迷宮攻略13
俺が作り上げた魔法具は【フレアマント】と言う名前にした。
名前の通りマントの形をしている。背中に付けてマントの様にしてもいいし、体に巻き付ける様にして簡易の上着の様にも出来る。どっちにしても効果は変わらないんだけど見た目重視ってことだな。ガイとかブランみたいに鎧を付けている者はマントとした方が見た目がいいし、鎧を着ていないアリアやシータは前を留めて着た方がしっくりくる。そう言うのはこだわりたいんだよな。見た目も大事だろう。
しかしこれを作るのは大変だった。
まずマントの内側には色々な魔法陣が書き込まれている。その中には3個の魔法石が縫い付けてあった。1つは熱の魔法を込めた火の魔石だ。その魔石によって熱を出す様にしている。もう1つが風の魔石を付けてある。体の周りに薄い風の膜を張ってその中で発生した熱を閉じ込める様にしている。最後の1つは属性を付与していない魔石だ。発生した熱が高くなりすぎたり、風の膜の調整なんかをする為に付けてある。マント自体に魔石を砕いて粉にして染料と混ぜたもの使って魔法陣と模様を描いている。その模様に熱が全体的に流れる様にしてあったりする為だ。これでマント全体が熱を放つようにしている。特に外向きの感じにだな。その熱を風の膜が上手く体の周りに止まる様にしてくれているんだ。
これさえ着ていればどんな寒いところでも一定の温度の中にいる様だ。なおかつ火の魔石を水の魔石に変えて氷冷の魔法を封じると今度は【アイスマント】として涼しさを得るマントにも出来るという優れもの。これがあったら砂漠の階層とかでも平気だったんだろうけど。あそこはとっとと攻略してしまったしな。
俺は【フレアマント】の性能を試す為に1人で61階層に行ってみた。そこでじっとしていたがずっと動かなくても寒さは全く感じなかった。この魔法具は成功したようだ。
ただ後は積もった雪の中をどう進むかなんだよな。そりとか作るか、スキーとかっていう手もあるけどモンスターが着たら戦いにくいだろうし。道中は姿を隠せばモンスターに見つからずに進めるかもしれないがボスはそうもいかないだろう。どんなボスかわからないし、戦う場所も前の階みたいな神殿のような場所ではなく雪の上かもしれない。やっぱり何とかして雪の中を普通に戦えるようなことを考えないといけないかな。そしてまた俺の実験が始まった。
その間皆は暇なので揃って迷宮に潜ってレベル上げをしていたみたいだ。
適当な階層に行って迷宮内のモンスターを倒しまくってるみたいだ。皆だったら心配ないだろう、バロンさんも一緒になってレベル上げしてるみたいだし。バロンさんも順調に【成長速度アップ】【成長値アップ】【スキル習得度アップ】なんかは憶えたみたいだし、レベルが上がるのも早くなってるんだろう。道と罠だけ知ってたら60階層位までなら1人でも行けるんじゃないか?そんなことを思った。いいな~、皆楽しそうで。俺1人だけ宿に缶詰だよ。ブランは手伝いましょうかと言ってくれたけど一緒にレベルを上げて貰ってた方がいいだろう。俺は勇者の称号があるから他の皆よりレベル上がりやすいから問題ないんだよな。
早く何とかしようと思って1週間。やっと雪の中を進む魔法具を完成させた。それは雪の上を歩ける靴だった。
靴に魔石を砕いた染料を使って魔法陣を描き、水の魔石とただの魔石2つを組み込んだ。見かけは普通の靴に青と黒の石が飾りとして付いたようなものだが、これを履いていると雪の上を歩けるんだ、と言うか雪だけじゃなくて水の上も歩けたりする。今回取り付けた水の魔石には水を固めるっと言う魔法を込めている。水の魔法では水で矢を作ったりする、その水と言う流動物をある形に固定化するという部分だけを抽出したんだ。だから水で出来たものにその靴で乗ると、その下の水が固定化して歩けるようになるってものだ。氷の上の様に滑ったりすることはない様にしている。この靴であれば【フレアマント】の影響で俺達の周りの雪が少し解けてしまってもその上を歩いて行ける。もちろんこの魔法具も出来てから迷宮に行って試してみた。だが雪の上を普通に歩く感触がとても奇妙だった。雪は柔らかいものと刷り込まれているからだろうが慣れれば大丈夫だろう。名前は・・・・【水駆】でいいか。
とりあえず完成形を1つ作ってしまえば後は同じものを皆に合うように作っていけばいいんだから、俺のスキルを使えば楽に作れる。それでも全部作るのに1月かかってしまった。この調子だとさらに下の階層で準備するのはもっと時間かかるかもしれないな。
