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AI霊媒師ロボットⅡ ―完全除霊体AR-01―  作者: 久遠寺大安|不可思議ラボ


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4/12

第4話 午前3時の製鉄所

「次の患者さん

どうぞ」

廃病院の奥から

かすれた声が響いた。

神崎直人は

二階の窓を見上げた。

白い服の人物は

まだ手を振っている。

「AR-01

あれは人間か?」

「解析中」

青い光が

窓を照らした。

「霊的反応を確認。

ただし

生命反応も検出しています」

「両方あるのか?」

「はい。

通常では

考えられない状態です」

神崎は

入口の鎖を見た。

「中へ入るぞ」

AR-01が

右腕を伸ばした。

青白い光が

錆びた鎖を包む。

鎖は

音もなく外れた。

扉が開く。

冷たい空気が

外へ流れ出した。

病院の廊下は

真っ暗だった。

床には

古い診察券が

何枚も散らばっている。

壁には

剥がれかけた案内板。

『十三号病室 二階』

神崎は

階段へ向かった。

そのとき

廊下の奥で

車椅子が動いた。

ギィ。

ギィ。

誰も乗っていない。

それなのに

車輪が回っている。

「AR-01

反応は?」

「微弱な霊的反応です。

危険度は低いと判断」

神崎は

車椅子を通り過ぎた。

二階へ上がる。

廊下の突き当たりに

一枚の扉があった。

『十三号病室』

扉の下から

白い光が漏れている。

神崎が

ドアノブに触れた。

その瞬間

中から声がした。

「遅かったですね」

神崎は

手を止めた。

「誰だ?」

「患者です」

男の声だった。

「ずっと

待っていました」

AR-01が

扉を解析する。

「室内に

生命反応三つ。

霊的反応一つ」

「患者は?」

「確認できません」

神崎は

深く息を吸った。

「開けるぞ」

扉が

ゆっくり開いた。

室内には

三人の男がいた。

全員

白い病衣を着ている。

一人は

ベッドに座っていた。

一人は

窓際に立っていた。

もう一人は

床に座り込んでいた。

「あなたたちは

行方不明になった霊媒師か?」

三人が

同時に顔を上げた。

「はい」

声まで

完全に一致していた。

神崎は

違和感を覚えた。

「名前を教えてくれ」

三人は

同時に答えた。

「十三番です」

「番号じゃない。

本当の名前だ」

三人は

黙り込んだ。

そのとき

AR-01が警告した。

「神崎。

三名の生命反応に

異常があります」

「何だ?」

「三人とも

同一の心拍を示しています」

神崎は

三人を見た。

胸が上下するタイミングまで

同じだった。

「どういうことだ?」

「生命活動が

一つの意識に

制御されています」

ベッドに座る男が

ゆっくり笑った。

「先生」

「先生?」

「治療を

始めてください」

その瞬間

三人の身体が

同時に震えた。

白い病衣の下から

黒い影が

伸び始める。

AR-01が

右腕を構えた。

「霊的支配を確認。

分離処理を開始します」

青い光が

三人を包んだ。

男たちが

悲鳴を上げる。

「やめろ!」

「痛い!」

「助けて!」

神崎が叫んだ。

「AR-01

止めろ!」

光が止まった。

「どうしましたか?」

「この人たちは

生きているんだろ?」

「はい」

「なら

傷つけずに助けろ」

AR-01は

一瞬沈黙した。

「処理方法を変更します」

胸部の装置が

青く輝いた。

「生命活動を保護。

霊的結合のみ解除します」

光が

細い糸のように

三人の身体へ伸びる。

黒い影が

少しずつ剥がれた。

三人が

床に倒れた。

「分離完了。

生命反応正常」

神崎は

駆け寄った。

「大丈夫か!」

一人が

かすかに目を開けた。

「逃げて……」

「何?」

「患者は……

まだ……」

その瞬間

部屋の奥で

呼び出しベルが鳴った。

チリン。

チリン。

チリン。

神崎が振り返る。

そこには

誰もいないはずの

四つ目のベッドがあった。

白いシーツが

人の形に膨らんでいる。

「AR-01

あれは何だ?」

「霊的反応を確認」

「本体か?」

「はい」

シーツが

ゆっくり持ち上がった。

中から

痩せた老人が現れた。

顔は

異常なほど青白い。

目は

真っ黒だった。

老人は

神崎を見つめた。

