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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
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迷宮攻略8

 ギルドマスターであるバロンさんが俺達について来てもギルドとして問題ないかもしれないが、俺達の方に問題がある。会ったばかりのバロンさんの事を俺は信用できないから勇者であることを言いたくない。一緒にいたらどう考えても俺達が力を持ちすぎてるのが分かるだろう。

 でももう勇者であることがバレても問題ないんだろうか。いつもながらそこら辺の線引きに迷うんだよな。



「え~っと、俺達の迷宮の攻略方法って特殊なので一緒に行くのはご遠慮してもらいたいんですが。」



 一応言ってみる。



「特殊だと?ますます気になるじゃないか。そう言えばかなり短時間で攻略もしてるらしいな。その特殊な攻略の仕方ってのが関係あるんだろう?」



 バロンさんはニヤリとして聞いてきた。あぁ、これは駄目なパターンだ。何を言っても人の言う事なんて耳を貸さないタイプだ。少し話しただけでも分かった。



「そうです。道中モンスターに出会わず、罠も全てわかった状態で進んでるんです。

 俺達のパーティだから出来る事であって他の人にあまり知られたくないです。」



 暗にパーティメンバー以外一緒に行きたくないって言ってるんだけどな。



「安心しろ。俺は口が堅い。それにギルドマスターだから他の奴に話すことはない。今回迷宮だけの臨時メンバーだと思ってもらえばいい。今回迷宮内で知り得たことは墓場まで持っていくことを約束しよう。」



 バロンさんは真剣な表情で言った。どうしてもついてくる気だな。説得は無理そうか。



「秘密にしてくれるのはわかりましたが、今後魔獣を倒した後に出た報酬はどうしたらいいんでしょうか?わける訳にもいかないと思うんですが。」


「あぁ、お前たちで好きにしたらいい。俺は迷宮の深いところを行ければいいんだからな。」


「そうですか、皆いいかな?」



 バロンさんの言葉を聞いて俺は皆に確認した。今回は事前に聞いておこう。

 すると全員が無言で頷いてくれた。



「わかりました。では迷宮攻略まで一緒に行動しましょう。」



 俺はそう言ってバロンさんに右手を差し出した。



「おう、よろしくな。」



 バロンさんが俺の差し出した手に握手をしながらそう言った。

 なんか想像してたのとと違った感じになってきた。俺達は本当に100階層まで踏破出来るんだろうか。



 とりあえずバロンさんに今日は俺達は宿に帰って休んで明日の朝に出直してくることを伝えた。

 バロンさんもその時から一緒に迷宮に入ると言っていた。62階層までは行ったことあるみたいだし内容はその時に聞いたらいいか。そうして俺達はギルドを後にした。




「なんか考えてたことと違う。」



 俺が帰り道でそう言った。



「バロン様の事ですか?」



 アリアが聞いてくる。



「そう、いくらS級って言ってもステータス見たけど俺達ほどではなかったんだよな。だから心配なんだよ。」


「途中で死にそうになったら放っておけばいいんじゃないか?」



 ガイが恐ろしいことを言う。



「いや、流石にそれはまずいだろう。俺達と一緒に迷宮に入ったギルドマスターだけが戻ってこなかったなんてことになったら色々疑われるだろう。しかもみんなと違って【念話(テレパス)】が出来ないから道中の案内や連携なんて声出してやらないといけなくなるんだぞ。」


「それもそうだな。早目に始末しておくか?」



 ガイがもっと恐ろしいことを言う。



「だからそれはまずいって。何とかフォローして進むしかないだろうな。いっそのこと【天狗の隠れ蓑(ヒドゥンマント)】をかけて部屋の隅で大人しくしておいてくださいって言った方がいいんだろうか。」


「あの方にそんな事言っても通じないとは思いますが。」



 俺の言葉にアリアが答えた。うん、俺もそうだと思う。



「そうだね、そう思う。今日中にどうするか考えておかないといけないかな。」


「どうとでも主(あるじ)の良い様にされれば大丈夫でしょう。」



 ブランがそう言ってくれる。そうだね、考えていてもどうなるかわからないのが迷宮だしね。今度はどんな階層に行くことになるのかわからないしこれからは地道に攻略していった方がいいのかもしれないな。そんな話をしながら俺達は宿に戻った。



