけないなんて効率が悪いだろう。他の冒険者が使うはずがない。

 後は投げ槍なのでかわされることがあるってことだな。腕力強化はしてるから2~30mの距離でも1秒かからず到達する。ただレベルの高いモンスターだったりするとこれでも避けられそうだし。一点を狙って投げるんで、その一点を逸らされると普通の攻撃と差はないしな。

 だから今回も死角から一気に攻撃した。かわされるとは思ってないけど一応な。



 今回の様なモンスターもいるかもなと思って作っておいたのが役に立ったようだ。

 これなら今のモンスターが道を塞いでいても、同じ様に一撃で倒すことが出来るだろう。

 俺はまた皆に合流しながら、そんなことを思った。



 そこからは前の階層と同じ様だった。

 敵が前にいれば俺が影に潜り必要に応じて【断罪(ジャッジメント)】か【神槍(グングニール)】を使って倒して行く。

 そうしたことで問題なく進んでいけた。色々と敵を倒す方法を考えておいて良かった。そうじゃないと今頃敵に囲まれて大変な思いをしていたかもしれない。俺もまだまだ伸びしろがあるってことだよな。時間があったらもっと色んなスキルを試して、もっと強くなれるのかもしれない。

 もっとゆっくりと迷宮攻略をしても良かったのかもしれないな。何でこんなに焦って攻略をしてるんだろうか。90階層を攻略出来たら、しばらくゆっくりと時間を取って色んな事を試してみてもいいか。時間の制限はないんだろう、多分。今の所魔王とかにも動きがなさそうだし、強くなれるんだったら今のうちに伸ばせるだけ伸ばすのも手だしな。



 そんなことを考えていると俺達は何とか次の階層に進む魔法陣のところまでこれた。

 そして皆で魔法陣に乗って次の階層に進む。

 

 目を開くと代り映えのない景色。

 どこかで人心地つけそうな場所はないものか。そんなことを思いながら【索敵(レーダ―)】を使ってこの階層を確認して驚く。

 なんだこの階層・・・。

 新しいモンスターが追加されたって訳じゃないが、モンスターの数が多すぎる。

 この階層は物量かよ・・・。所狭しとモンスターが配置されていやがる。溶岩の川なんかもあるから、戦闘できる場所も狭いのに。

 このまま進んで行ったらかなりの数のモンスターを倒さないと進んでいけそうもない。今の所実質俺1人が戦っている状態でこの数を相手にすると手数が足りなくなりそうだ。ただ皆にも戦闘に参加してもらっても敵が押し寄せて来て囲まれて窮地に立たされそうな気がする。

 いっそ最上級の魔法を使って一気に殲滅って言うのも考えるが、場所がな。ほとんどのモンスターに炎系の魔法は通用しないし、水や氷の魔法はこの場所で使ってもかなりの制限を受ける。風や土魔法にしたって、風は溶岩などからの熱で空気の対流があるから制御が難しいし。土魔法も溶岩なんかがあるから、使ってこちらに溶岩が流れてくるようなことになっても困るんだよな。進む道が無くなっても困るしな。闇や光にしても全てのモンスターを殲滅するって魔法はないしな。どちらかと言うと尖った仕様の魔法が多いし。

 またここで奥の手、その3を使う事になるのか。



 俺は深呼吸をして集中する。そしてあるスキルを使う。

 すると俺の体から光の粒子が漏れる。その漏れ出た光の粒子は俺の傍(かたわ)らに集まる。

 光の粒子が俺の身長ぐらいまで集まると収縮し、弾ける。

 弾けた光の中から俺と全く同じ姿をしたもう一人の俺が出現した。



「ダイゴ様がもう一人!?」



 それを見たアリアが声を上げる。



「そう、これは俺のスキルで作り上げたもう一人の俺なんだ。」



 俺は皆に説明する。

 俺が使ったスキルは【分身体(ジェミニ)】と言う自分の分身体を作るスキルだ。

 色々な戦闘方法を確認してる時に、このスキルがあることに気付いた。って分身の術が使えるんだったら絶対に使えるようになってみたいだろう。これも浪漫技の1つだな。

 今回皆に見せるのは初めてだ。何となく見せるの恥ずかしかったからなんだけど。

 ただこのスキルで作った分身体の性能はかなりヤバかった。俺は純粋に手数を増やしたり、牽制したり、連携が簡単になるぐらいで考えていたんだけど、実際に使ってみると俺の考えを大幅に超えた性能だった。

 まずこの分身体は自身のHPやMPを半分使用して作り上げる。なのでデメリットとして自分のHPやMPも半分になる。更に他のステータス、STRやINTなんかも全て半分になる。自分のそう言った力なんかを半分譲り渡している様なものだからかもしれないけど。だから俺はステータスが全て半減した状態になる。分身体も俺の最大値の半分のステータスを持ってることになる。ただ俺の場合はステータス値も異常なほど高いので半減したところであんまり問題にならない。一応分身体は2体、3体と作れる。その度にステータスは3分の1、4分の1になっていく。

