迷宮攻略9
51階層に降り立つと今までにも通ったスタンダードな感じの作りをした通路だった。岩の壁と天井、ただ幅や高さがまた前の様に5m位に戻っていた。少し前の階層を見てきたからか狭く感じる。ここからの階層はあまり大きな敵は出てこないのかもしれないな。しかしゴースト系が出るってことは狭いと避けて通れないってことか。なんだかいやらしい造りをしてるんだな。
「バロンさん達はどうやってゴーストを倒していったんですか?やっぱり魔法ですか?」
俺が気になったのでバロンさんに質問する。普通の武器が通用しないんだったらどうやって倒して先に進んだんだろう。
「いや、魔法使いには魔法を温存してもらっていた。武器の中にも魔素を帯びたものがあるんだ。魔石を使ったり魔法陣を刻んだりとか。どちらかと言うと魔法具に近い様な武器だな。かなり値は張るがそいうのがないと攻略は出来ないからな。」
なるほど。そう言う事か。
「後確認なんですけどバロンさんてその大剣で戦うんですよね?前衛タイプの冒険者ですか?」
「あぁ、そうだ。この大剣は盾の役割もしてるんだ。」
「その剣は魔素を帯びたりしてるんですか?」
「いや、残念だがこれは普通の剣だ。だから俺はゴーストタイプの奴の相手は出来ないだろう。」
「えっと、また後で試したいことがあるんで声を掛けさせてもらいますね。」
「ん?あぁ、分かった。」
俺はそう言って一旦会話を終わらせた。そして【索敵】と【探索】を使ってこの階層の中を確認した。広さはそこまでじゃないけど結構モンスターの数が多いな。冒険者は1人もいないみたいだ。戦闘しながら進んでも大丈夫そうだな。
「じゃあ、進みますか。」
「はぁっ?地図を広げたり周りも確認せずに進む気か?」
バロンさんが驚いて声を上げる。
「前に行ったように俺のスキルでこの階層については確認したんで問題ないです。どこに次に進む階段があるか、どこに罠があるか。そしてどこにモンスターがいるかと言うのも全部わかってます。」
「本当にか?」
「えぇ、【気配察知】や【地図作成】なんかのスキルを同時に使う事でそう言うのが分かるんです。」
「凄まじいな。だから一日をかけず10階層なんて攻略出来る訳だ。」
「そうですね。とりあえず前進しましょう。」
俺達はそう言って進みだした。今回は俺じゃなくガイに先頭を歩いて貰っている。道なんかはちゃんと【念話】で俺の確認したこの階層の地図を送ってるので迷う事もない。
通路を歩いていると前からモンスターの気配がする。ガイが剣を構える。俺達の前に現れたのはブル・ボアの様なモンスターだった。しかも3体一緒にいた。
全体的な見た目はブル・ボアの様だがどうも違うみたいだ。体の所々が傷つき肉が見えたりしている。しかしそれを気にする様子もない。傷からは紫色の体液の様な物が流れ出ている。瞳も濁っていてどこを見ているかわからない。これってもしかしてアンデットって奴か。そう思って【鑑定眼】を使って確認する。
名前:アンデット・ボア
種族:アンデット族
レベル:53
スキル:
【突進 LV.6】
【再生 LV.3】
【魔素吸収 LV.1】
【毒体液】
思った通りアンデット系のモンスターらしい。ゴーストも出るっていうし51階層からはアンデットとかゴーストのモンスターが出る階層なのかもしれないな。
「アリア、全員に異常状態無効のの支援魔法を。
ガイ、そいつの体液は毒みたいだから気を付けろよ。」
俺が声を出して指示を出す。アリアが支援魔法を詠唱する。
「問題ない。」
ガイはそう言ってガイは剣に気を纏わせて横に一閃する。剣からは気が斬撃として放たれる。地面と水平方向に放たれた剣撃がスッと【アンデット・ボア】達の体をすり抜けた。そう思ったら【アンデット・ボア】達が倒れる。地面に倒れる前にその姿が3つとも消える。一撃だったね。
剣撃を飛ばすのは遠くに行くほど威力が弱まるはずなんだけど、全部倒したな。それなりに距離があったと思うんだけど、剣撃を飛ばすのに慣れて来て威力が増したんだろうか。必殺技とかも使っていくと成長したりするんだろうか。それとも気もアンデットに効果があるとかで威力が上がったとか。
そんなことを考えてバロンさんを見ると大分驚いているみたいだ。
「どういう事だ?今何をした?」
バロンさんがガイに詰め寄る。
「剣に気を纏わせてから振るのと同時に相手に向かって剣撃として飛ばしたんだ。」
「なんだと?どういうことだ?もっと詳しく教えろ。」
ガイから説明を受けたバロンさんが食いついた。何となくこういうことになるんじゃないかとは思ってたんだけどね。バロンさんも強くなることに貪欲そうだし。
バロンさんに聞かれてガイも色々と教えている。まぁ2人が楽しそうならいいんだけどね。バロンさんが強くなるんだったらこちらとしても問題ない。一緒に迷宮に入るんだからフォローをしなくて済むようになるだろう。そんなことを思っていたらバロンさんが俺の方を向いて凄い顔をして近づいてきた。
「なんでしょうか?」
俺の目の前まで来たバロンさんは興奮している様で鼻息が荒い。
