↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/59

33


 床下から現れたシフトは父のようにマックの手を借りず、自力で這い上がってきた。

 騎士団の賜物なのか、ズリズリ這い上がってくるようなみっともない感じではなく、反動をつけて穴から飛び出てきた。

 だん、と床に足をつけた時の音が響く。

 筋肉質の重そうな音だ。

 

 それから、スタスタと私の方に向かってくる。


 キレてる。それはもうブチギレ。

 母に勝るとも劣らない怒気に、悪い事はしていないのに、嫌すぎて父の後ろに隠れた。

 父はチラリと私を見てからシフトを見た。


 「シフト。久しぶりじゃないか」

  

 「………お久しぶりです。先生、退いて?」


 「ハハハ。何故?」


 とても面白そうに父はシフトを見る。

 シフトは盛大に舌打ちして、父の後ろにいる私を覗き込んだ。


 「ネジ。説明して」


 圧が強い。

 勿論説明するつもりだけど、お前待ちだったんだけどな。


 「ゲランと婚約するの?なんで?俺と結婚するんだよね?どういうこと?浮気?」


 ツッコミ所が多すぎる。


 「お前と結婚はしない。だから浮気じゃないだろ」


 「は?じゃあ、ゲランと結婚するの?殺す」


 誰を?私を?

 え、親の目の前でそんな事言う?

 完全に狂気だし。

 なのに、絶対冗談じゃない。目が据わってる。普通に怖い。


 「……落ち着け。ゲランとも結婚しない」


 ふるふると首を振ると、シフトは言質を取れて安心したのか、急ににこにこし始めた。

 

 コイツ、情緒大丈夫か?

 ぶんぶんと尻尾を振り回す忠犬よろしく、にっこにこで私を見てきた。


 「だよね!良かった!ネジと結婚するのは俺だもんね!」


 「………お前、私の話聞いてた?お前とも結婚しないが?」


 話が伝わらなさ過ぎてびっくりする。

 別にいつもの流れだけど。

 父はシフトの変わりようにドン引きしている。


 「シフト……ちょっと会わない間に随分狂ったな…」


 「やだな、先生。俺は正常だけど?」


 「じゃあボケたのか?それとも自己防衛がいき過ぎて脳味噌に言語化されないのか?」


 「…?何言ってんの?ネジはゲランなんかと結婚しないって言ってるじゃん。つまり、俺と結婚するって事だよ?」


 「違うが?」


 思わず突っ込んでしまう。

 何故ゲランと結婚しない=俺と結婚する、の理論になるのかわからない。


 「お前達、恋人にでもなったのか?」


 「うん!」


 「違うが?」


 ポンコツ具合が酷すぎる。

 にこにこで笑うシフトと、首を横に振る私を見比べて父は首を傾げる。

 それからくるりと母に振り返った。


 「どっちなんだ?」


 「さぁ?付き合ってないんじゃない?知らない」


 機嫌が悪いのはまだ直らないらしい。

 母は余計な話が始まって不機嫌極まりない様子で、口を開いた。


 「っていうか、シフトも来たし、説明して。ゲランて誰?肉体関係があったわけ?」


 「………は?」


 母の言葉にシフトが低い低い声を出す。

 父はピクリと眉を跳ね上げた。


 「なにそれ?どういう事?誰と誰が?ネジなわけないよね?」


 ジロリとシフトは私を睨む。

 圧、強過ぎ。


 「ねぇ…違うよね?俺、戦争始めちゃうかも」


 「冗談に聞こえねぇな」


 「ネジ、何言ってんの?1000%本気だけど?」


 100%じゃないのか。1000%本気って、どういう事?

 強火ストーカー過ぎてマジで怖いな。


 「説明するから落ち着け」


 ふー、と息を吐き出す。

 椅子に腰掛けると、その両隣にシフトと父が座る。父のもう一つの横は母、シフトのもう一つの横はガイだ。それぞれストッパーがいて丁度いいだろう。

 母はトントンと、コップに煙草の灰を落とした。短くなった煙草を机に押し付けて消す。

 …灰皿は確かにないけど、柄悪すぎだな。









 全員の視線が私に集まる。

 父とシフトが来たから椅子が足りず、マックとコンテが立っていた。

 マックは母の後ろに控え、コンテは部外者が来た時の為に、入口に控えていた。

 普通に話せば聞こえると思う。


 「…どこから話せばいいんだ…?」


 時系列で行くか、全員が知りたい事から話す方がいいのか。

 うーん、と首を傾げると父が口を開いた。


 「まず状況を整理したい。お前には今、隣国のゲラン・アパタイトという人物、正式にはアパタイト家から婚約の申込が届いている。事実はこれだけだな?」


 「うん」


 「ふむ。では私の質問は、まずこのゲラン・アパタイトとは誰で、お前と面識があるのか。第2に、面識があるのなら、なぜ今婚約の申込がくるのか。第3に、何故肉体関係があるのかと聞かれているのか。また実際はどうなのか。そして最後に、お前はどうしたいのか。また第2の質問に付随するが、何か弱みを握られていて拒否したいのにできない理由があるか」


 ぐるりと父は視線を一周させる。

 どこからも何も追加の質問は出てこなかった。

 時系列に話すより、父の質問に答えた方がよっぽど楽だし、分かりやすい。口を開きかけた私に首を振って父はシフトと母を見る。


 「質問に答える前に一つだけ。シフト、ネジの話が終わるまで席を立たないこと。勿論君もだ」


 父は横に座っている母にも視線を向ける。

 母はジロリと父を睨み返した。


 「何故?いつ立ち上がるかなんて私の自由よ」


 「君とシフトがブチギレて怒りのまま王宮や隣国を攻撃してみろ。国際問題だし一気に戦争じゃないか」


 「構わない。私にとって大事なのはネジ。国なんてどうでもいい」


 魔術管理部門の部長の台詞じゃない。

 しかも全然冗談じゃなさそうなのが余計怖い。シフトも茶化してこないで無言を貫く辺り、完全に同意している気がする。


 「ダメだ。君はネジを戦争を起こした張本人として戦犯にしたいのか?」


 ピク、と母の眉が跳ね上がる。

 冷ややかに父を睨んだ。


 「…いいわ。じゃ、ネジの話が終わるまではここにいる」


 一度言葉を切って、母は灰皿にしていたコップとは違う、レモネードの入っていたコップを手に取る。ユリが注いでそのままになっていたそれを、一息で飲み干し、そのコップを握り潰した。

 べコリと、コップの悲鳴じみた音がする。


 「話が終わった後はどうなるか知らないけど」

 

 飛び出して戦争が起こる気がしてならない。

 母は潰したコップを無造作に机に放り投げる。


 マッジで態度、悪…!


ここまで読んでいただき、ありがとうございます! 本作はすでに**【全話執筆完結済み】**です! 明日からも気ままに更新していきますので、安心してお付き合いください。 もし少しでも「面白い!」「続きが気になる!」「ネジがんばれ!」と思っていただけましたら、 画面下にある**【★】(星)**や**【作品フォロー】**を押して応援していただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。