迷宮攻略15
俺は【倉庫持ち】から必要な道具を取り出してから皆に作戦を伝える。
これで何とかなってくれればいいが。
俺は初めて使うスキルに付け替えて呼吸を整える。
「いくぞ。1」
俺はそう言って自分の影に潜る。【影移動】だ。移動先はもちろん【白虎】の所。【影移動】は基本的に見えている影にしか移れないが、何とか【千里眼】のスキルのおかげで俺からは【白虎】の姿は見て取れる。そしてその見えている【白虎】の影に転移した。
一瞬で移動してきた俺に【白虎】は気付くが、今は竜巻を維持するのに意識の大半、もしくは力の大半を使っているのかすぐに攻撃はしてこなかった。影から出たからかなり近い位置に出現したのにな。ここは竜巻の中心だ、下手に何かの魔法を使うと竜巻と相互反応して自分も切り刻まれることになる可能性を恐れてのことかもしれないがな。
「2」
俺はそう言って手に持った魔法具を【白虎】に対して投げる。それは3つの石でできた箱のようなものだ。放物線を描いてその箱が【白虎】に迫る。
「3」
俺がそう言葉にすると3つの魔法具が爆発する。爆風が竜巻の中を暴れ狂う。
俺が使ったのは以前に【アンデットカースドラゴン】戦で使った、【大爆発】の魔法を封じ込めた手榴弾の様な魔法具だ。迷宮でももしかして使えるかもしれないと思って【フレアマント】を作っている時に一緒に幾つか作っておいた。今回はそれを3つも使ってやった、大盤振る舞いだ。【アンデットカースドラゴン】に1つ使っただけでも結構なダメージを与えたがそれが今回は3つ分、しかも竜巻の中と言う閉鎖された空間で使ったのでその威力は更に数倍跳ね上がってるだろう。炎が竜巻を昇る。中からの爆発で竜巻が吹っ飛ぶ。そして体の半分が焼けただれた【白虎】もいた場所から吹っ飛ばされ、雪の中に突っ込む。竜巻という空間にいて風での防御が出来ずにまともに喰らったんだろう。
【白虎】はその体を起こし俺の方を忌々しく睨みつける。そんな体になってもまだやる気か?
しかし満身創痍の【白虎】に近付く影が1つ。
【瞬行】で【白虎】の横に現れたガイが右の前足に斬り付ける。
「鬼刃閃」
狙い澄まされた剣の一撃が【白虎】の前足を刈り取る。そしてガイの背の影からシータが現れて左の前足に斬りかかる。
「風神閃」
シータの風を纏ったナイフがもう1つの前足を切り落とす。ってガイの【瞬行】に付随してきたのか?背中に乗って?そんなこと出来るのかよ。しかも必殺技名似たような名前だし、俺の知らない間に皆どうなってるんだ。
前足2本を斬り落とされた【白虎】が前のめりに倒れそうになる。が、顔を上げ目の前に風の球を作り出した。最後の抵抗かよ。
しかし【白虎】の目の前の雪が盛り上がる。なんだと思ったらそこから土の人形が雪の中から現れ、そのまま【白虎】に対して拳を下から振り上げる。アッパーカットを喰らった【白虎】の顔が天井を向く。
そこで【白虎】は見ただろう。自分の上から降ってくる存在に。
「龍牙・断頭刃」
いつの間にか高く跳んでいたバロンさんが、勢いを付け大剣を構えたまま【白虎】の下へ降ってきた。また大剣に龍を模った気を纏ってる。そしてバロンさんの剣があたかもギロチンの様に【白虎】の首を跳ね飛ばした。その首が雪に落ちる前に残った胴体と一緒に塵になり消えていった。
作戦は何とか成功ってことだな。
俺はそう思って目の前に構えていた盾を下ろした。俺も何とか無事だったしな。
