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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
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迷宮攻略18

 さて作った魔法具もいきわたっていつもと雰囲気の変わった俺達だがまだ一歩も進んでない。

 暗さにはこれで対処できるとしても問題は【索敵(レーダ―)】が使えないってことだ。これまでは全ての道、罠の場所、モンスターの位置が分かってたから簡単に進んでいけた。しかしこの階層ではそのスキルも封じられている。普通だったら迷宮をさまよいながら次の階層に進む階段を見付けないといけないだろう。

 しかし俺はそれの対応策もちゃんと考えてあった。

 【倉庫持ち(アイテムボックス)】から少し大きめの箱を取り出す。一辺が30cmぐらいある黒い箱だ。これまで作った魔法具と同様に周りには魔法陣が書いてある。それを一旦床に置く。そして蓋を開くと中から小さい何かがいっぱい飛び出してくる。

 暗い中で見るとそれが何かわからないが、箱から出てきたのは体長5cm位の黒色のネズミだった。それが100匹ぐらい箱から出てくる。アリアがそれを見て思わず声を上げた。もう少し可愛い外観にしたらよかったかもな。

 今開けた箱には俺が作ったオリジナルの魔法が封じ込められていた。

 名前は【探索鼠(サーチングラット)】と言う闇魔法だ。迷宮外で作った魔法であれば封じて持ってこれるのはわかってたし、魔素を固めて動物の様にしているがここにいるモンスターと変わらないだろうと思って作った。



「よし、行ってこい。」



 俺が声を掛けると、ネズミ達は音もなく迷宮の奥へ消えていった。後はしばらく待つだけだな。

 【探索鼠(サーチングラット)】は探索用の魔法として作った。魔素を固めて作った小さなネズミを使役する魔法で、こういった外部への魔素の干渉が防がれていない所であれば一つ一つのネズミが見た光景も俺は見ることが出来る。探索する物についても魔法を使う時にある程度選択することが出来、今回は下の階層に続く階段、もしくは魔法陣を探す様に命令をしている。

 100匹のネズミがこの階層を縦横無尽に走り回って、次の階層へ進む為の道を見付けて来てくれるだろう。動物のネズミの様に走る事も出来るが、影の中を進む事も出来る。そうした場合のスピードはかなり速い。後気配もある程度消せるので、道にモンスターがいたとしても気付かれないか、もしくは逃げ切ることが出来るだろう。こういった暗い迷宮にはもってこいの探索用の魔法だ。

 ものの5分もしない内にネズミ達が帰ってきた。帰ってきたネズミ達は蓋の空いた箱の中に入って行く。そして一匹のネズミだけが残った。残ったネズミが次の階層までの案内をしてくれる。魔法としては全てのネズミが1つの個体としての存在なので意識のやり取りは問題なく出来たみたいだ。ある一匹が道を見付けても他のネズミがそれをわからなくてずっと探し続けるってことにはならなかった様だ。良かった、なかなか優秀だ。



「次の階層までの道も分かったから進もうか。」



 俺は皆に声を掛けてる。床にいたネズミが俺の足を駆けのぼり肩のところまで来る。先行してモンスターにやられでもしたら面倒なことになるしな。いや、他の奴も意識のやり取りしてるから道はわかってるのか。でも気分的なもんだしこのまま進むとするか。

 ここまで来てやっと俺達は71階層からの攻略を始めた。



 暗い道を罠に注意しながら進む。

 目に見える範囲なら【鑑定眼(アナライズ・アイ)】で見て取れるのでどこに罠があるかわかる。迷宮にある罠も結構オーソドックスな罠である一部分を踏むと落とし穴が作動したり、糸みたいなものが張ってあってそれを引っ張ると槍が出たり、矢が放たれたりとかあった。大きな岩が転がってくるとかはなかったな。後大量の水が流れてくるとか。

 通路にはモンスターもいるしそいつらが引っかかったりしないようにかもな。迷宮にいるモンスターはある程度の行動範囲が決まってる様だ。通路のどこからどこまでをウロウロしているとか、ある部屋みたいになってる所にずっといるとか。罠とかを勝手に作動しない様にとか、迷宮に来た相手に対しての措置だろうがな。迷宮の通路歩いていて、いきなり落とし穴が開いたりしない様にだろう。ある程度の知識のあるモンスターだったらそうするだろう。わざわざ戦うより罠を使って相手の戦力を削るだろうな。

