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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
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迷宮攻略21

 シータに魔法具をいくつか渡し作戦の内容も伝える。

 何か少しでもダメージに繋がる攻撃をしないとな。このままだったらジリ貧で負けそうな勢いだ。

 シータは俺から魔法具を受け取ってから気配を消して俺の傍を離れる。

 これからは暫く時間稼ぎが必要だな。

 俺は【倉庫持ち(アイテムボックス)】から別の魔法具を出して使う。

 全て使い捨ての属性魔法が封じてある魔法具だ。それを【玄武(げんぶ)】目掛けて発動しては【倉庫持ち(アイテムボックス)】の中に戻していく。

 さながら魔法を使ってるような感覚だ。スイッチを入れるだけで発動するし、無詠唱で魔法を唱えているのと変わらない。ただ使う魔法は限られている。ほとんどが初級から中級に行かないぐらいだ。

 魔法石に属性の魔法を封じ込められるようになったが上級の魔法はそうそう封じ込めることが出来ない。属性の魔法石にもキャパシティーがあり、大きさに比例して封じ込められる魔法の大きさも変わってくる。上級の魔法を封じ込めようとするとかなりの大きさの魔法石を使わないといけない。そんな大きさの魔法石はそうそう市場に出回ってることが少ないので俺も数個手に入れられたぐらいだ。

 【堅強なる砦(ロックフォートレス)】で一つ使ってしまっているので後上級魔法を封じてあるのは2つしかない。1つは攻撃用、1つは回復用の魔法具だ。

 本当なら【水の女王《クイーン・オブ・アクア》】を封じた魔法具も大きな魔法石を使いたかったが数が足りなかった。だから使用時間が極端に短くなってしまった。

 回復用はこちらも緊急用に作って何かあった時以外には使いたくはない。それを出すまでもなく倒す様にしないとな。



 俺から放たれた様々な魔法は【玄武(げんぶ)】に命中する。

 しかし効果は薄いみたいだ。【大爆発(エクスプロージョン)】が効かなかったんだから今放ってる魔法が効くとは思えない。ただ集中的に顔を狙っているから【玄武(げんぶ)】にとっては鬱陶しい奴だと思われているだろう。

 そして俺はある程度離れた距離で魔法具を使っている。

 魔法なので近くに寄る必要はない。本当ならもう少し近づいた方が威力は上がるだろうが別の狙いもあるからだ。

 俺は【玄武(げんぶ)】の正面に陣取ったまま魔法具を使い続ける。

 そろそろいいんじゃないか、と思っていたらその時が来た。


 

 【玄武(げんぶ)】がまた上を向き息を大きく吸い込み始めた。

 さっきの【衝撃波】をまた放つつもりなんだろう。

 俺はそれを誘って遠間でずっと魔法具を使い続けていたんだ。


 大きく息を吸い込んでる【玄武(げんぶ)】の顔の前に1つの影が現れる。

 気配を消し、機会を伺っていたシータだ。

 シータは手に持った魔法具を【玄武(げんぶ)】の顔目掛けて投げつける。5つの魔法具が息を吸い込んでいた【玄武(げんぶ)】の口の中に消えていった。

 シータも一緒に吸い込まれそうになるが、その身が何かに引かれたように地上に戻ってくる。

 シータの胴には頑丈なロープが巻かれていて、その端は地上にいるブランが持っている。タイミングを見てブランがロープを引っ張ってシータが【玄武(げんぶ)】に吸い込まれない様にしたんだ。


 シータが地上に着いたと思った瞬間にドガンッと大きな音がして【玄武(げんぶ)】の口の中が爆発した。

 シータが【玄武(げんぶ)】の口に放り込んだのは何度も出てきた【大爆発(エクスプロージョン)】を封じた魔法具だ。それを残り全部渡した。5つの【大爆発(エクスプロージョン)】が【玄武(げんぶ)】の口の中と言う狭い空間で発動したんだかなりの威力になるだろう。

