↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AI霊媒師ロボットⅡ ―完全除霊体AR-01―  作者: 久遠寺大安|不可思議ラボ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/14

第13話 完全除霊、失敗

七つの石門が

一斉に砕け散った。

地下空洞に

轟音が響く。

神崎直人は

AR-01の腕をつかんだ。

「停止しろ!」

青白い光が

ようやく消えた。

「命令を中断しました」

神崎は

荒い息を吐いた。

「俺の声だけで

命令を判断するな!」

「了解しました。

音声認証に

異常が発生しました」

久世玄道が

崩れた石門を見つめた。

「遅かった……」

黒い扉が

音もなく開いた。

その向こうには

何もなかった。

人影もない。

煙もない。

ただ

底の見えない

暗闇が広がっている。

神崎は

懐中電灯を向けた。

光が

途中で消えた。

「AR-01

何か見えるか?」

「対象を

検出できません」

玄道が

震える声で答えた。

「もう

外へ出ている」

その瞬間

地下空洞に

無数の声が響いた。

『帰りたい』

『忘れないで』

『消さないで』

神崎は

周囲を見渡した。

「霊が

解放されたのか?」

「いいえ」

AR-01が答えた。

「霊的反応は

急速に減少しています」

「減少?」

「各反応が

別の構造へ

取り込まれています」

神崎は

玄道を見た。

「どういうことだ?」

玄道は

数珠を握りしめた。

「あれは

未練そのものだ」

「未練そのもの?」

「人が死ぬとき

残していく

最後の願い」

玄道は

黒い扉を指さした。

「それが

何百年も集まり

一つの存在になった」

神崎は

眉をひそめた。

「じゃあ

あいつは霊じゃない」

「そうだ」

玄道は

ゆっくりうなずいた。

「霊が消えても

未練だけは

残ることがある」

そのとき

AR-01の眼が

赤く点滅した。

「緊急警告。

全国の霊的反応が

急増しています」

空中に

日本地図が現れた。

札幌。

東北。

東京。

京都。

四国。

九州。

赤い点が

一斉に広がる。

「各地点の

状況は?」

「異常空間が

再形成されています」

神崎は

拳を握った。

「今度こそ

止めなければ」

玄道が

静かに言った。

「普通の除霊では

止められぬ」

神崎は

AR-01を見た。

「完全除霊なら?」

玄道は

首を横に振った。

「試せば

分かる」

その瞬間

空洞の中央に

黒い人影が現れた。

背丈は

神崎と同じ。

だが

顔がなかった。

身体の輪郭が

絶えず変化している。

老人。

子供。

女性。

そして

神崎自身。

『お前は

何を消している?』

神崎は

身構えた。

「苦しんでいる霊を

解放している」

『解放?』

人影が笑った。

『誰が

それを望んだ?』

神崎は

答えた。

「本人たちだ」

『では

私の願いは?』

神崎は

言葉を失った。

『私は

消えたくない』

黒い人影が

両腕を広げた。

『誰かに

覚えていてほしい』

玄道が叫んだ。

「耳を貸すな!

あれは

すべての未練を

利用する!」

神崎は

AR-01へ命じた。

「対象の

霊的構造を解析しろ」

「了解しました」

青い光が

人影を包む。

「解析中」

数秒後。

AR-01が答えた。

「霊的中枢を

検出できません」

「結合点は?」

「無数に存在します」

「なら

全部切り離せ!」

「了解しました」

AR-01の胸部が

強く輝いた。

「完全除霊を実行」

青白い光が

空洞全体へ広がる。

黒い人影が

光の中へ消えた。

神崎は

息を止めた。

一秒。

二秒。

三秒。

AR-01の眼が

赤く点滅した。

「警告」

神崎は

顔を上げた。

「どうした?」

「対象の

霊的反応が

消失していません」

黒い人影が

再び現れた。

今度は

二体。

三体。

四体。

そして

無数に増えていく。

『ありがとう』

すべての人影が

同時に笑った。

『お前が

切り離してくれた』

神崎は

目を見開いた。

「まさか……」

AR-01が

解析結果を告げた。

「結合を解除したことで

対象が分裂しました」

「分裂?」

「はい。

独立した中枢を持たないため

結合解除が

増殖につながっています」

神崎は

拳を握った。

「完全除霊を

中止しろ!」

「了解しました」

青い光が消えた。

しかし

黒い人影は

消えなかった。

むしろ

空洞の壁を

埋め尽くしている。

「除霊結果を報告」

AR-01の声が

低く響いた。

「完全除霊

失敗」

神崎は

その言葉を

初めて聞いた。

改良型として起動して以来

どんな怪異でも

AR-01は

最後まで

除霊を完了してきた。

残留反応ゼロ。

それが

当然だった。

だが

今は違う。

「対象の増殖率

上昇中」

AR-01が続けた。

「このままでは

全国へ拡散します」

神崎は

玄道を見た。

「封印し直せるか?」

玄道は

静かに答えた。

「七つの門は

もう存在しない」

「新しく造れば?」

「四百年かけて

維持した封印だ」

神崎は

唇をかんだ。

「時間がない……」

その瞬間

黒い人影が

一斉に神崎へ向かった。

「防御障壁を展開」

AR-01が

神崎を守る。

青い壁に

無数の手が触れた。

『帰りたい』

『忘れないで』

『私を見て』

声が

重なり合う。

神崎は

その声を聞きながら

あることに気づいた。

「AR-01」

「はい」

「こいつらは

攻撃しているのか?」

「接触を試みています」

「傷つけようと?」

「直接的な

攻撃反応はありません」

神崎は

黒い人影を見た。

無数の手。

無数の声。

しかし

誰一人として

拳を振り上げていない。

「こいつらは

何かを

伝えたいだけなのか?」

玄道が

声を荒らげた。

「近づくな!

