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AI霊媒師ロボットⅡ ―完全除霊体AR-01―  作者: 久遠寺大安|不可思議ラボ


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10/14

第10話 死者を数える灯台

『最後の卒業生

神崎直人さん』

誰もいない体育館に

拍手が響いた。

神崎は

壇上の卒業証書を

見つめた。

「どうして

俺の名前がある?」

AR-01の眼が

赤く点滅する。

「警告。

神崎の生命情報が

卒業証書に

結合されています」

「どういう意味だ?」

「このままでは

神崎が卒業生として

固定されます」

神崎は

周囲を見渡した。

整然と並ぶ椅子。

誰もいない壇上。

しかし

拍手だけが

鳴りやまない。

「固定されたら

どうなる?」

「この学校の

霊的空間から

出られなくなる可能性があります」

その瞬間

体育館の扉が

勢いよく閉まった。

ガタン!

神崎は

扉へ走った。

だが

取っ手が動かない。

『卒業生は

席にお戻りください』

校内放送が流れた。

神崎の背後で

一脚の椅子が

ゆっくり動いた。

「AR-01

あの椅子は?」

「神崎の席です」

神崎は

首を横に振った。

「俺は

卒業生じゃない」

『それでは

卒業証書を授与します』

放送が続く。

壇上の証書が

一枚ずつ浮かび上がった。

一枚目。

二枚目。

三枚目。

七枚目まで

順番に光る。

そして

八枚目が

神崎へ向かって

飛んできた。

AR-01が

腕を伸ばした。

「防御障壁を展開」

青い光が

証書を弾いた。

しかし

証書は消えない。

床に落ちると

再び浮き上がった。

「AR-01

発生源は?」

「体育館の

放送設備です」

「電気は

来ていないんだろ?」

「はい。

霊的な記録が

再生されています」

神崎は

壇上へ向かった。

古いマイクが

一本立っている。

マイクの下には

卒業式の進行表があった。

『卒業生七名』

神崎は

その文字を見た。

「最初から

七人だったんだな」

「記録上は

七名です」

「じゃあ

八人目は誰だ?」

AR-01が

進行表を解析した。

「一部に

書き換えられた痕跡があります」

「復元できるか?」

「可能です」

青い光が

紙を照らした。

消された文字が

浮かび上がる。

『卒業証書授与

児童七名』

その下に

小さな文字があった。

『代理受領者一名』

神崎は

目を見開いた。

「代理受領者?」

「卒業証書を

受け取れなかった児童の代わりに

受領する人物です」

神崎は

七枚の証書を見た。

一枚だけ

日付が空欄だった。

「この子の

証書か?」

「その可能性があります」

そのとき

体育館の奥から

小さな泣き声が聞こえた。

神崎が振り返る。

ステージの幕の陰に

一人の少女が

座っていた。

古い制服。

煤で汚れた頬。

手には

折れた鉛筆を握っている。

「君は?」

少女は

顔を上げた。

「卒業式……

終わっちゃった?」

神崎は

ゆっくり近づいた。

「まだだよ」

少女は

首を横に振った。

「みんな

先に行っちゃった」

「どうして?」

「私だけ

名前を呼ばれなかった」

神崎は

AR-01を見た。

「この子の名前は?」

「古い名簿を照合します」

AR-01の眼が

青く輝いた。

「確認しました。

七名のうち

最後に名前を呼ばれる予定だった

児童です」

神崎は

少女に尋ねた。

「名前を

教えてくれるか?」

少女は

小さく答えた。

「小川美咲」

神崎は

卒業証書を見た。

日付が空欄の一枚。

そこには

『小川美咲』と

書かれていた。

「君の証書は

ここにある」

少女は

驚いて立ち上がった。

「本当?」

「ああ。

でも

まだ渡されていない」

神崎は

壇上のマイクを握った。

「AR-01

放送を止められるか?」

「可能です。

ただし

卒業式の記録そのものを

終了させる必要があります」

神崎は

進行表を手に取った。

「なら

最後までやろう」

AR-01が

マイクへ光を送る。

古いスピーカーから

雑音が消えた。

神崎は

静かに告げた。

「卒業生

小川美咲さん」

体育館の空気が

震えた。

少女が

ゆっくり壇上へ歩く。

神崎は

証書を手に取った。

「卒業

おめでとう」

少女は

両手で受け取った。

「ありがとう……

先生」

その瞬間

誰もいない椅子に

七人の子供たちが

姿を現した。

全員

笑っていた。

少女は

仲間たちを見つめた。

「みんな……」

一人の少年が

手を振った。

「待ってたよ」

神崎は

そっと後ろへ下がった。

AR-01の眼が

青く輝く。

「卒業式の

未完了記録を解除」

七人の子供たちが

光に包まれた。

体育館に

最後の拍手が響く。

パチパチ。

パチパチ。

パチパチ。

そして

静かになった。

「完全除霊を実行」

七人の姿が

光の粒へ変わっていく。

少女は

最後に振り返った。