-----------------------



 次の日に冒険者ギルドに行ってみるとバロンさんが準備万端で待っていた。

 身の丈もありそうな大剣を背中に背負っている。体にも左半身を重点的に固めた鎧を付けている。金属的な鎧ではなく皮か何かの様だ。なかなか様になってるな、歴戦の戦士って感じが出てる。ガイやブランとは違った色気を感じるな。まぁ俺のタイプの範疇ではあるしな。いやいや、そんな事じゃなくて。でも最近ずっと迷宮に入ってるからかあんまりガイやブランと仲良く出来てないな。迷宮攻略したら俺にもご褒美が欲しいな。どこかに温泉とか湧いてないかな。



「よう、こっちは準備万端だぜ。」



 少し妄想にふけっていたらバロンさんから挨拶された。



「お待たせしました。」



 気を取り直して俺も挨拶する。しかしバロンさんの後ろが大変なことになってるんだけど。ギルドの職員さん皆総出で見に来てるみたいな人数がこちらを見ている。そりゃまぁギルドマスターが迷宮に行くってことになるとこうなるよね。



「お前らのギルドカードを渡してくれ。俺もパーティ登録させてもらう。」



 バロンさんに思い出した。俺達はカードを集めてバロンさんに渡す。バロンさんも俺達のカードを受付の人に自分のカードと一緒に渡していた。ちらっと見たSランクのカードって割と豪華だった。ランクによってカードって変わるんだろうか。



「よし、いつでもいけるぞ。」



 バロンさんはそう言って俺達にカードを返してくれた。



「わかりました。じゃあさっそく行きましょうか。」



 そう言って俺達は転送魔法陣のある部屋に進んだ。その頃には冒険者ギルドにいた冒険者達も集まって俺達のことを見ていた。そりゃギルドマスターのバロンさんが一緒にいるんだもんな。注目するよな。ビシビシ飛んでくる視線を交わして俺達はとっとと50階層まで降りることにした。


 転送魔法陣で50階層まで降りて来て目の前に落ちているメダルを拾ってしまう。

 さてと。



「バロンさん色々と聞きたいことがあるんですがいいですか?」



 俺はバロンさんの方に向きなおして聞く。



「うん?なんだ?」


「バロンさんはこの迷宮を誰が作ったかご存知ですよね?」


「お前なんでそんな事を聞くんだ?お前は知ってるってことか?」


「えぇ、俺達はこの迷宮を作ったキュクロさんに会ってここにきました。」


「なんだと!?どういうことだ?」


「それは俺が勇者だからです。」



 俺はもう最初に伝えておこうと思ってそう言った。聞きたいこともあるしな。



「勇者だと!?だから50階層まで簡単に攻略できたのか?」



 バロンさんが驚く。でも驚くのはそっちなのか。



「いや、勇者だから簡単に攻略できたかどうかはまた別の話になると思うんですが。

 ただ俺は勇者なんで色んなスキルを使えるんです。それでこの迷宮も普通よりだいぶ早く攻略していけているんです。

 それでさっきの質問なんですけどクレタのギルドはキュクロさんの存在は知ってるんですよね?」


「あぁ、俺もギルドマスターになってから教えられた。各階層の攻略の報酬を持ち込んでくるからな。」



 そうなんだ、ギルドマスターになってからだったんだ。



「今回俺達と一緒に迷宮に入ることにしたのはキュクロさんに何か言われたとかではないんですよね?」



 俺は質問する。昨日の夜考え付いたんだけど、もしかしたらバロンさんはお目付け役か何かで俺達についてくるようになってるのかと思った。キュクロさんに頼まれて俺達の様子を確認したり、勇者が迷宮に入ったら一緒について行くようなガイド役でもしてるだとか。でも違うようだな。まぁそれだったら最初から一緒に行こうとするか。いきなり来た冒険者にギルドマスターが同行するのがおかしいから途中から参加するのかとも思ったりもした。



「はぁ?別にそんな事言われてないぞ。」


「じゃあバロンさんは本当に迷宮の深部に行きたいだけなんですか?」


「あぁ、俺は冒険者になってからずっとこの迷宮に潜ってるからな。ずっと戦闘を繰り返してたからスキルレベルも他の奴より上がったし、一番深い階層にも行けた。それを認められてSランクの冒険者になって、その上ここのギルドマスターになったんだからな。」


