迷宮攻略14
カマクラでの休憩&ご飯タイムも終わって俺達はまた迷宮攻略に乗り出した。
67階層以降もずっと一面白の世界だったが、起伏があったりするようになったり、出てくるモンスターも少しずつ変わっていった。雪の中を泳いでくるサメみたいなモンスターとか出来てきた。近づいたものを襲うんだろうけど俺達には【気配察知】のスキルがあるからどこから来るのかわかるので姿を見せた瞬間に倒して行った。
そうして階層を進んでいき69階層に到着した時に今までとは違った様相だった。
いつもならボスの部屋のある階層に神殿の様なものがあったが、今回は69階層に神殿の様な建物があったんだ。
どういう事だろうと思ってその神殿の中に入ってみた。神殿の作りは西洋の神殿の様な柱や壁の装飾だった。中を進んでいくと広間の様な所に出た。そしてその中心には転送用と思われる魔法陣があった。
魔法陣に近づくとその奥には石碑の様なものが立っていた。大きさは横2m高さ5m程の神殿の壁と同じような材質の長方形をしていた。表面には文字が彫ってあるようだ。
「これより進みしは守護者の地。力無き者進むべからず。」
石碑にはそう刻まれていた。
これって、そういう事だよな。
「この魔法陣に乗ると魔獣が待つ70階層に飛ばされるってことだろうな。
今回は70階層が丸々魔獣との戦闘場所っぽいな。」
俺は思ったことを口にする。
「そういう事だろうな。」
バロンさんが答える。
1階層が丸々ボス部屋か。こんなこともあるかと思ってはいたけど。ボスが余程デカいのか、もしくはそのフィールドで戦う方がボスの力が十二分に発揮されるとかだろうか。
なんにしろ進むしかないんだろうけど。
多分今回は今までの階層から見ても雪とかにまつわるボスなんだろう。
しかし今まで注意書きなんてものはなかったけど。もしかしてこの階層のボスはかなり強いんだろうか。でも今まで勇者以外が誰も攻略してないんだからわからない。緊張するな~。
っと思っているんだがガイとバロンさんを見ると、何かイベント事がある前の少年の様な顔をしてるんだけど。楽しみで仕方ないのか?ブランとアリアは俺と一緒で緊張してるようだ。シータはのほほんとしている。
「どんな奴が待ち受けてるかわからないけど、まだ70階層だ。目指すは100階層なんだから今回も簡単に攻略してやろう。」
俺は皆に声を掛ける。心では簡単に攻略できるなんて思ってもないがこういうのは勢いとノリも必要だろう。皆の顔を見回して俺は大きく頷く。それに答え皆も頷き返してくれる。
そして俺は皆に支援魔法をかけて戦闘の準備をした。
全員が武器を手に持ち、魔法陣に乗る。
いつもの様に一瞬で周りの景色が変わる。先程までは神殿の中だったが、今いるのはこれまで攻略してきた61階層からと同じ雪原だった。しかも雪がかなりの量降っている。
俺達のかなり先に強い気配を感じる。【気配察知】のスキルを使うまでもなく、その存在感自体が他のモンスターや魔獣とは違った。
目の先には大きな白い虎が悠然と俺達の事を見ていた。
体長は7m位はあるだろうか。全身の毛の色は白、それに黒の模様が入っている。前の世界で見たホワイトタイガーとは見た目は同じだが存在感が違う。並みの魔獣が放つそれとは違った威圧感。一目見ただけで強敵だと分かる。そいつが俺達の方をじっと見つめている。値踏みをされている様な感じだな、いや、獲物を狙う獰猛な獣の視線なんだろう。今まで感じたことのない悪寒の様なものが背筋を襲う。とりあえずステータスの確認するか。
名前:白虎
種族:幻獣
レベル:100
スキル:
【水魔法 LV.10】
【風魔法 LV.10】
【噛み付き LV.10】
【爪攻撃 LV.10】
【威嚇 LV.10】
【俊敏 LV.10】
【跳躍 LV.10】
【鑑定眼】でボスのステータスを確認した。
幻獣!?レベル100!?スキルもレベル10ばっかりだと。ヤバいな、本気でヤバい。今までの魔獣なんかと比べ物にならない。しかし、もう逃げる事も出来ない。何とかこいつを倒すだけだ。俺は【念話】を使って皆にステータスを送る。バロンさんもこの1月で使えるようになっている。皆も一様にびっくりしたようだがガイとバロンさんだけその後の反応が違っていた。2人共ニターっと笑ってるんだけど。そっちの顔の方が【白虎】を見た時よりも恐怖を感じるんだけど。
【白虎】も不穏な何かを感じたのか、グオッと短く吠えて周りに何十本と言う氷の矢を作る。そして首を軽く振ると宙に浮いた氷の矢がこちらに全て向かってきた。
この場所だったら水魔法と言うか氷を作る材料はそこら中にあるし、【白虎】にとっては戦いやすい場所だろう。
「「【水の壁】」」
俺とアリアの声が重なる。俺達の目の前にかなりの厚みのある水の壁が出来、飛んできた氷の矢が刺さり水の壁に吸収される。
俺とアリアも水魔法はレベル10あるんだから力としては同じものを持ってる。俺達もこの場にある雪を使えば同じような事が出来るってことだ。しかし奴は風魔法もレベル10あるからな。それは俺とシータで対処するか。
