↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/59

25


 一般人への白魔女の魔術陣を試す実験は魔術管理部門の預かりになった。

 それは母が主体となり、魔術管理部門総出で調べてくれるらしい。ついでに通常の魔術も調べると母は請け負ってくれた。

 ただ、通常の魔力を持つ人間が調べた中にいても、恐らく白魔女はいない。

 その仮説は母も今のところ肯定的だ。


 そして、その仮説が正しかったとして、魔力封じの腕輪の大量生産が必要になる。


 これは当然、私、ガイの2人では無理だから、こちらも併せて魔術管理部門の職員が手伝ってくれることになるだろう。

 ガイと違って魔術師だから、魔術陣を描くのは手慣れているし、描くこと自体はそんなに心配していない。

 誰かが母を裏切らなければ、流出することもないだろう。

 その辺りは正直母頼みだ。


 ユリにつけた魔力封じの腕輪は、母が帰ってきたその日にユリから外した。

 ユリはこれで自由の身だけど、レジスタンスの件もあるし、ここに残ることにしたらしい。

 まぁガイがいるのも大きいだろうけど。


 そして、その試作品の腕輪と、改良版の腕輪を母は面白そうに検分していた。


 「はぁーん…なるほどね。…これ、改良版は魔力が入ってないわけね」


 「そう」


 改良版は、核となる私の魔力だけはあるけれど、それだけでは反応しない。

 相手の魔力があって初めて使える白魔女の魔力の特性を考えて、そもそも必要最低限以外魔力は込めないことにした。

 代わりに、相手が魔力を使った瞬間に、その魔力を0にする仕組みにした。


 「相手が魔力を使った瞬間にあんたの魔力で封じるわけね?…無駄の嫌いなあんたらしいわ…」


 全てに私の魔力を込めるのは非効率的だ。

 これなら最小限で済むし、私への負担も少ない。


 「しかもこれ、1回でも使ったらその魔力を循環させて自分で自分の魔力をこの核に吸い取らせる仕様なのね。これであんたがいなくても半永久的に使えるわけか……よく考えてるじゃない」


 「面白いだろ?」


 「とっても。これはウチのコ達も大喜びするわねぇ…」


 母のいうウチのコとは、魔術管理部門の職員の事だろう。

 魔術管理部門は現在母を入れて、合計8人。

 少数精鋭のその機関は、ボスである母の影響か、かなりの変人狂人ばかりだ。

 ガイは私を常識も倫理も情緒もないと評したが、私に言わせれば魔術管理部門の連中の方がない。なさ過ぎて、最早笑えるレベルだ。


 「うん、いいわ。…じゃ、早速持って帰るわね」


 母は言うや否や立ち上がる。

 その即断即決即行動に、我が母ながら、なんとなく暴れ馬を想像してしまう。

 母が行くと言うなら行くだろう。

 引き止める事も特にない。


 「ガイとユリには会わなくていいのか?」


 母は昨日帰ってきて、夕飯を皆で囲んだ。

 その時にガイとユリを散々からかっていたから、今日2人は母から逃げるように朝イチで外出していた。

 

 「ああ、もういいわ。飽きた」


 完全におもちゃにしている人間の台詞だ。

 

 「ウチのコ達、白魔女に興味津々なのよね。あんた、切り刻まれないように気をつけなさいよぉ?」


 ニヤリと母は意地悪く笑う。

 その脅しに鼻で笑ってしまう。


 「ハッ。研究熱心なことだな」


 「…可愛くないわねぇー……ちょっとくらい嫌がったら?」


 「むしろちょっと興味ある。研究に参加できるなら考えてもいいくらいには、私も知りたい」


 白魔女にはまだまだ謎が多い。

 それを知れるなら多少の傷は目を瞑ってもいい。


 「バカ。あんたのその好奇心は猫を殺すやつよ。親としては、心配でもあるけどね」


 母は私の頬を撫でる。

 20歳の娘にするには、余りにも子ども扱いし過ぎている。

 娘の事は心配だけれど、同じ研究者として同僚の気持ちもわかる。その複雑な心境はそのまま顔に表れていた。


 「まぁ…あの番犬が許さないだろうけど」


 番犬とはシフトの事だろう。

 シフトは私に傷がつくのを本当に嫌がっているから。


 「あのバカも、本当に情けないわ…。全く、揃いも揃って、私の弟子には困ったことよ」


 母は言葉の割に嬉しそうだ。

 まだ手のかかる子供のようで、放っておけないからと口出しできる事が嬉しいように見える。

 それは愛情深い慈愛に満ちた表情だ。

 魔術管理部門の長ではなく、私とシフトを心配する母であり、師匠そのものだ。


 「…シフトに聞かれたら大騒ぎしてるわね」


 シフトはもう仕事をしているから、騎士団に居て、ここにはいない。

 母は苦笑した。


 「この家に一人でも平気よね?」


 「…私をいくつだと思ってるんだ。もうちゃんとした大人なんだから大丈夫」


 「そうよね。わかってはいるんだけどねぇ…それでも心配するのが親心よ」


 「要らん要らん。どうせ明後日会うだろ」


 珍しくしおらしい母に、わざと軽い調子で答える。

 少しでも心配がなくなればいい。

 私の気持ちが伝わったのか、母は気持ちを切り替えるように、にっこりと笑った。


 「そうね。…よし、行くわ。明後日遅れないでよね」


 「わかってるって」


 念押しする母に苦笑して頷くと、母は自身の足元に手を翳す。


 足元の床はグニグニと歪み始め、まるで水のように渦を巻き始める。

 その中心に立って母の足元が床に吸い込まれていく。

 ひらひらと手を振って、母はあっという間にその床に吸い込まれていった。


 母は魔術管理部門へと帰って行った。

 そして明後日、私もそこへ行く。

 いよいよ魔力封じの腕輪が始動してきた気配がした。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます! 本作はすでに**【全話執筆完結済み】**です! 明日からも気ままに更新していきますので、安心してお付き合いください。 もし少しでも「面白い!」「続きが気になる!」「ネジがんばれ!」と思っていただけましたら、 画面下にある**【★】(星)**や**【作品フォロー】**を押して応援していただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。