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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
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迷宮攻略19

 意識が覚醒する。しっかりと睡眠はとれた様だ。

 起き上がって周りを見るとバロンさんとガイはもう起きていて組手の様なものをやっていた。朝っぱらから元気な事で。シータはその光景を近くで見ていた。ブランはみんなの武器の手入れをしてくれてるみたいだ。アリアを見ると自分だけ【浄化(クリーン)】を使ってる、ずるいな。他の人は使えないのに。そう言う魔法具も作ってくればよかったが、そこまで気が回らなかった。でもまぁアリアも女の子だから大目に見た方がいいんだろう。

 はっ!そうか。この魔法が使えないというエリアだったら【浄化(クリーン)】も使えないってことだ。だったら体を綺麗にするとしたらお湯で濡らした布で体を拭くしかない。ってことはこの場所であれば服を脱いで体を拭くってことはなんら違和感のない行動だったんだ。迂闊だった、今までそんなことも気付かなかったなんて。だとしたら。



「おはよう、俺が最後だったみたいだね。」



 俺は起き上がって皆に声を掛ける。

 ガイやバロンさんは手を止めてこちらにやってくる。



「朝から気合入ってるね。」


「これから大物と戦うんだから体を慣らしておかないとな。」



 俺が声を掛けるとガイが答えた。



「そうか、そうだよね。

 そう言えばここって魔法が使えないから【浄化(クリーン)】の魔法も使えないんだ。

 朝から動いて汗かいたでしょ?お湯でも沸かして体でも拭く?」



 俺はあくまで自然な流れで提案をした。孔明の策略ここにあり!



「いや、汗かいたほどではないし、良いんじゃないか?迷宮に入ったらこんな事ざらだと思うぞ。」



 そう答えたのはバロンさんだった。



「そうだな。この先の敵を倒せたらギルドに戻れるんだしその時でもいいだろう。」



 その答えにガイも同調する。

 なんだと!俺の策が通用しないだと・・・。



「あの・・・。ご愁傷様です。」



 そのやり取りを見ていたアリアがそう言った。

 やめて。そんな憐れんだ目で見ないで。

 ってアリアも俺が何を考えていたかわかったのかよ。

 でも俺は諦めない。諦めたらそこで試合終了だろ。


 そんなやり取りをシータとブランが不思議そうな目で見ていた。



 それから俺達は朝飯を軽く取ってから片付けをした。

 そして準備を整えた。

 いつもながらに緊張する瞬間だ。戦闘に入ってからは緊張はどこかに吹き飛んでいる。今回のボスもかなりの強敵な気がするし、もしかすると死ぬようなことがあるかも知れない。今までは魔法で瀕死になっても何とかなるという考えがあったけど、今回の場合はそれがない。魔法での守りもないし本当に心配なんだよな。皆にはそう言う不安とかはないんだろうか。こちらの世界の人は俺よりも死がもっと身近なものなんだろうか。

 いや、そんなことはないよな。皆の表情にも少し緊張の色が見える。



「さてと、じゃあまた幻獣に挑むことになると思うんだけど今回の報酬は何だと思う?」


「この階層の攻略報酬ってことか?」



 俺の言葉にバロンさんが質問する。



「そうそう、賭けでもしない?当たった人は外した人から何かして貰えるとか。」


「なるほどな、それは面白そうだ。」



 そう言ってバロンさんは悩みだす。ガイ達も一緒になって考えている。

 こういう遊び心も必要だろう。ボスに買って報酬は頂くって前提で考える。負ける事なんて今考える必要はないだろう。



「今までの傾向から考えると何かの神の力が宿った武器とかなのかな?」


「その可能性が高いな。」



 俺の意見にガイが答える。でも今まで出てない武器って何だろう。しかも神の力を宿すってことは特別なものだよな。剣や槍はもう出ないか。



「魔法具という事もあるかも知れませんぞ。」



 ブランがそう言った。そうか、そういう可能性もあるのか。装飾品や、防具の類もあるか。



「なかなかこれって1つの物に決めるって難しいな。大まかに決めようか。

 武器、防具と装飾品、それ以外ってことで。

 で当たった人に外した人が飯でも奢るって言うのはどうだ?もちろん自腹で。」



 それがそう言うとシータ以外の人が眉間にしわを寄せた。まぁそうだろうな。



「とりあえず3つ言っていくからどれかに手をあげて。

 まず武器だと思う人~。」



 俺がそう言うと皆シータの事しか見ていない。おいっ。



「じゃあ防具と装飾品だと思う人~。」



 そう聞くと、シータが勢いよく手を上げた。それを見たガイ、ブラン、バロンさん、アリアも手を上げる。って完全にシータと答えを合わせにいったよね?ある意味負けないだろうけど。



「わかった、じゃあ俺はそれ以外を選ぶことにするよ。」



 俺のセリフに皆が少し驚く。ここは一発大穴狙いだ。と言うか武器や防具よりも神の力が宿った魔法具の方が欲しいのが本音なんだよな。武器とか防具とかはまた作れば俺達用の物が出来るだろうし。

 しかし皆堅実すぎるだろう。まぁシータに飯を奢るってことがどれだけの事かなんだろうけど。俺が奢るんだったらいつもと大して変わらない気がするんだけどな。



「よし、じゃあ俺の引きの強さを見せてやる。賭けに勝って皆に美味いものをご馳走してもらおうっと。」



 俺はそう軽口を叩いて、その場を〆た。これで少しは緊張が取れたらいいけど。

 そして俺達は魔法陣の所へ行った。



「じゃあ今回もさっさと倒して帰ろう。」



 そう言って全員で魔法陣に足を踏み入れた。




 目を開いて次に見た景色は岩場だった。広さはかなりあるようだ。目の前に大きな岩と言うか山みたいなものがあり。その周りに大小さまざまな岩が転がっている。周りを見回す。どういう所だここは?足元もごつごつとした石だ。草木も生えてみたいだし。

 と言うかボスはどこにいるんだろう?もしかして気配を消して俺達の事を狙ってるんだろうか?