全ての氷の矢を防いだ水の壁を解除する。するとそれを機にガイとバロンさんが一気に雪の上を駆けだした。左右に別れて【白虎】に向かう。【白虎】はまた2人にそれぞれ氷の矢を作り放っていく。しかしガイとバロンさんは剣を振るい跳び来る氷の矢を打ち落としていく。
「斬鬼刃」
ガイが【白虎】に近付き斬撃を放つ。【白虎】はその場から大きく跳躍してガイの斬撃を回避する。しかし回避するだけではなく、宙を蹴りガイに襲い掛かった。シータがこれまでやったような空中に風の壁でも出してそれを足場にしたんだろう。
巨体の【白虎】がガイに向けて空中から突進しようとしていたが、何かに気付いたようでまた宙を蹴り後ろに下がった。バロンさんが空中の【白虎】に向けて気弾を放って、それに気付いた【白虎】が避けたという構図だ。周りの状況もきっちり確認してるようだ。
「【炎の槍】」
2人から距離が離れた【白虎】に向けて俺は炎の槍を何本か作って放つ。水を使うってことはもしかして火や炎が弱点だったりするのかと思って火魔法を使ってみた。俺が作った炎の槍は【白虎】が作った水の壁に当たって消え失せる。進んでいるうちに威力も下がったみたいだった。この場所では火魔法は威力が削られるのか?かなり威力の高い魔法じゃないと大したダメージにはつながりそうにないな。でも威力高い火魔法って周りにもかなりの被害が出るし、みんなを巻き込んでしまいそうなんだよな。
【白虎】がまた吠える。その瞬間に足元に感じる魔力の動き。これはまずい。
そう思って俺は一足飛びでアリアの所に行って体を抱いて大きく跳ぶ。
その瞬間に俺達の足元の雪が氷の槍に変わり、辺り一面を針山の様に変える。俺とアリア以外の皆もちゃんと攻撃をかわしたようだ。ブランはかわすっていうか出てきた氷の槍を斧でぶち砕いていたけど。こっちが邪魔だと思って無作為に攻撃してきたようだな。アリアはまだまだ戦闘経験が少ないからどうしても相手の攻撃の対処が遅れるんだよな。支援職だがらしょうがないんだけど。
「【水の駆け馬】」
俺はアリアに指示して水の馬を呼び出す様に告げる。アリアは既に使えるようになっている。水の馬の背にアリアを乗せる。これで少しは機動力が上がるだろう。
俺達がそんな事をしている間にもガイとバロンさんがまた【白虎】に迫り剣を振るっている。しかし【白虎】はその巨体に似合わない動きで2人の剣をかわし、爪や魔法で反撃する。ガイやブランも【白虎】の爪や魔法を剣でいなしたり防ぐ。一進一退の攻防だ。どちらもまだ有効なダメージを与えていない。
【白虎】がバロンさんに向けて爪を振るう。バロンさんは大剣でその爪を受け止める。その瞬間にバロンさんの背に隠れていたシータが飛び出て、バロンさんが受け止めた【白虎】の腕に向かってナイフを振るう。気配を消し潜んでいたところからの奇襲を受けた【白虎】の前足に大きな傷が出来る。切り落とすまではいかなかった様だ。しかし結構深い傷をつけることが出来た。白い毛が赤く染まる。でもあんな連携いつの間に作っていたんだろう。俺がこもっていた間に色々皆で戦術とかもたててたみたいだしな。
前足に傷を負った【白虎】が辺りに風を撒き散らす。その風圧に押されてガイやバロン、そしてシータも吹っ飛ばされる。3人はしっかりと受け身を取ってダメージは負ってないみたいだ。でもこれである程度ダメージを負わせることが出来た。奴には再生とかの能力はないみたいだからこのまま押し切ったら・・・。と思ったら【白虎】は自分の前足の傷を負った部分を凍らせて血を止めた。なるほど、そういう事も出来るよな。
しかし【白虎】は傷付けられたのに相当御立腹の様で喉を大きく鳴らして威嚇をしている。【白虎】の周りに風が集まる。その風は円を描く様に【白虎】の周りを舞う。次第に風が空に向け塔のようなものを築く。【白虎】を中心とした大きな竜巻が出来た。少し離れた所にいる俺達にもかなりの風を感じる。こんなの近寄れないな。
そう思っているとその竜巻から周りに風の刃や氷の槍が無差別に放たれる。無作為の範囲攻撃か。あのスピードで放ってこられると対処が難しい。俺は【念話】で前にいたガイ達を呼び戻す。そして皆が固まった所でシータとアリアにそれぞれ風と水の障壁を作らせる。その障壁に【白虎】の攻撃がバシバシ当たる。まずいな、あの状態だとこちらからの攻撃も届きそうにない。あの状態でこっちに突っ込んでこられるとどう対処していいかわからない。
でも竜巻ってことは真ん中は無風状態なんだろう。下からか真上から攻撃出来したら何とか出来るか。あれだけの竜巻を作って維持して、更に攻撃までしてきてるんだから【白虎】もその状態を維持するのに意識を大分割いてるに違いない。何とか奇襲をかければ更に有効なダメージを与えられるかもしれない。あの状態で特攻とかされることになる前に何とかするしかないな。
そう思って俺は【倉庫持ち】からあるものを取りだした。
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