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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
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迷宮攻略10

 バロンさんがすっかりイケイケな調子になったので俺は部屋に掛けた【退魔陣(アンチサークル)】

を解除してから通路に出た。そして次の階層に向けて進む。

 当然の様にとモンスターに出くわした。



「おりゃー!」



 と思ったらバロンさんが叫んで大剣をブン回す。そこから剣撃が放たれてモンスターにぶち当たる。バロンさんの剣撃はガイとは違って大きな球の様形の気を固めて飛ばしてるみたいで、当たったモンスターが壁まですっ飛んでってドカンと音を立てて壁に凹みを付けた。壁にめり込んだモンスターはそのままスッと姿を消した。なんか凄まじいな。

 それを見ていたガイも負けじと剣撃をいくつも放ちモンスターを切り刻んでいく。その姿を見てバロンさんが笑いまた剣を振るう。

 ホントに2人とも楽しそうだな~。そんなことを思いながら俺達は後をついて行った。2人がモンスターが出るたびに粉砕していくので楽に進んでいけるんだけどなんだかな~。俺達の前には鬼の様な2人が笑いながらモンスターを駆逐してるんだけど。迷宮の攻略ってこういうことだっけ?

 1時間弱かかって俺達は次の下位に進む階段の前まで来た。う~ん、このままのペースで言ったら60階層に辿り着くまでに10時間ぐらいかかってしまうってことか。朝から迷宮に入ったから今日中にはクリアできるだろうけどあんまり長い時間迷宮の中に居たいとは思わないんだけどな。かなり贅沢な事を言ってるのはわかってるんだけどね。他の人は数日とかかけて10階層ずつ攻略してるんだろうけど。



「このペースで攻略したら60階層まで行くと1日かかっちゃうかもしれないけどどうする?」



 俺は一応確認の為聞いてみる。



「そりゃこのまま進む方がいいだろう。折角興が乗って来てるんだからな。」

「そうだそうだ。折角面白くなってきたんだから進むべきだろう。」



 珍しくガイが俺に任せるとは言わなかった。バロンさんも一緒だからだろうか。しかし面白いって。

 ブラン達を見ると仕方がないって顔していた。特にアリアなんだけど。シータとブランは問題ないみたいだな。俺のスキルと魔法があったらこの迷宮内でも安全に休んだりできるだろうしな。まぁいいか。



「じゃあ、進みましょうか。」



 俺は仕方なくそう言って項垂(うなだ)れた。



 52階層に降りても迷宮の中は変わりなかった。だからさっきの階層に比べて少しスピードを上げて通路を進んだ。出てくるモンスターは鬼人とかしたガイとバロンさんが見つけた瞬間に倒していってる。なんかいつもの攻略とさほど変わらなくなってきたな。そのおかげか40分程で次の階層に行く階段に辿り着けた。このままペースが上がればいい感じなんだけどな。そう思っていたがバロンさんを見ると肩で息をしていた。慣れない【気功術】を使ってるからな。バロンさんも【気功術】をスキルとして憶えてるけどまだまだ低レベルなんだ。気を飛ばすなんて普通スキルのレベルが高くないと出来ない。それを無理やり力技でやってる感じだから疲れてるんだろう。スキルのレベルが上がれば気の制御のやり方が上手くなって消耗するのも減るだろう。



「大丈夫ですか?」



 俺は心配になってバロンさんに聞いた。



「あぁ、しかしこれはなかなかに疲れる。だが魔素を帯びた武器でもないのにこの階層のモンスターを倒せるのは良いな。昔この階層に来た時にはモンスターを吹っ飛ばすなんてできなかったからな。」


「でしょうね。普通あんなこと出来ないと思います。俺も魔法じゃなかったらモンスターを吹っ飛ばすとか出来ないんで。」


「そんなことはないだろう。気で強化した足とかで吹っ飛ばすとかも出来るだろう。」



 ガイがそう言ってきた。まぁそう事をしたらそうなんだけどね。俺は遠距離で気を放って相手を攻撃するってのが苦手だからそう言ったんだけどね。



「それにしてもガイの方はぴんぴんしてるな。同じ様な戦い方をしてるのに。」



 バロンさんが少し気に食わない様に言った。



「ガイは【気功術】はレベル10ですからね。バロンさんもレベルが上がればもっと気の使い方が上手くなって消耗も少なくなってきますよ。」



 俺はさっき思った事をバロンさんに伝えた。ただ後はステータス値の差があるんだけどね。【気功術】はMPじゃなくてHPを消費して使う感じのスキルだ。ガイ達はステータス値の補正があって大分HPなんかは多い。バロンさんはレベルが高くてもそう言ったスキルを使ってこなかったからどうしてもガイ達に比べてHPの上限も低いんだ。だから気を放ったりしてるとドンドン減っていってしまってる。一度気を放つのに1と言う数字だとしてもガイは100あってもバロンさんは50しかないとかだからな。ガイと同じ様に戦っていたらすぐにHPがなくなるに決まってる。しかもまだ気の使い方に慣れてないんだから余計だろう。