なにこれ?俺迫られてるの?駄目ですよ、こんなところで。他の人の目もありますし。
「お前に頼んだら俺もさっきみたいな戦い方が出来るんだろう?」
そっちかよ。オチは読めてたけどね。ガイと話してどうしたら自分も同じようなことが出来るようになるか聞いたんだろう。そして俺に頼んだら師弟契約とか出来ると言ったんだろう。
「えぇ、まぁ。【気功術】っていうスキルを憶えたら使えるようになる可能性はありますね。ただ人によって得手不得手がありますから絶対ってことではないですよ。例えば俺もさっきみたいに剣撃を飛ばしたりってできないんで。」
「そうなのか。それでもいいどうやったらそのスキルを憶えれるんだ?」
「ギルドで説明した通り師弟契約をして一緒に覚える方法ですかね。」
「わかった。じゃあすぐにそれをしてくれ。」
「いや、流石にこんな場所で悠長に師弟契約してる訳にはいかないでしょう。」
バロンさんあまり周りが見えてないほど興奮してるみたいだ。
「それはそうか。
じゃあどこか落ち着ける部屋に行くか。」
そうですね、そこにベットとかお風呂とかあったらいいですね。そして・・・。
「よし、先に進むぞ。」
俺が頭でボケきる前にバロンさんが皆に声を掛けて先に進んでいく。おぅ。なんか切ない。
でも仕方ない先に進もうか。
気を取り直して俺達は通路を進む。少し行ったところに部屋みたいになってる所があるみたいだ。そこに一旦行こうという事になった。
その部屋には事前にわかってたんだけどモンスターがいた。【索敵】で分かってたしな。部屋の中を覗くと本当に幽霊みたいなモンスター2体ふわふわと浮いていた。あれがゴーストって奴か。一応【鑑定眼】で確認する。
名前:サイレントゴースト
種族:ゴースト族
レベル:47
スキル:
【HP吸収 LV.4】
【MP吸収 LV.4】
【魔素吸収 LV.2】
【壁抜け】
【自己再生 LV.3】
【憑依】
【物理攻撃無効】
【異常状態無効】
聞いてた通りのモンスターみたいんだな。基本的にはHPとMPを吸収する攻撃がメインか。遠距離攻撃はなさそうだけど。【憑依】とかもあるのかよ。
「ガイ、一回気で攻撃が通じるか試してみて。」
俺は【念話】でガイに言う。
「わかった。」
ガイも【念話】で返事をしてきた。そして先程と同じ様に気を溜めて剣撃に乗せて放った。ガイの剣撃が1体のゴーストに吸い込まれる。するとそのゴーストは剣撃を受けた所から半分に別れて凄い表情をして消えていった。気を纏った攻撃なら有効みたいだな。
「【光の矢】」
俺は2本の光の矢を作り、残ったゴーストに放った。矢がゴーストを射抜くとゴーストは光の粒子になって消えた。光魔法はゴーストにもよく効くみたいな。
「気を纏った攻撃ならゴーストにも効くみたいだな。だったらガイは問題なく戦えるか。ブランも気を武器に纏えるもんな。シータは風を纏えば多分行ける気がする。俺とアリアは魔法で攻撃出来るから問題ないよな。」
俺は皆にそう言った。この階層でも俺達は問題ないみたいだな。
「俺もそれ仲間入りさせてもらおうか。」
バロンさんがそう言って俺の肩を抱いてきた。えっ、えっ、なにこれ。久しぶりにドキッとする奴やん。いやいや、ガイとかブランが俺のこと見てるし乙女な顔は出来ない。
「そうですね、準備するのでちょっと待ってもらえますか。」
俺は平静を装って支援魔法を使う。【退魔陣】でこの部屋いっぱいを覆う光の円を作って設置する。これでモンスターは部屋の中にはないって来ないだろう。
「【気功術】ならガイが師匠になった方がいいんじゃないか?一緒に戦って行けばそれだけ早くスキルレベル上がるだろうし。」
「そうだな、それが一番いいかもしれないな。」
俺の提案にガイも賛同する。バロンさんに異論もない様なのでガイがバロンさんの気功術と体術の師匠になるような契約を作って2人に師弟契約をする。
「終わりました。どうやって憶えるかとかはガイに聞いて下さい。」
「おう、分かった。」
上機嫌なバロンさんがさっそくガイに色々とレクチャーを受けていた。
しかしどうしようか。このままバロンさんを鍛えながら進むとなると結構な時間がかかるかも知れないな。1日かかって次の60階層まで行けるかだよな。一旦この階層でバロンさんに強くなって貰ってから進むかだよな。そんなことを思っていると後ろでドーンって大きな音がした。振り返ってみると壁に大きな凹みが出来ていた。その前には大剣を持ったバロンさんがいた。もしかして?
「おぉ、これが気を放つってことか。」
バロンさんが楽しそうに言った。もう剣撃に気を乗せることが出来るようになったのか?早過ぎないか?でもSランクの冒険者だもんな。元々の地力は俺達とは比べ物にならないくらいあったんだろう。俺達みたいな鍛え方じゃなくて一つ一つ自分で地道に鍛えてきたんだもんな。
「よーし、さっさと進もうぜ。モンスター相手にどうなるか試してみたいからな。」
バロンさんがいい笑顔をして剣を肩に担いでそう言った。
あぁ、もうこのまま進むしかないか。
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