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「おおっ、これは凄いな。」
バロンさんがそう言って雪の上を飛び跳ねた。
俺達は今迷宮の61階層に来ている。
61階層以降が何とかなりそうだったんでバロンさんを誘って皆できてみた。
そして【水駆】を履いたバロンさんが目の前でその具合を試していた。
全員に【フレアマント】と【水駆】を渡している。皆も周りでそれぞれ試している様だ。シータも楽しそうに雪の上を飛び跳ねている。
「これで61階層からも進めそうですね。どうする?支援魔法で姿を隠して70階層を目指そうか。」
「いや、この装備でどう戦うか慣れていた方がいいだろう。戦闘しながら進もうぜ。」
「そうだな、どれぐらい踏ん張りが効くかなんかも確認しておかないとな。」
戦闘狂の2人がそう言った。でもまぁ正論か。ボスもどんな奴かはわかってないしな。俺達は61階層をこのまま進むことを決めた。
61階層はほぼ雪原だった。少し歩いただけで自分がどこにいるかわからなくなる。俺には関係ないけどね。一応次の階層に進む魔法陣目指して進んでいる。
途中でモンスターの気配がこちらに近づいてくるのが分かった。モンスターの姿が見えるとその姿は真っ白なオオカミの様なモンスターだった。しかも数十体の群れらしい。それが俺達の周りを囲んでいた。ステータスを見たが何か特殊なスキルを持ってる訳ではなかった。
この階層ではなかったら普通の冒険者でも対処するのは難しくないだろうが、雪に足を取られてこの数と戦うのは大変だろう。今の階層で初めての戦闘にはちょうどいい相手だろう。
俺達はそれぞれ分かれてモンスターと対峙する。ガイとバロンさんは嬉々としてモンスターに特攻して行って剣を振るい数を減らしていく。ブランとアリアはその場に留まり向かってきた相手を正確にとらえ倒して行った。シータはそこら辺を走り回りながらモンスターにナイフを振るっていた。
俺は周りにあった雪を使って氷の矢に変えて放つ。今回は先を尖らせた氷柱の形で放っている。氷柱はモンスターに吸い込まれる様に当たっていく。
ものの数分で全てのモンスターは俺達の前から消え失せた。
「そこまで違和感もなく動ける。」
俺のところに戻ってきたガイがそう言った。だったらいいけどね。他のメンバーも普通に戦えるようだ。後は吹雪いたりしてきたら視界が遮られるかなってとこかな。その時は風でドームでも作るか。
俺達は次の階層目指して進みだす。
その後も熊の様なモンスターだったりが襲ってきたが、特に問題なく倒して次の階層への魔法陣へ辿り着いた。1時間かからないくらいか。今日も一日かけて70階層まで進むことになりそうだ。
62階層に来るとこの階層には木が生えていた。寒冷地で生える様な針葉樹みたいな木が周りを囲んでいる。階層によって少し景色が変わるみたいだな。俺達は気にせず次の階層に向けて進行する。
この階層に出るモンスターも61階層もあまり変わっていなかった。白いブル・ボアみたいなモンスターが出たけどもう今更だな。雪に足を取られていたら突進をかわすのも大変そうだろうが。
それからも順調に階層を進んで攻略していった。66階層位でシータがお腹が減ったという事で飯休憩をすることにした。
折角雪があるのでカマクラを作ってみた。【退魔陣】を使い、それから雪を魔力で操ってカマクラを作った。中は地面の雪を失くして土魔法を使って椅子やテーブルを作った。そしてかまどなんかも作って【倉庫持ち】から中身の入った鍋を出して温める。
「色々と普通とは違うと思っていたがここまでとはな。」
その光景を見てバロンさんがそう言った。
「こんな場所で休んだりできるんだったら70階層までは簡単に攻略できるだろうな。俺達が頑張って進んで、涙を飲んであきらめたのってなんだったのかと思う。」
バロンさんがしみじみ言った。そうだろう、他の階層と変わらない感じで休憩してるしな。ある意味カマクラとかなかなか入ることないからシータとか楽しそうにしてるし。
食事の用意が出来たので俺達はテーブルを囲んで飯にした。こういう寒いところで暖かいものを食べると余計の美味しく感じるのはなぜだろう。俺は今は【フレアマント】を一旦外して寒さを少し味わいながら暖かいシチューを食べている。こういうのもいいな~、と思いながら今の季節を考える。この世界に来てから結構な月日が流れた。まだ一年は経ってないけど色々あったな。こちらの世界では季節感を感じるイベントをやってないから今がどんな季節かわからないんだよな。今いる国も季節感ってあんまりないし。クリスマスとか正月とかってこの世界でもあるんだろうか?
