第20話「呼ばれた戦い」
朝。
空気が、少し軽い。
昨日の戦いが嘘みたいに。
三人は、歩いている。
土の道。
どこへ行くわけでもなく。
「腹減った」
リオが言う。
いきなり。
ミナが呆れる。
「さっき食べたでしょ」
「足りねぇ」
ガイが、横から言う。
「燃費悪すぎだろ」
「戦った後なんだから仕方ねぇだろ」
軽口。
いつもの空気。
でも。
ガイの目は、少しだけ鋭い。
リオを、見ている。
そのとき。
ドクン。
リオの足が、止まる。
「……あ?」
ミナが振り返る。
「どうしたの?」
リオが、眉をしかめる。
「……なんか、来る」
ガイの表情が、変わる。
「気配か?」
リオが、首を振る。
「違う」
胸を押さえる。
「……中が、反応してる」
その言葉。
二人が、理解する。
“残ってるもの”。
そのとき。
ゴォォォ……
地面が、低く唸る。
風が、止まる。
空気が、重くなる。
ミナの顔が、強張る。
「……なに、これ」
ガイが、周囲を見る。
そして。
一点を、見据える。
「……来るぞ」
次の瞬間。
ドンッ!!
地面が、弾ける。
土煙。
その中から——
“影”。
ゆっくりと、現れる。
人の形。
でも。
どこか歪んでいる。
黒い。
輪郭が、揺れている。
そして。
顔が、ない。
「……なんだ、あれ」
リオが、低く言う。
その瞬間。
影が、動く。
消える。
速い。
「――っ!!」
ガイが、割り込む。
バキィッ!!
拳と拳が、ぶつかる。
衝撃。
地面が割れる。
ガイが、歯を食いしばる。
「……力、重いぞ」
影は、何も言わない。
ただ。
じっと、リオを見ている。
いや。
“見ているように感じる”。
ミナが、震える声で言う。
「……リオを、見てる」
リオの背中に、嫌な汗が流れる。
そのとき。
ドクン。
リオの中の“何か”が、反応する。
強く。
共鳴。
「……っ」
頭を押さえる。
影が、ゆっくりと口を開く。
ないはずの口。
裂けるように。
そして。
声が、出る。
「……見つけた」
低い。
歪んだ声。
ミナの顔が、青ざめる。
「喋った……」
ガイが、低く言う。
「下がれ」
リオが、顔を上げる。
影を、見る。
「……お前、何だ」
影が、一歩近づく。
空気が、歪む。
「……それを」
「……返せ」
リオの瞳が、揺れる。
理解する。
「……これか」
胸を押さえる。
中にある、“残り火”。
影が、頷くように揺れる。
「……それは」
「……我らの、核だ」
ガイの目が、鋭くなる。
「……複数か」
影の背後。
ズズッ……
地面から、さらに“影”が現れる。
一体。
二体。
三体。
同じ形。
同じ歪み。
ミナが、一歩下がる。
「……増えてる」
リオが、拳を握る。
ドクン。
また、反応する。
中の“何か”が。
「……来るな」
低く呟く。
自分に。
でも。
止まらない。
影たちが、一斉に動く。
「回収する」
一斉に、襲いかかる。
ガイが、前に出る。
「チッ……!」
拳を構える。
リオが、歯を食いしばる。
「……俺の中、狙ってんのかよ」
ミナが、叫ぶ。
「二人とも!!」
戦いが、始まる。
ただの敵じゃない。
“リオが呼んだ戦い”。
逃げられない。
切り離せない。
その証明のように。
リオの影が、大きく揺れる。
黒が、広がる。
少しずつ。
確実に。