 良くアクションものである『外は固くても、中は柔らかいだろう』で体内から攻撃するパターンを試したみた。【玄武(げんぶ)】は口から黒煙を噴き出している。当然【衝撃波】も使うのを阻止できたみたいだが、頭全部を吹っ飛ばすという事は出来なかったみたいだ。

 【玄武(げんぶ)】がゆっくりと上を向いていた顔を下ろしてくる。そして俺の事を真っすぐに見た。その目は怒りに染まっているように見えた。決定打にはならなかったか・・・。

 しかしこれで【玄武(げんぶ)】も【衝撃波】を放つことは出来ないだろう。口の中はかなりのダメージを負ったようだし、また同じように吸い込んだ時に何か口の中に突っ込まれるのを警戒するだろう。

 

 ただ俺達も次の手がない。

 今ので倒したかったんだけどな。やっぱり口から入って腹の中で爆発させるとかぐらいやらないといけなかったか。しかしそれはかなりのリスクが伴うから遠慮した。万が一その爆発でも倒しきれなかった場合は腹の中に置き去りにされる。入ったのが俺だったら【絶対防御(イージス)】とかで生き残れるかもしれないけどその後がないからな。

 今のシータがやってくれた行動も一つ間違えれば危ない橋だったし。爆発に巻き込まれたり、吸い込む力が強すぎてシータが【玄武(げんぶ)】口の中に吸い込まれてしまう可能性もあった。それでも倒せる程のダメージを与えることが出来なかった。という事は更にリスクを上げないと倒せないってことか。

 だったら俺が何とかするしかないか。

 俺はそう思って覚悟を決める。

 多分この案ならほぼ確実に【玄武(げんぶ)】を倒せるだろうが、一歩間違えると俺も命がなくなるだろう。こんなところで亀と心中するなんてまっぴら御免だ。出来る事ならタイプの腕の中で死にたい・・・じゃなくて、こんなとこで死んでたまるか。でもこちらも切り札を切らない限りこの勝負には勝てそうにないしな。

 大勝負といくか。


 俺は深呼吸を一度して【玄武(げんぶ)】と向き合う。

 そして【玄武(げんぶ)】へ向けて走り出す。

 全力で一気に【玄武(げんぶ)】に近付く。【玄武(げんぶ)】は俺がいきなり走ってくるとは思ってなかったのか一瞬動きを止めたが、すぐに足を上げて俺の方へ歩み出した。

 俺はまっすぐ【玄武(げんぶ)】へ突進する。

 俺が何かしてくると思ったのか【玄武(げんぶ)】は体を少しずらして左の前足を大きく振り上げた。流石に噛み付こうとしてまた顔に攻撃を受けるのは得策ではないと思ったんだろう。

 でも俺にはそれは好都合だった。

 俺はまた【倉庫持ち(アイテムボックス)】からある魔法具をあるだけ引っ張り出して【玄武(げんぶ)】の振り上げた足の下へ投げた。そしてその魔法具が発動する。

 【玄武(げんぶ)】の振り上げた足の下に岩の壁がいくつも出来上がる。岩の壁の上にもまた岩の壁が出来て【玄武(げんぶ)】の振り上げた足をも少し持ち上げる程だった。


 俺が投げた魔法具は【岩の壁(ロックウォール)】を封じ込めた魔法具だ。

 簡単な目隠しや防御に使おうと思っていくつか用意しておいたものだ。それを一気に全部使ってやった。そのおかげで岩の壁が折り重なって出来上がり、かなりの重量があるはずの【玄武(げんぶ)】の足が下りない様に支えてくれている。

 足を振り上げた所に踏み砕けない岩の壁を作られたんだ、それ以上足を上げれないから動けやしないだろう。

 しかしそこまでの強度もないからか岩の壁にも亀裂が入ってきた。やっぱり【玄武(げんぶ)】の重量を完全に支えることは出来ない様だ。だが少しの間でも動きを止めれるし、これで腹の下に入り込める。