俺はとりあえず魔法具を持って【影移動】で特攻をかけることを皆に伝えた。そして実際に特攻した。【影移動】で皆の所に戻ってきたらいいんだが、タイミング的に出来るかどうかわからなかった。その為俺はスキルの【絶対防御】を使ってみたんだ。そのスキルは防御態勢を取っている限り物理攻撃も魔法攻撃も全て防いでくれるってことだから、魔法具の爆発も耐えきられるだろうとは思っていた。ただ実際に試したことなんてなかったからかなり不安だったけど。昔の勇者も選んで取ってたスキルだから信用したけど問題なかったみたいだ。あの爆発の中にいた俺は全くの無傷だ。ただ【絶対防御】を使ってる間俺は動けなくなる。万が一【白虎】が大したダメージを負うことなく、俺に対して攻撃してきたら大変な事になった可能性もある。攻撃は防げるけど俺の周りを氷で覆われたりしたらどうしようもなくなる。だから皆に竜巻が消えたら【白虎】へ攻撃をして貰うように頼んでおいた。
魔法具も有効に使えてよかった。今度も使う時も魔法で障壁作った中に入れて使ったら、威力が上がって切り札的なものになるかも知れないな。
しかし初めて使うスキルは本当にドキドキするな。【絶対防御】もどういう風に防ぐのかわかってなかったし。使ってる間俺の体の周りに光る膜の様なものが出来てたみたいだ。それが攻撃を防ぐんだろう。すぐ目の前まで炎が迫るのを見るのは背筋が凍る思いだった。
後単純に体だけ守ってくれて装備や服は守る対象に含まれてなかったらどうしようかと思った。あんな炎の中にいて服が全部燃えてしまっていたらどうしよう。
そんなのサービスショットにならないだろう。いや、それがガイやブランだったら?よくあるラッキーイベント的なものになるか・・・。炎の中にいたけど体は無事でした。その後重要な部分を隠していた燃え残った服がハラリと落ちる・・・。うん、至福の時だな。【絶対防御】を使い続けてガイ達が憶えたりしないだろうか・・・。防御系のスキルだからブランが憶えそうだけど。そして中途半端なところで憶えるのを止めて【絶対防御(肉体のみ)】とかにならないだろうか・・・。
「ダイゴ様大丈夫ですか?」
いつの間にか近くに来ていたアリアに声を掛けられた。
「えっ?あぁ、平気平気。問題なかったよ。」
「そのようですね。ただ何か深刻そうな表情をされていたもので。もし怪我でもされていたら回復魔法をと思いましたが、必要ないようですわね。」
「うん?あぁ、そうだね。全くの無傷だよ。」
「服も無事なんですね。」
「どういう意味?」
「いえ、【絶対防御】は肉体のみかと思っておりましたもので。」
アリアも同じことを考えている!?なんだと!?アリアと俺は同類ってことか・・・。それとも本当に心を読まれているんじゃ・・・。
「そりゃそうだろう。そんな体しか守ってくれないんだったら防御するたびに装備や服を変えないといけないじゃないか。」
「そう言えばそうですわね、ふふふっ。」
「うんうん、ははははっ。」
「あの・・・中途半端に【絶対防御】を使えるようになるってことはないものでしょうか?」
何!?そこまでも。
「おい、無事だったなら先に進もうぜ。」
そこでバロンさんが声を掛けてきた。俺とアリアは話を中断してみんな所に合流した。
「いや~、しかし幻獣が出るなんて思いもしなかったな。」
バロンさんがそう言った。
「幻獣って何なんですか?」
俺が聞く。
「名前の通り幻の獣だ。俺もうわさでしか聞いたことなかった。世界に何匹かいるらしいがな、誰も姿を見たことがないって話だ。姿を見たものは生きて帰ってこれないからな。全てSランク以上の魔獣になるな。」
「じゃあ俺達はSランクの魔獣を倒せたってことですか?」
「そうだな。俺も正直驚いているがな。もうSランクの冒険者の上をいってるだろう。」
「そう言えばSランクの冒険者って世界にあまりいなかったんじゃないでしたっけ?でもバロンさん達はSランクの冒険者でパーティ組んで迷宮攻略をしたんですよね?」
「そうだな、今はってとこだな。俺達の代のSランクの奴らはもうどこかのギルドマスターとかになっているからな。その後の代の奴らは大した奴がいないんだ。だから今実際に活動しているSランクの冒険者は数えるくらいしかいないな。最近の奴は自分を鍛えぬこうって奴いないからな。」