 そんな事を考えていると足元が揺れる。地震?そう思ったが違った。

 目の前にある山みたいなものから足が生えて、地面に降り立った衝撃みたいだ。

 もしかしてあれがボスなのか?そう思って俺は【鑑定眼(アナライズ・アイ)】で確認する。



名前:玄武(げんぶ)

種族:幻獣

レベル:100


スキル:

【水魔法 LV.10】

【土魔法 LV.10】

【噛み付き LV.10】

【圧し潰し】

【衝撃波 LV.10】

【堅甲】

【投石 LV.10】

【死の沼】

【従者作成】




 おいおい。そう言う事かよ。白虎(びゃっこ)が出た時点で少し考えはしたけど、ホントに四神が幻獣なんだな。ってことは後2体いるよな。それは後で考えるとして。この【玄武(げんぶ)】をどう倒すかだな。

 水魔法と土魔法を持ってるけどそれを使うかどうかが鍵になる。

 だが。


 俺達の目の前で岩山に足が4本生えた。岩山に見えているのは【玄武(げんぶ)】の甲羅ってことなんだろう。そこから足が出て地面に着く度に地面が揺れる。体長は恐らく40~50m位あるんじゃないか。出てきた足も直径が10m位ある。あの大きな体を支える為にはそれぐらい大きい足じゃないと駄目なんだろう。そして頭も甲羅から出てくる。カメのような顔をしてるけどサイズが半端ないな。そう思ってると背の方から太くて長いものが見え、頭の方に来る。尻尾かと思ったら大きな蛇の様だ。

 そう言えば【玄武(げんぶ)】って蛇が亀に巻き付いた感じなんだっけ?目の前の【玄武(げんぶ)】は尻尾が蛇の様になってるみたいだ。蛇にも顔が付いている。どっちが頭なんだろうか。


 亀の顔と蛇の顔、両方が俺達の事を睨んでいる様だ。

 すると蛇の方が動いた。近くにあった2m位ある岩を口で咥えて、体を振りこちらに岩を飛ばしてきた。

 それが戦闘開始の合図になった。

 俺達はそれぞれ飛んできた岩をかわして散開する。


 ガイとバロンさん、そしてシータがそれぞれ【玄武(げんぶ)】に対して迫る。

 ガイとバロンさんがそれぞれ別の足に攻撃を仕掛ける。

 2人共剣に気を纏わせ、全力で【玄武(げんぶ)】の足に斬り付けた。しかし鈍い音がして剣が弾かれる。



「おい、かなり固いぞ。」



 バロンさんが叫ぶ。【念話(テレパス)】はここでは使えないので声でやり取りをするしかないんだ。しかし2人の剣が弾かれるって相当の硬さだ。しかも甲羅の方じゃなくて足だよな。

 シータは頭を直接狙いに行ったがやっぱりナイフでは通じない様だ。シータはいつもは風をナイフに纏わせて切れ味を上げてるが、この階層では使えない。ププ自体も呼び出すことが出来ないみたいだ。シータは【気功術】で武器に気を纏わすことが出来ない。だから風を纏わせていたんだけど、そうなってくると普通のナイフで攻撃している様なものだ。ガイ達でも歯が通らないんだったらシータのナイフでは傷付けるのは不可能だろう。


 【玄武(げんぶ)】が1本の足を上げた。そして地面に打ち下ろす。そこから風とも呼べない目に見えない圧が周囲に撒き散らされる。あれが【衝撃波】か。足を下ろしたところの地面が凹み、その周りの地面にもひび割れたりしている。

 ガイとバロンさんは【衝撃波】が襲ってくる前にその場から離れている。動きはそこまで早くないし、何かしてくるモーションが見えるからかわせたんだろう。

 


 亀の頭の方にいたシータに蛇の頭が襲い掛かる。

 シータは気配を消して、亀の頭を蹴って大きく後退する。蛇の頭もシータを見失ったみたいで、周囲を警戒してるように周りをキョロキョロ見ていた。

 そして周りの俺達がいないのをわかってまた岩を咥え投げつけてくる。その間にも【玄武(げんぶ)】はのっしのっしとゆっくりだが俺達の方へ歩いてきている。

 歩く砲台かよ。



 しかしどうする?攻撃がまともに通用しない。

 でも【玄武(げんぶ)】も土魔法なんかの魔法を使ってこないみたいだ。やっぱりこの場所では魔法が使えないってことなんだろうか。土魔法が使えるんだったらわざわざ蛇の頭で岩を投げつけてくる必要はないだろう。【岩の弾(ロックバレット)】でも使って岩の弾をこちらに放ってくればいいんだから。

 だが魔法が使えなくても、あの体の硬さが問題だ。だからこの階層に配置されたのかもしれないがな。これが【白虎(びゃっこ)】だったりしたら魔法が使えなくて戦闘能力が激減していただろう、でも【玄武(げんぶ)】だったら魔法を使えなくても、その硬い甲羅や皮膚がある。キュクロさんもそれをわかって、ここの階層ボスを【玄武(げんぶ)】したんだろう。


 とりあえず色々な事を試していくしかないか。

 そう思って俺は一旦皆を呼び集めた。

お読み頂きありがとうございます。



この階層の攻略報酬はなんでしょうか?

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