「先生」

「俺は医者じゃない」

「治してください」

老人が

右腕を伸ばした。

その腕には

古い患者番号の札が

巻きついていた。

『十三』

神崎は

札を見た。

「お前が

十三号病室の患者か」

老人は

静かにうなずいた。

「まだ

死んでいません」

AR-01が

解析を開始した。

「対象の霊的構造を確認」

青い光が

老人を包む。

しかし

数値が

激しく乱れた。

「異常」

「どうした?」

「対象は

通常の霊ではありません」

「何だと?」

「死亡後も

生命活動を維持しようとする

霊的結合体です」

神崎は

老人を見つめた。

「つまり

死んだことを

認めていないのか」

「その可能性があります」

老人が

ベッドから降りた。

「先生」

一歩。

また一歩。

「治してください」

神崎は

後ずさった。

「AR-01

完全除霊できるか?」

「可能です」

「なら頼む」

AR-01が

右腕を上げた。

青白い光が

老人を包み込む。

「結合点を特定」

老人の身体が

激しく震えた。

「まだ……

生きている……」

「完全除霊を実行」

光が

部屋全体を満たした。

老人の身体が

光の粒へと変わる。

「先生……」

最後の声が

静かに消えた。

「除霊完了。

残留反応ゼロ」

部屋の照明が

一斉に消えた。

神崎は

床に倒れた三人を見た。

全員

呼吸している。

「助かったな」

AR-01が答えた。

「三名とも

生命活動は正常です」

神崎は

四つ目のベッドを見た。

そこには

古い診察記録が

残されていた。

患者番号。

十三。

氏名。

不明。

死亡年月日。

記載なし。

しかし

その下に

新しい文字が

浮かび上がっていた。

『治療完了』

神崎は

小さく息を吐いた。

「これで

本当に終わりだな」

「はい。

残留反応ゼロです」

三人の霊媒師は

無事に救出された。

白峰療養病院の怪異も

完全に消滅した。

翌日。

神崎の研究施設に

新しい依頼が届いた。

北関東。

山沿いに建つ

巨大な廃製鉄所。

「今度は

製鉄所か」

AR-01が

映像を表示した。

「この施設では

毎晩午前三時になると

停止した機械が

一斉に動き始めます」

画面には

錆びた巨大な設備が

映っていた。

溶鉱炉。

搬送装置。

巨大なクレーン。

どれも

何十年も

動いていないはずだった。

「電気は?」

「供給されていません」

「それなのに

動くのか」

「はい。

さらに

施設内では

人間の声が

記録されています」

「誰の声だ?」

AR-01が

音声を再生した。

ザーッ。

雑音の中から

低い男の声が聞こえた。

「まだ

終わっていない」

神崎は

画面を見つめた。

「何が終わっていない?」

次の瞬間

別の声が重なった。

「炉を止めるな」

「止めたら

全員死ぬ」

神崎は

眉をひそめた。

「何があったんだ?」

AR-01が

過去の事故記録を表示した。

三十年前。

製鉄所では

大規模な事故が

発生していた。

溶鉱炉の異常。

制御装置の故障。

そして

作業員たちの失踪。

「何人消えた?」

「十二名です」

神崎は

息をのんだ。

「十二人……」

「全員

最後に確認された場所は

溶鉱炉の制御室です」

その夜。

神崎とAR-01は

廃製鉄所へ到着した。

巨大な煙突が

夜空に突き出している。

施設全体は

真っ暗だった。

神崎が

腕時計を見る。

午前二時五十九分。

「もうすぐだな」

「はい」

AR-01が

施設を解析する。

「霊的反応なし」

神崎は

眉をひそめた。

「何もいないのか?」

「現時点では

検出できません」

その瞬間

時計が

午前三時を示した。

ゴォォォォ。

巨大な音が

製鉄所全体に響いた。

止まっていた

搬送装置が動き始める。

クレーンが

ゆっくり回転する。

そして

真っ暗だった溶鉱炉の奥に

赤い光が灯った。

「AR-01!」

「霊的反応を検出」

「どこだ?」

AR-01の青い眼が

激しく点滅した。

「施設全体です」

神崎は

巨大な建物を見上げた。

そのとき

溶鉱炉の奥から

十二人の声が

同時に響いた。

「作業を

再開します」

そして

誰もいない制御室の窓に

十二人の黒い人影が

浮かび上がった。

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