「迷宮とは全く関係ない話なんだけど、この世界では新しい年を迎える時にお祝いみたいな感じで何かしたりする?」
俺の言葉に皆が耳を傾けて聞いている。
「何か、でしょうか。具体的にはどういう事でしょう?」
アリアが質問してくる。
「そうだな~、俺のいた世界では新しい年を迎える前にお寺で鐘を108回突いたりして煩悩を払ったりするんだけど。お寺っていうのはこの世界で言うと教会みたいなところかな。」
「鐘を突くだけで煩悩って払えるものなのでしょうか?」
「どうかな?言い伝えって部分が大きいと思うけどね。後は年が変わったら大人が子供にお年玉をあげたりするんだよ。」
「お年玉ですか?」
「そうポチ袋っていう袋にお金を入れて子供の渡すんだ。俺もそれは楽しみにしてたかな。」
「そうなんですね。こちらではあまり聞いたことのない風習ですわね。」
「そうなんだ、じゃあクリスマスみたいなのもないのかな?神が生まれた日をお祝いするんだけど。」
「まぁ、ダイゴ様の世界では神が生まれた日が分かるのですか?」
アリアが驚いたように俺に言った。
「えぇ~っと、まぁそうかな。神様とされる人が生まれた日なんだけどね。神レスティアが生まれた日をお祝いするのとかってないの?」
「いえ、神は私達よりが存在するよりも、もっと前からいらっしゃいますし。いつどの様にしてお生まれになったかなんて存じ上げませんわ。」
「それはそうかもしれないけどね。一年の特定の日に何かを行うってことはあんまりないの?」
「どうでしょう?恐らく国や街で行ったりしている所はあるでしょうけど。この世界全てで同じことを行っているってことはないでしょうね。」
「そうか、そう考えると俺達の世界は、世界中で同じ日に同じ様にお祝いするって珍しいことなんだろうか。」
「それは素晴らしいですね。皆が同じ思いを胸に抱いているということなのでしょう。」
「でも町や村単位でそれぞれ何かしてるってことは奇祭みたいなものがあるのかな?」
「奇祭ですか?」
「うん、珍しい祭りの事。他の所ではそんなことをしない祭りの事。
例えば屈強な男達が下着一枚だったり裸で寒いなか海に入ったり、行列を組んで神がいるという神殿まで行くとか。」
「素敵なお祭りですわね。」
「うん、とってもね。」
「どこが素敵なのか全くわからないだが。」
バロンさんにそう言われてはっとした。しまった・・・。そうだよね、俺とアリア以外はこの素敵さがわからないだよね。バロンさんもガイもブランもふんどし姿似合いそうなんだけどな、残念だ。どこかでそう言う祭りとかやってないんだろうか。そしてそれに参加しないといけない試練とか。何の神様の試練になるんだろうか。
そんなことを考えていたらバロンさんとガイが同じ様な顔をして俺の事を見ていた。
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