 でも元の世界のゲームの様にモンスターを倒したら色々とドロップするようにしておいてくれたらよかったのに。後は道中にも宝箱が出るとか。魔獣を倒さない限りあまり旨味がないんだよな、この迷宮。レベル上げにはいいかもしれないけどもうちょっとユーザーの事を考えて欲しいもんだ。帰ったらキュクロさんに伝えようか。でもそうなると管理とか維持するのが難しいのかもな。宝箱の中身とか入れなおさないといけなくなるもんな。

 ってそう言えばこの迷宮って神の試練の場だったか。試練の場所なのに旨味があるなしって関係ないか。神に認めて貰おうとする人が攻略するものだしな。



 そんなことを考えていたら前の方にモンスターの気配がする。

 俺は【倉庫持ち(アイテムボックス)】から弓と矢を取り出して気配を頼りに弓を射る。

 そしてなくなる気配。そのまま進むと真っ黒な毛をしたブル・ボアのようなモンスターが倒れていてスッと消えた。こういうモンスターも出るんだな。しかし弓で一撃ってそこまで強くないのか。魔法が使えないエリアだからキュクロさんが調整でそこまで強くないモンスターを配置してくれてるのかもしれない。

 だったらこのまま弓で射て倒して行けば余計な戦闘にならないかもな。魔法が使えないから遠距離攻撃は弓とかになると思って、大量の矢を【倉庫持ち(アイテムボックス)】の中に入れてきているし。

 なんて思ったらガイとバロンさんから凄い目をして見られた。

 えっ、何?

 と思っていると2人は無言で剣を振っていた。モンスターと戦いたかったってこと?どこまで戦闘狂(バトルジャンキー)なんだよ。でもこの2人に何か言っても無駄なことはわかってきた。好きなようにやって下さい。と思ってうんうんと2人に頷いて見せた。まぁ何とかなるだろう。回復薬も大量に持ち込んできてるしね。今ぐらいの相手だったら2人も怪我なんてすることないだろう。

 そんなやり取りを終えて俺達はまた迷宮を進みだした。


 途中何度か戦闘をしながら71階層を進んだ。

 あれ以降戦闘はガイとバロンさんに頼んでいる形だ。やっぱり出てくるモンスターはそこまで強いって程の奴はいなかった。ただ基本的に皆体の色が黒色で闇に溶け込んでる感じだった。暗視用の魔法具がなかったら見えないかったかもしれないな。【気配察知(サインシーカー)】はあるけど、気配を消すのが上手いモンスターもいた。ただ目視できるし、そこまで素早くもなかったので簡単に2人が倒していた。闇に乗じて敵を攻撃するって言うモンスターが多い階層なんだろう。

 分かれ道の度に肩に乗っているネズミがどちらに進むかを教えてくれる。おおよそ2時間ほどで72階層に続く階段に辿り着くことが出来た。しかし1階層で2時間かかるんだったら80階層攻略するのには迷宮内で1泊はしないといけないだろう。迷宮に入るんだから中で数日過ごすのは当たり前なのかもしれないけどな。


 それでも進むしかないので俺達は72階層に足を踏み入れた。

 72階層に降りても暗いままだった。そして当然の様に魔法は使えそうにない。80階層までこのままだろうな。俺は【探索鼠(サーチングラット)】の魔法具を出してまたネズミ達を72階層に放った。【探索鼠(サーチングラット)】にはかなりのMPを突っ込んでおいたから80階層まで使い続けても問題ないだろう。

 ネズミ達が戻ってから俺達は72階層の攻略に入った。

 そこからは他の階層と特に変わりなかった。罠に注意して進んで、モンスターが出たら倒す。途中76階層で休憩して飯を食べてからまた迷宮攻略を再開する。モンスターの強さも特に変わることもなく、今までの階層より進むのには時間がかかるがそこまで大変な攻略だとは思わなかった。