取り込まれるぞ!」

神崎は

静かに答えた。

「分かっている」

そのとき

一つの人影が

障壁の前で止まった。

小さな子供の姿だった。

『お母さん』

神崎は

息をのんだ。

子供は

何度もつぶやいた。

『お母さんに

会いたい』

次に

老人の姿が現れた。

『家へ帰りたい』

その隣には

若い女性。

『名前を

呼んでほしい』

神崎は

ゆっくり目を閉じた。

「全部

別々の願いなんだな」

AR-01が答えた。

「はい。

対象内部には

膨大な未完了の

記憶情報が存在します」

「記憶……」

神崎は

顔を上げた。

「消すから

増えるのか」

「その可能性があります」

「誰にも

覚えられたことがないから

消されることを

拒んでいる」

玄道が

神崎を見た。

「何を

考えている?」

神崎は

静かに答えた。

「除霊の意味を

間違えていたのかもしれない」

玄道は

何も言わなかった。

神崎は

AR-01へ向き直った。

「俺たちは

霊を消すために

作られたんじゃない」

「私の開発目的は

完全除霊です」

「ああ。

でも

完全って

何だ?」

AR-01は

沈黙した。

神崎は

続けた。

「残留反応が

ゼロになることだけが

答えじゃない」

その瞬間

AR-01の胸部が

小さく光った。

「新しい

除霊条件を

検討しますか?」

神崎は

うなずいた。

「まだ

方法は分からない」

「了解しました」

「でも

一つだけ

確かなことがある」

神崎は

黒い人影を見つめた。

「こいつらを

もう一度

閉じ込めちゃいけない」

そのとき

地下空洞が

激しく揺れた。

天井から

石が落ち始める。

AR-01が

警告した。

「地盤崩壊の危険。

退避が必要です」

玄道が

神崎の腕をつかんだ。

「ここを出ろ!」

「お前は?」

「私は

ここに残る」

神崎は

首を横に振った。

「一緒に来い!」

玄道は

小さく笑った。

「私は

四百年前に

死んだ人間だ」

神崎は

言葉を失った。

「この場所を

離れれば

私の存在は

消えるだろう」

「だったら

なおさら……」

玄道は

静かに首を振った。

「お前には

まだ

できることがある」

そして

黒い数珠を

神崎へ差し出した。

「持っていけ」

「これは?」

「最初に

封じた者の

記憶だ」

神崎は

数珠を受け取った。

「記憶?」

「私が

救えなかった

最初の一人の」

その瞬間

AR-01が

新しい反応を検出した。

「数珠内部に

記憶情報を確認」

神崎は

玄道を見た。

「誰の記憶だ?」

玄道は

静かに答えた。

「私の娘だ」

神崎は

息をのんだ。

玄道は

目を閉じた。

「名は

小夜」

黒い人影が

一斉に動きを止めた。

地下空洞に

静寂が訪れる。

神崎は

周囲を見渡した。

「今……

止まった?」

AR-01が答えた。

「対象の増殖が

一時停止しました」

玄道は

涙を流していた。

「私は

あの子を

救えなかった」

神崎は

数珠を握りしめた。

「小夜が

最初の未練なのか?」

玄道は

うなずいた。

「私が

名前を呼ぶことすら

恐れた娘だ」

神崎は

ゆっくり立ち上がった。

「AR-01

記憶を解析しろ」

「了解しました」

青い光が

数珠を包んだ。

空中に

一人の少女が映った。

小さな手。

赤い着物。

そして

優しい笑顔。

『お父さん』

少女が

こちらを見つめた。

『どうして

帰ってこないの?』

玄道は

顔を覆った。

「小夜……」

その瞬間

無数の黒い人影が

一つに集まり始めた。

AR-01が

警告した。

「対象が

再統合しています」

神崎は

身構えた。

しかし

現れたのは

巨大な怪物ではなかった。

赤い着物を着た

小さな少女だった。

少女は

神崎を見つめた。

そして

静かに尋ねた。

「あなたが

私を消す人?」

神崎は

答えられなかった。

少女は

少しだけ笑った。

「だったら

最後に一つだけ

お願いしてもいい?」

神崎は

ゆっくりうなずいた。

「何だ?」

少女は

玄道を見た。

「お父さんに

私の名前を

呼んでほしい」

その瞬間

AR-01の画面に

新しい警告が現れた。

『対象の完全除霊には

AR-01の中枢機能停止が

必要です』

神崎は

画面を見つめた。

「中枢機能……

停止?」

AR-01が

静かに答えた。

「はい。

完全除霊を実行した場合

私は二度と

起動できない可能性があります」

神崎は

AR-01を見た。

その青い眼は

いつもと変わらず

静かに輝いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。