 そして分身体はその持つHPやMPは回復できない。一度作ってしまえば後でもう一度HPを分け与えたりMPを回復させたりできない。回復魔法も効かないし、自動でMPが回復することもない。だからダメージを受けたりしてHPが減ったり、MPを使い切るようなことになると消えてしまう。そこまでの運用って感じだ。

 だからあまり使う人がいないみたいだ。まぁ普通の人ならHPもMPも大して多くないから、直ぐに消えてしまう。しかも使っている間は自分のステータスが半減している状態なので、そこに攻撃を受けるとかなり危険な状況になる。その点俺はそう言ったデメリットが殆どない。元々高いステータスを持ってるし、分身体のステータスもSランクの冒険者ぐらいはあるだろう。

 何よりデメリットよりもメリットの方が大きい。

 まずは分身体なので攻撃を受けようが、俺にはダメージはない。だから敵に特攻していっても問題ない。相手の攻撃の様子見に使ってもいいし、防御に使っても問題ない。ほぼ無敵の仲間が1人増えた様なもんだ。

 そして一番驚く性能が俺の持っているスキルをそのまま使えるってことだ。

 俺が分身体を作る時に自分にセットしているスキルをそのまま持っている。

 初めて作った時に【鑑定眼(アナライズ・アイ)】で確認して驚いた。流石に【八百万のスキル(アルティメットスキル)】は持ってなかったが、それ以外のスキルは持っていた。だから分身体がスキルの付け替えは出来ない。

 それにしても分身体を作る時に使うスキルを色々と考えて付けておけば、近接攻撃用、魔法攻撃用、支援用、防御用なんかの分身体をその都度作ることが出来る。ただMPを消費するスキル系は使い過ぎるとすぐに分身体が消えてしまうのであまり向かないんだけど。一番は近接系の【断罪(ジャッジメント)】を持たせて特攻させるなんてのがいい。

 今回の分身体は【断罪(ジャッジメント)】を持たせて【闇魔法】も持たせて【影移動(シャドウムーブ)】を使えるようにしている。それ以外に身体強化系のスキルも付けてる。先程俺が行っていたような攻撃が出来るだろう。【影移動(シャドウムーブ)】はそれなりにMPを消費するが、この階層位の戦闘はこなせるだろう。MPがなくなりそうだったらそのまま特攻させればいいし。

 ちなみに分身体が消えた時には俺のHPやMPの上限値が元に戻り、数値は半減した状態のままになる。ただ俺は回復魔法をかければすぐに回復できるし、MPに関してもすぐに回復できる。

 だから俺にとって【分身体(ジェミニ)】はほとんどデメリットがなく、もう一人強力な仲間を作れるスキルなんだ。

 ただなんかもう一人自分がいるって言うのは変な気分だけど。

 皆じろじろと分身体の方を見ている。



「見分けがつきませんわね。」



 アリアが言った。



「分身体だからね、俺と全く同じだよ。」



 俺が答える。ただ肉体的には一緒だが服や装備は魔素を固めて作ってあるので厳密には違う。強度なんかも少し差があるかも知れないな。もっとすごい装備をしていたら差が広がるかも知れない。でもまぁスキルが色々と使えるんだから問題ないか。



「でしたら、その、中身も同じ訳ですわね。」


「中身?肉体ってこと?装備とかは魔素を固めて作ってるからちょっと違うけどね。」


「いえ、その。精神的なお話ですわ。好きなものとか・・・。

 その・・・。」



 アリアはそう言って声を潜め、俺の方に寄ってきて小声で話した。



「2人になれるのでしたら、自分で自分を抱きしめたり出来るのではないのでしょうか。」


「何言ってんだ。俺にそんな趣味はない。」



 俺も小声で否定する。

 アリアが言うのはこの分身体を使って俺が自分で色々と慰めたりしてるんじゃないかと言ってるんだろう。別に自分の事をそんなに好きでもないし、そんなむなしいことはしたくない。分身体は基本的に意志なんてものはない。俺とリンクして考え通りに動いたりしてるだけなんだから。自分で考えるってことはないんだから。そんな相手とやり取りは出来ない。自分ひとりでいるのと変わらない。余計にむなしくなるだろう。



「分身体には意思ないからな。俺は自己愛者でもないし、虚しいことはしない。」


「そうなのですね。てっきり夜な夜な分身体を使って・・・と思っておりましたわ。」


「俺をどんな目で見てるんだよ、全く。ってこんなことしてる場合じゃない。

 とっとと進むぞ。」



 俺は今の現状を思い出し、頭を戦闘モードに切り替えた。

お読み頂きありがとうございます。



1月終わるまでは一週間に一度か二度ぐらいの更新になりそうです。

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