「そうなんですね。でも師弟契約とか広めていったらもっとSランクの冒険者が出てくるかもしれませんね。」
「それもどうしたもんかと思うけどな。安易にスキルレベルだけ上げても実際の戦闘になって十全の力を使えるかってのはいささか疑問だけどな。」
「名前だけのSランクの冒険者が出来るってことですか?」
「あぁ。ただSランクになるには細かい審査があるからそこで落とされるかもな。色々な魔獣倒したり、色々な実績が必要になるし。」
「だったら俺達もう色々な魔獣とか倒したりしてるから、申請したらSランクになれるかもしれないってことですか?」
「そうだな、迷宮もこの階層まで攻略したし。なれるんじゃないか?ただSランクになると色々と大変だぞ。特にお前なんてな。」
「どういうことですか?」
「勇者としてじゃなくて冒険者として活動したいんだろう?ただSランクの冒険者ともなると色々なイベントに呼ばれたり、名前も売れるからな。勇者であることが直ぐにバレるんじゃないか?俺もいつの間にかギルドマスターなんかに祭り上げられてるし。」
「そういえばそうですね。じゃあ別にいいか。」
「そうそう、それよりもとっとと先に進もうぜ。この階層のお宝は何なんだろうな。」
バロンさんはウキウキしながら歩き出した。俺もそれに続く。
今回は【白虎】を倒したところに魔法陣が出来ていた。これで移動しろってことだよな。そう思い、皆で魔法陣に乗った。すると見慣れた十字の部屋の所へ出た。
そして俺達はいつもの様に宝箱のある方へ進んだ。
そこにあった宝箱は今回も少し大きめだった。ドキドキしながら開けるとそこには弓が入っていた。また微妙な・・・。キースがいたら渡していたのに。【鑑定眼】で確認してみると「狩猟の神の力が宿った弓。狙った獲物は外さない」とあった。マジで!?急にまともな武器が手に入ったんだけど。まぁ幻獣を倒したんだからな。これくらいの装備ぐらい貰ってもいいんだろうけど。狙った獲物は外さないってことは放った矢が自動追尾したりするんだろうか。
「確認してみたらかなり高性能な弓みたいだ。狙った獲物を外さず射抜くみたい。」
「何!?」
バロンさんが驚く。
「急にまともなものが入っていたな。」
ガイがそう言う。俺と同意見だな。
「うん、でも今弓使う人いないし。今度キースに会う時にお土産で渡そうか。」
「そうだな。それがいいかもしれないな。」
「そうですのう。」
ガイとブランがそう答える。そう言えばアリアとシータはキースの事知らないんだもんな。ただ弓の行方はアリアとシータも特に興味はないみたいだ。俺は【倉庫持ち】に弓をしまった。
「お前らそれでいいのか?」
バロンさんが言った。
「えっ?まぁ。確実に当たるって言っても弓術のスキルが10で命中率上げるスキルとか持っていたら普通に外さないですからね。そこまで使えるものでもないかと。」
「そうか、そう言えばそうなるか。」
普通に高レベルとかのスキル持っていたらある程度の事は出来るようになるしな。しかし普通の人は高レベルのスキルをいくつも持ってる訳でもない。バロンさんも最近色んなスキルを憶えレベルが上がっていってるから感覚的に慣れてないんだろう。俺達の反応の方が異常なんだろうけどね。
「さてと、とりあえずまた次の階層を確認だけして戻ろうか。」
俺は皆に声を掛けて下の階層に向かう階段の方へ歩いた。今回はまた階段で降りていくようだ。だったら普通のダンジョンっぽいところなんだろうか。そんなことを思っていたが71階層に降りた瞬間に今までで一番攻略が困難な階層であることを実感した。
お読み頂きありがとうございます。