「先生も

帰ってね」

神崎は

うなずいた。

「ああ」

光が消えた。

壇上の

八枚目の卒業証書も

静かに消えた。

「除霊完了。

残留反応ゼロ」

体育館の扉が

ゆっくり開いた。

神崎は

夜空を見上げた。

「卒業式が

終わったんだな」

「はい」

AR-01が答えた。

「七名全員の

霊的結合が解除されました」

神崎は

校舎を振り返った。

割れた窓の向こうに

もう誰もいない。

翌朝。

研究施設で

AR-01が

事件記録を整理していた。

「神崎」

「何だ?」

「夕凪小学校の

霊的構造に

共通点を確認しました」

神崎は

画面へ近づいた。

「清蓮寺と

海底トンネルか?」

「はい。

ただし

今回はさらに

別の特徴があります」

「何だ?」

「七名の霊的結合が

一つの未完了記録に

集中していました」

神崎は

腕を組んだ。

「七つの門……」

京都の木箱に

残されていた文字だった。

「関係があるのか?」

「現時点では

不明です」

神崎は

画面を閉じた。

「引き続き

調べてくれ」

「了解しました」

その日の午後。

新しい依頼が届いた。

九州地方。

本土から離れた

小さな孤島。

『黒潮島』

島の北端には

百年以上前に建てられた

古い灯台があった。

『黒潮岬灯台』

「灯台で

何が起きている?」

AR-01が

資料を表示した。

「灯台の明かりが

人の死亡を

予告しています」

神崎は

眉をひそめた。

「死亡を?」

「はい。

毎晩午前零時に

灯台が点滅します」

「何回?」

「その後

島で亡くなる人数と

一致しています」

画面に

過去の記録が表示された。

三か月前。

点滅二回。

翌日

二名が死亡。

二か月前。

点滅一回。

翌日

一名が死亡。

一週間前。

点滅三回。

翌日

三名が死亡。

神崎は

画面を見つめた。

「偶然とは

思えないな」

「はい。

すべて

一致しています」

「原因は?」

「不明です。

灯台は

二十年前から

使用されていません」

神崎は

目を見開いた。

「電気もないのか?」

「ありません」

AR-01が

別の映像を表示した。

真っ暗な海。

古い灯台。

そして

頂上で点滅する

白い光。

一回。

二回。

三回。

映像の最後に

低い男の声が入っていた。

『まだ

足りない』

神崎は

顔を上げた。

「何が

足りないんだ?」

「解析不能です」

翌日。

神崎とAR-01は

船で黒潮島へ向かった。

島には

小さな港があった。

古い家々。

狭い坂道。

そして

崖の上に立つ

白い灯台。

港で

一人の老人が

二人を待っていた。

「神崎さんですね」

「はい」

老人は

島の管理人だった。

「どうか

灯台を止めてください」

「何か

分かっていることは?」

老人は

海を見つめた。

「あの灯台は

死ぬ人を

数えているんじゃない」

神崎は

眉をひそめた。

「どういう意味ですか?」

老人は

震える声で答えた。

「足りない人数を

数えているんです」

神崎は

AR-01を見た。

「足りない?」

老人は

小さくうなずいた。

「昔

この島で

大きな海難事故がありました」

「何人亡くなったんですか?」

「七人です」

神崎の表情が

変わった。

「七人……」

老人は

続けた。

「でも

見つかった遺体は

六人だけでした」

神崎は

灯台を見上げた。

「残りの一人は?」

老人は

答えなかった。

ただ

灯台を指さした。

「今も

あそこにいます」

その夜。

神崎とAR-01は

灯台へ入った。

古い螺旋階段。

錆びた手すり。

潮風で傷んだ壁。

二人は

最上階へ向かった。

時計は

午後十一時五十八分。

「もうすぐ

零時だ」

「はい」

灯室には

巨大なレンズがあった。

だが

電球は取り外されている。

「AR-01

霊的反応は?」

「微弱な反応を検出」

「どこから?」

「レンズ内部です」

神崎は

ガラスへ近づいた。

そこには

自分の姿が映っていた。

しかし

反射した神崎は

こちらを見ていなかった。

海の方を

見つめている。

「AR-01

この反射は……」

その瞬間

時計が

午前零時を示した。

レンズが

突然光り始めた。

一回。

二回。

三回。

四回。

五回。

六回。

七回。

神崎は

息をのんだ。

「七回……」

AR-01の眼が

赤く点滅する。

「警告。

灯台の光が

七名の死亡を予告しています」

神崎は

窓の外を見た。

港の家々に

明かりがともっている。

「七人も

死ぬのか?」

「予測時刻は

明日の午前零時です」

そのとき

レンズの中の神崎が

ゆっくり振り返った。

そして

ガラスの向こうから

低い声で告げた。

「七人じゃない」

神崎は

動けなくなった。

反射した自分が

不気味に笑った。

「七人目は

もうここにいる」

その瞬間

灯台の扉が

内側から

静かに閉まった。

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