表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星を食べる少年  作者: 臥亜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/25

第24話「ミナの戦い」

 光が、消えた。


 夜が戻る。


 静かすぎるほどの静寂。


 その中心に、ミナは立っていた。


「……逃がしたか」


 回収者が、淡々と言う。


 その視線が、ミナに向く。


「では、次だ」


 足が、一歩前に出る。


 それだけで。


 空気が、重くなる。


 だが、ミナは動かない。


 逃げない。


 震えてもいない。


「……うん」


 小さく頷く。


「次は、私だよね」


 回収者は、少しだけ目を細める。


「理解が早い」


「効率的だ」


 ミナは、ふっと笑った。


「効率ってさ」


「好きじゃないんだよね」


 指先に、光が灯る。


 弱い光。


 今までのような強さはない。


 もう、ほとんど残っていない。


 それでも。


 消えてはいない。


「それ、まだ使うのか」


 回収者が言う。


「出力は低い」


「持続も不可能」


「意味がない」


 ミナは、首を振る。


「意味は、自分で作るの」


 光が、ゆっくり広がる。


 だがそれは、攻撃じゃない。


 空間を“なぞる”ように。


 優しく。


 丁寧に。


「……また座標固定か」


「学習しないな」


 回収者が手を上げる。


 終わらせるための動き。


 速い。


 避けられない。


 その瞬間。


「――違うよ」


 ミナが言った。


 光が、揺れる。


「これは、“合わせる”んじゃない」


 回収者の手が、止まる。


 ほんのわずかに。


「“ズラす”の」


 次の瞬間。


 回収者の手が、ミナの体を――


 すり抜けた。


「……?」


 初めて。


 回収者が、明確に反応する。


「位相を……外した?」


 ミナの呼吸が荒くなる。


 限界は近い。


 でも。


 笑っている。


「ちょっとだけ、分かってきた」


 足が、震える。


 それでも、一歩前へ出る。


「あなた、“ここにいない”んでしょ?」


 回収者は、黙る。


「だから、“合わせる”と負ける」


「だったら」


 光が、細く、鋭くなる。


「ズラせばいい」


 踏み込む。


 遅い。


 力も弱い。


 でも。


 ――当たる。


 光が、回収者の肩をかすめる。


「……干渉された、だと」


 回収者の目が、わずかに変わる。


「理論を理解したわけでもないのに」


「感覚で再現したのか」


 ミナは、息を吐く。


「理屈は分かんないよ」


「でもさ」


 少しだけ、遠くを見る。


 リオと、ガイがいた場所。


「二人と合わせると、当たるの」


「だったら、一人でもやれるって思った」


 その言葉に。


 ほんのわずか。


 回収者の沈黙が伸びた。


「……非効率だ」


 そう言いながらも。


 その立ち姿は、少しだけ変わっていた。


 最初よりも。


 “警戒”している。


「評価を、再修正する」


「個体名:ミナ」


「予測外要素として記録」


 ミナは、笑う。


「ありがとう」


「褒められた」


 だが。


 その直後。


 膝が、崩れた。


「……っ!」


 限界。


 光が、一気に弱くなる。


「やはり、持続不能」


 回収者が歩く。


 今度は、確実に終わらせる距離。


「ここまでだ」


 ミナは、立てない。


 呼吸も浅い。


 でも。


 顔だけは、上げる。


「……うん」


 静かに言う。


「ここまで」


 その言葉に。


 ほんの少しだけ、“違和感”があった。


 回収者が止まる。


「……?」


 その瞬間。


 ミナの足元。


 微かに残っていた光が、つながる。


 線になる。


 円になる。


「最初から、“時間稼ぎ”なんだよ」


 ミナが、微笑む。


「一人で勝てるなんて、思ってない」


 光が、完成する。


 それは。


 巨大な“転移陣”。


 回収者の足元まで、巻き込んでいる。


「……なるほど」


 回収者が、理解する。


「自分ごと、巻き込むか」


 ミナが、頷く。


「うん」


「一人じゃ、意味ないから」


 光が、弾ける。


 ――バチン!!


 一瞬の閃光。


 次の瞬間。


 そこには、誰もいなかった。


 別の場所。


 崩れた建物の影。


 ミナが、地面に倒れ込む。


「……っ、は……」


 呼吸が、荒い。


 視界が、ぼやける。


 でも。


 生きている。


「……よかった」


 小さく、笑う。


 その直後。


「本当に、そうか?」


 声。


 すぐ後ろ。


 振り向く。


 そこに――


 回収者が、立っていた。


「転移の精度は高い」


「だが」


「“完全ではない”」


 ミナの顔から、血の気が引く。


「……うそ」


 回収者が、一歩近づく。


「だが評価する」


「ここまで到達した個体は、初めてだ」


 手を、伸ばす。


 今度こそ、終わる。


 その瞬間。


 ミナは、目を閉じた。


 ――そして。


 微かに、笑った。


「……うん」


「それでいい」


 その言葉の意味。


 回収者が理解するより早く。


 遠くから。


 “二つの気配”が、急速に近づいてくる。


 回収者の目が、わずかに動く。


「……来たか」


 ミナが、ゆっくり目を開ける。


 ボロボロのまま。


 それでも。


「時間、稼いだよ」


 小さく、呟く。


――一人では勝てない。でも、一人でも戦える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