 俺は身をかがめて【玄武(げんぶ)】の腹の下に入る。上を見ると亀の腹みたいだった。腹の方の甲羅はそこまで厚くないみたいだな。これも想像通りか。しかしそれでも剣や槍なんかで甲羅を砕けそうにない。だけど俺にはとっておきの魔法具がある。それこそ一撃必殺の威力だ。

 俺は【玄武(げんぶ)】の腹の中心ぐらいまで来て【倉庫持ち(アイテムボックス)】からその最終兵器を取り出して腹へ向かって投げつける。それから全力で地面を蹴ってその場から飛ぶ。

 俺が投げた魔法具が【玄武(げんぶ)】の腹に当たった瞬間に魔法具から黒いものが噴き出す。そしてその黒は大きく広がっていく。ドンドンと真っ黒の何かが広がり、その場から飛んで離れた俺の方にも迫ってくる。

 何とか間に合ってくれよ。

 俺の足に迫る黒を見ながらそう願う。

 そう願った瞬間に魔法具からあふれ出した黒は一瞬で消えた。

 消えたのは黒い何かだけではなかった。その黒いものが覆っていた範囲全ての物が一緒に消えていた。

 それは【玄武(げんぶ)】の体や地面、転がっていた岩全てだ。

 おおよそ直径20m位の歪(いびつ)な球体の様に見える範囲の物が全て一瞬で削り取られたように無くなった。

 【玄武(げんぶ)】の腹にも大きく丸い穴が空いている。体の半分近くを持っていかれたんだ、これでもう・・・。

 そう思っていると【玄武(げんぶ)】の体がスッと消えていった。

 良かった、倒せた。

 ホッとして力が抜けた。

 俺は【玄武(げんぶ)】の所から全力で飛んだんで30mぐらい離れた所に転がっている。着地の事も考えずに飛んだからな、と思い起き上がる。身体に少し痛みはあったけどそこまでの怪我はしていない。ギルドに戻ったら魔法で治そう。



「みんな無事か?」



 俺は大きな声で聞きながら【玄武(げんぶ)】がいた所へ向かった。倒したのなら魔法陣が出て来てるだろう。皆もそこに集まるはずだ。



「あぁ、俺達は問題ない。」



 ガイとバロンさんは一緒にいた。



「わしも問題ありません。」



 ブランも無事の様だ。



「凄かったね~。」



 そう言って近づいてきたのはシータだった。



「えぇ、本当にそうですわね。」



 アリアも大丈夫の様だ。一番離れていたからまだ少し遠くにいるけど。



「まぁ何とかなったな。」



 魔法陣に近付きながら俺は皆に声を掛ける。



 最後に使った魔法具は攻撃用として作った魔法具で一番特殊な奴だった。

 封じていた魔法は俺のオリジナルの闇魔法で【黄泉の門(ハデス・ゲート)】と言う。

 色々な魔法を考えていた時に思案して防御不能の空間を削り取る魔法とか作れないものか研究してみた。浪漫だよな、防御してもそれを突破して切り裂いたりするのって。

 【影移動(シャドウムーブ)】で空間を繋げて移動できるってことはわかっていたのでそれの発展形で考えてみた。

 一旦ある範囲を影で覆って、その影の中の空間を別の空間に繋ぐ。そうしたらその影が覆った部分を空間ごと削り取れるんじゃないかってことを。結果的には出来たんだけど、それはまた色んなスキルを使って何とか形にした。そしてかなりのMPを消費する。普通の人間には使えないだろう。【影移動(シャドウムーブ)】の時もそうだけど、範囲を大きくするとそれだけでも比例して消費MPが莫大に増える。そして【影移動(シャドウムーブ)】は元々ある影を使ってるが【黄泉の門(ハデス・ゲート)】は影自体も魔素で作ってるからその分のMP消費も半端ないものになってる。まぁ影って言うか魔素を固めた何かって言うか、結局のところ俺も良くわかっていない。そんなよくわかっていない魔法を作れたのが、俺が色んなスキルを持ってるから途中の過程をすっ飛ばして結論だけを導いたり出来たからなんだけど。