「【治療の光(リカバリー)】」



 俺は回復魔法をバロンさんに掛ける。これで減ったHP分は回復するだろう。



「すまんな。しかし回復魔法で回復するんだな。」


「そうですね。【気功術】はMPじゃなくHPを消費して使うスキルの様ですから。ガイの場合はHPがかなりあるんでそんなに影響が出てないんです。」


「何?そうなのか。しかしだったら俺とガイのレベル差はそんなにないはずだ。HPだってあまり変わらないはずだろう?」


「そうですね・・・。まぁガイは普通の人とは違うんで・・・。」



 ヤバいな、俺まずいことを言っちゃったかもしれない。



「ほ~っ、お前師弟契約以外に何か隠してるだろう?」



 バロンさんが俺に詰め寄ってくる。かなりの迫力に俺は後ずさる。



「え~っと隠し事ですか?何のことでしょう。」


「師弟契約はスキルのレベルを上げれるだろうけどそれだけだろ?ステータス値を上げる方法が別にあるんじゃないか?」



 鋭いな。バロンさんはそう言って俺にさらに詰めよってくる。でもそれはもう1つの契約の事だからな。あんまり言いたくないんだよな。



「いや~、気のせいじゃないですか?たまたまだと思いますよ。」



 俺は下がりながらバロンさんから目線を外してそう言った。



「ん~、聞こえんな。」



 そう言ってバロンさんは俺を追い詰める。

 迷宮の壁に俺の背中が付いた。もう逃げ場がなくなった。バロンさんの笑ってる顔がなんか怖いんだけど。

 そして逃げ場を失くして壁に張り付いている俺の顔の横にドンと手を付いて言う。



「なんだって?」



 壁ドン!?マジで!?人生初なんだけど。俺より少し身長のあるバロンさんが俺の顔を上から見下ろしてくる。顔と顔の距離が10cmぐらいしかないんだけど。

 こんなの初めて!こんなにグイグイ来られるなんて、ヤバい攻略されてしまう。そんな、まだガイとブランの攻略パートも全然進んでないのに、まさかつい先日出会ったキャラに攻略されるなんて。



「なぁ、いいだろ?教えてくれてもよぉ。」



 バロンさんの顔がさらに近づく。この人分かってやってるんだろうか?威圧してるつもりなんだろうけど俺には別の事に見えるんだけど。駄目だこのままだったら押し切られそうだ。俺はそんなに軽くないだからな。でも目の前には渋いオジ様のバロンさんの顔がある。俺に頼む様な、それでいて上から目線な感じがヤバい。

 そう思いつつガイやブランがどう思ってるんだろうと思ってチラリとそちらに目をやる。

 するとわなわなと震えながら鼻血を垂らして俺達の事を見るアリアが見えた。

 駄目だ、それを見て一気に冷めた。でも一応お礼を言っておくよアリア、おかげで冷静になれた。迫られてるって言っても別の意味だもんね。



「わかりました。お教えするんで離れて貰ってもいいですか?」



 俺は手をバロンさんの胸において少し押して言った。



「いいぜ。」



 バロンさんはニヤリとして俺から離れた。

 危なかった。もう少しでエンディング迎えそうだった。こんなところで終わってちゃハーレムなんてまだまだだもんな。もう少しで目標を忘れるところだった。えっ?目標はハーレムを作るですけど、何か?

 チラリとアリアを見るとすごく残念そうな顔をしていた。ってお前ある程度好きになってる同士じゃないと駄目だとか言ってなかったか?絶対このシチュエーションを見てぶっ飛んだんだろう。俺も色々とぶっ飛びそうだから何とも言えないんだけどな。



「じゃあ進みながら説明しますね。」



 俺はそう言って52階層に降りていった。

 52階層はガイとシータ、そしてブランが前に立ってモンスターを倒していってくれた。俺とバロンさんはその後に続きながら奴隷契約の話をした。



「という事で奴隷契約をすると師弟契約では教えることが出来ないようなスキルでも憶えることが出来るんです。」


「なるほどな。そんなことがあるのか、盲点だったな。」



 俺の説明を聞いたバロンさんがそう言った。



「それで俺も奴隷契約をして貰えるんだろうな?」



 バロンさんは笑顔でそう言った。

 言うと思ったよ。なんか強さに貪欲な人ってわかりやすいよな。リスクとか考えないだろうか。



「いや、だから奴隷になるんですよ?そんなの嫌だってことになりませんか?」


「お前のパーティ全員奴隷契約をしてるんだろう?」


「まぁ・・・、そうなんですけど。」


「問題ないだろう。お前たちのパーティを見て問題がある様には見えないし。契約の解除も簡単に出来るんだろう?」


「そうですね、俺が契約解除すれば簡単に出来ますよ。」


「だったらこの迷宮にいる時だけでもいい。俺がこのパーティにいるのは迷宮攻略までだからな。それまではパーティの仲間なんだから契約するのも当然だろ?」


「そうなんですけどね。色々と問題になりませんか?」


「お前もおかしなことはしないだろう?俺はクレタのギルドマスターなんだから。俺におかしなことをしたらお前が一番最初に疑われるんだぜ。単なる冒険者としてやっていきたいんだろ?だったらおかしなことはされないと思ってるぜ。」


「そうですね。」



 うん、何言っても無駄なんだろうな。これ以上話しても時間の無駄だろう。



「わかりました。じゃあまたどこかの部屋で契約をしますね。」


「おうっ、よろしくな。」



 俺はそうバロンさんに言うと楽しそうな返事が返ってきた。


 俺達はさっき師弟契約をしたように1つの部屋の様になっている所に入って同じ様に契約の儀式をした。



「終わりましたよ。」



 俺はバロンさんにそう言った。



「さっきのとあまり変わりがないんだな。」



 バロンさんが答えた。



「そうですね。契約するだけですしね。ただ師弟契約と違って自然に憶えるスキルは少し時間がかかりますので、そのつもりで。」


「あぁ、大丈夫だ。どうせこの迷宮を攻略するには時間がかかるだろうしな。62階層以降は誰も通ってないし。情報がないんだよ。いくら道とかが分かってもどうなってるかわからないから慎重に行くしかないだろう。」


「そうですね。そこからが本当にどうなるかですね。」



 俺とバロンさんはそんなことを話しながら皆のいるところに戻った。

お読み頂きありがとうございます。



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