 普通だったら真っ暗の中モンスターと戦いながら進んでいくのも大変なんだろうけど【気功術】とかのスキルは使えるし、アリアも自分にだったら支援魔法をかけれるので疲弊せずに進むことが出来る。

 そして俺達は79階層まで進むことが出来た。

 この階層はこの前の69階層と同じ様な作りだった。またこの階層に神殿があった。神殿の作りもほぼ一緒で、中に入って進むと魔法陣と石碑がある所まで一緒だった。石碑に書いてある文言まで同じだった。そうなると。



「次の魔獣も幻獣ってことなんだろうな。」



 俺は思ってることを口にした。

 皆も同意見の様で、頷く。

 そうか、魔法使えない中、幻獣と戦わないといけないのか。しかし相手も魔法を使ってこないんだろうか。それが気になる所だ。一回入ると撤退できないのが痛いな。魔法が使える使えないで戦い方が大きく変わるんだが。でも一番最悪の場合も考えないといけないな。

 こちらは魔法が使えなくて、ボスだけが魔法使えるパターン。

 そうなってくると勝ち目があるのかどうかもわからないな。

 どうあれここから帰りますってことにもならないし、とりあえず一旦この場で休んで明日になってからボスに挑むとしようかな。



「今日は一旦この場で休んで、体力と気力を回復してから明日挑もうと思うけどそれでいい?」


「あぁ、そうだな。」



 俺の提案にガイが答え、他の面子も賛成してくれる。

 取り合えず今日はゆっくり休んで明日万全な状態でボスに挑むとするか。

 そう思い俺は【倉庫持ち(アイテムボックス)】からテーブルや椅子、かまどなんかをポンポン出していく。土魔法で作れないのが分かっていたので色々と【倉庫持ち(アイテムボックス)】の中に入れてきたんだ。

 皆で晩飯を食べてからゆっくりする。この階層にはモンスターは出ないみたいだ。でも一応と思って俺は持ってきた魔法具を使った。いつもの黒い箱の形をした魔法具でスイッチを入れると半径20m位の光の円が出来る。【退魔陣(アンチサークル)】の魔法を封じ込めた魔法具だ。陣の大きさは変更なんかできないが1日ぐらいならずっと使える様になっている。これで見張りはいらず、みんな一緒に休んでも大丈夫だろう。【気配察知(サインシーカー)】もあるしな。流石にこの2つを無視して俺達に近付けるモンスターなんてなかなかいないだろう。

 小さな光の出る魔法具を中心に置いて皆それぞれ寝袋に入って眠る。なんかキャンプに来たみたいだな。最近旅でも土魔法で部屋みたいなのを作ってベット置いたりしてたからな、今みたいな寝方の方がまれだ。

 寝ようと思ったら大きないびきが聞こえてきた。この方向はバロンさんだ。もう寝たのか、早いな。しかも良くこういう所ですぐ寝れるな。ずっと冒険者で迷宮に潜っていたからかな。俺はまだまだ慣れないな、この世界に来て結構経つと思うんだけど。

 慣れてきた部分はあっても、まだまだついて行けていない所はある。命がけの旅をしてるって言うのも慣れたくないし。ホントになんで俺なんかが勇者に選ばれたんだろう。何か基準があったんだろうか。こういう異世界に行く話の主人公っぽくないと思うんだけどな~。そう言えば最初に後2人も勇者がいるんだったらそいつらに任せておいて、俺は別の事しようとか考えていたよな。今一番勇者っぽいことしてるのは俺の様な気がするんだけど。後の2人最初の国からも出てない気がする。他の2人が頑張って魔王倒してくれたらやりたい事出来るのに。

 でも今割とやりたい事って出来てるのか?ガイとブランっていうタイプの人を仲間にしたし、アリアとシータはあれだな。うん。あの2人は目的を果たしたらこのパーティから抜けるかもしれないし。特にアリアは神託が終わったら神殿に戻るんだろうか。シータも父親が見付かったらそっちに行くかもしれないし。だとしたらこのパーティでいるのもいつまでかわからないのか。ハーレムライフとは程遠いけど今はそれなりに充実してるからいいか。

 そんな大したこともないことを考えていたら眠気がやってきたので俺は意識を手放した。

お読み頂きありがとうございます。

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