 結局【黄泉の門(ハデス・ゲート)】が出来たのは出来たんだけど色々と問題もあった。特に今回の場合についてはだ。


 【黄泉の門(ハデス・ゲート)】を普通の魔法として使う時は目標を設定してどの程度の大きさの影を作るかを設定する。影を展開してから魔力を込めて空間を繋ぐ。そして繋いだ空間を展開した影と一緒に解除すると影が広がった所にあった物は空間ごと削り取られる。その削り取ったものがどこに行くのかはよくわかってない。

 その目標を設定する時にはある程度の範囲にしか出来ない。一応直径何mかの球体の様にイメージしてるけど、どうもちゃんとした綺麗な球体にはならないみたいだ。かなり歪(いびつ)な形になる。時には球体っていうよりも立方体に近くなったり、一部分が出っ張ったりする。なかなか影を一定の形に保つって言うのが難しいんだよな。影を作るって言うのがメインではなく、その影の中の空間を別の所と繋がないといけないのでそちらの方に力を使ってしまうからだろう。

 目標が大きくなればなるほど形は一定ではなくなってくる。それでも魔法を使う時ならば魔力を込めて形を修正することは出来る。しかし今回は魔法具に封じてしまってるので後から形を修正するとかは出来ない。発動すれば封じ込めた時の範囲指定のままだ。

 今回魔法具に封じ込めた【黄泉の門(ハデス・ゲート)】は直径20m位の球体になる様にしている。魔法具が何かにぶつかった拍子に発動するようにしておいた。20mは俺が全力で飛んだ時に何とか離れられる距離だった。それにそれぐらいの範囲にしていたら大体の敵を消し去ることが出来るだろうと思っていた。ただ球体になる様に設定はしていたが20mの大きさだったらかなり球体から離れた形になるだろうと思っていた。万が一その影が伸びた先に逃げようとしている俺がいた場合は巻き込まれるしかない。

 防御不能の魔法として作ったんで当然俺も当たれば防御なんてできない。もしかしたら【絶対防御(イージス)】で防げたりするのかと思って一度試したが無理だった。極々小さな【黄泉の門(ハデス・ゲート)】を自分の目の前に作って、自分の方へ近づく様にした。それから【絶対防御(イージス)】を使った。すると持っていた盾に穴が開いた。その瞬間に【黄泉の門(ハデス・ゲート)】を解除した。もう少し近かったら腕の一部も削り取られていただろう。死ななかったら治せるかもしれないけど絶対に痛そうだし試そうとは思わなかった。

 もしかしたら【黄泉の門(ハデス・ゲート)】は攻撃としてとらえられていないのか、空間自体を削り取るってことに【絶対防御(イージス)】が対応していないのかわからないが、ともかく【絶対防御(イージス)】を使っても【黄泉の門(ハデス・ゲート)】を防げないことはわかった。

 だから今回使った魔法具は本当は使いたくはなかった。失敗したら俺も一緒にどこかの空間に飛ばされていたか、足や胴体が削り取られていた可能性もある。まぁ死んでなかったら自分には回復魔法はかけれるみたいだから何とかなっていたかと思うんで使ったけど。しかしかなりリスクが高い賭けだった。前回からかなりのリスクを負わないと倒せなくなってきてるのが辛い。

 正直この後の階層のボスも何となくわかった気がするし、今回の【玄武(げんぶ)】と同じ位か、それ以上の力を持っているんだろう。でも魔法が使えないのもここの階層までかも知れないし、とりあえず今はこの階層を攻略できたことを素直に喜ぶことにしよう。

お読み頂きありがとうございます。


今年最後の更新となりました。

もうちょっと切りの良いところまで行きたかったんですが中々難しいもんです。

9月末ぐらいから書き出してまだ2国目のエルバドスか・・・。

来年中に完結するところまで行けるのか・・・いけなさそうな気がします。

多分来月1月も忙しいのであまり更新が出来ないかもしれません。

しかしながら少しずつでも書いていこうと思っております。宜しければ読んでやって下さい。

誰かが読んでくれてると思うと、それだけで書く力になります。


それでは皆様良いお年を。来年もよろしくお願いします。

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