「そうだったんですね。疑ってすいませんでした。」


「いや、いい。それにしても勇者だったとはな。他の奴とは違う感じがしたが、まさかな。」


「俺はあんまり勇者ってことを人に言いたくないんです。一冒険者としてこの世界を巡ってみたいんで勇者って肩書があると自由に出来ないかなって思ってるんです。」


「なるほどな。同じ冒険者としてわからなくはないな。まぁ俺はここにずっといるから世界を巡ったことはほとんどないんだけどな。」


「すいませんが俺の事も1人の冒険者として接して頂けるとありがたいです。」


「あぁ、迷宮内でのことは秘密にするって約束したしな。約束は守る。」



 バロンさんも話が分かる人だった。最初に言っておいた方がこちらの言う事を聞いてくれそうだしな。変に隠し事すると信用してもらえないかもしれないし、いざっと言う時にどうなるかわからないしな。



「それはそれとして、早く次の階層に行かないか。」



 バロンさんがうずうずした様子で言った。あれ?単純に迷宮に潜る以外どうでもいいって感じなんだろうか。これまたたまにいるよな、自分の好きなこと以外は興味がないって人。



「えっと、次の階層ってどんなところか教えて貰ってもいいですか?」



 俺が聞く。



「お前らそういう情報を調べずに迷宮に潜ってるのか?呆れたな。それでよく50階層まで攻略出来たな。」


「えぇ、俺達割と行き当たりばったりで進んでるんです。大変そうなら引き返してから作戦を練ろうか思ってるんです。」


「そうなのか。しかし51階層からも今までの階層とは大差ないな。迷路のような通路とモンスターが大量に出るだけだ。ただこの次の階層からのモンスターが厄介なんだ。ゴーストタイプのモンスターも出るんだ。」


「ゴースト?」


「それも知らないのか?全く。

 ゴーストは実体のないモンスターなんだ。迷宮以外にはほとんど姿を見ることはない。たまに発見されることもあるが大したことはなくすぐに討伐される。しかしこの迷宮のゴーストタイプのモンスターは厄介なんだ。武器での攻撃は効かない。魔法や、魔素を介した攻撃でなければ効果がないんだ。その割にあいつらは俺達のHPやMPを吸収しやがる。そこでHPやMPを失くした状態で他のモンスターに出会ったら死ぬ以外の道はないな。」



 へぇ、この世界でも幽霊って言うかそう言う存在はいるのか。魔法があったりとかだしいてもおかしくないよな。普通の冒険者にとっては面倒この上ない相手だな。魔法使いだってそんなバンバン魔法打てないだろうし。俺達には関係ないけど。魔素を介したらいいんだったらガイ達の剣に魔法を纏わせたりしたら問題ないんだろうか。気を纏わせるだけでもなんとかなりそうだけどな。でもそういうモンスターならもしかしたら【天狗の隠れ蓑(ヒドゥンマント)】が効果ないかもしれない。試してみないと分からないけど。今回は通路の敵を殲滅しながら進む方がいいんだろうか。



「俺達はいつも俺の支援魔法で姿を隠しながら進んでるんです。それだと敵も気付かないんで戦闘にならないんです。後罠と道は俺のスキルで分かるので問題ないんですが今回もそれで進みますか?」



 バロンさんには【念話(テレパス)】出来ないけど見える俺が手を引いたりしていけば大丈夫かなって思った。



「いや、とりあえず戦闘をしながら普通に進もう。俺の実力もわかっててもらいたいし、お前たちの実力も知っておきたいしな。」



 バロンさんがそう言った。それもそうなんだけどな。



「そうだな、俺も折角だからそろそろ戦って進みたいな。そろそろ歯ごたえがある相手が出る階層だろう。」



 ガイが同意する。



「ほう、なかなか言うじゃないか。しかしお前とは気が合いそうだ。」


「そうだな、俺達が露払いをしてやったらいいだろう。」



 ガイとバロンさんが仲良く話してる。あぁ、2人共戦闘狂(バトルジャンキー)なのか、それで気があるんだね。良かったねガイ、仲間が出来て。俺達は後ろからフォローしていくか。



「じゃあ、進むとしましょうか。」



 俺の言葉で俺達は下の階層に降りる階段に向かった。

お読み頂きありがとうございます。

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