第16話「届かない」
消えた。
怪物が、視界から消える。
「右!!」
リオが叫ぶ。
ガイが、即座に反応する。
拳を振り抜く。
――空振り。
「なっ……」
次の瞬間。
ドゴォッ!!!
ガイの体が、吹き飛ぶ。
地面を転がる。
「ぐっ……!!」
リオが踏み込む。
だが。
見えない。
どこにいる。
「……くそ」
そのとき。
ミナの目が、動く。
「上!!」
叫ぶ。
リオが、反射で跳ぶ。
直後。
地面が、抉れる。
“さっきまでいた場所”が消える。
「……見えてるのか!?」
リオが叫ぶ。
ミナが、首を振る。
「見えてない……でも」
息を整える。
「“来る場所”が分かる」
沈黙。
ガイが、立ち上がる。
口の端から、血。
「……いいじゃねぇか」
笑う。
戦闘の顔。
「それ、使える」
三人が、再び構える。
「俺が前に出る」
リオが言う。
「ミナは読む」
「ガイは――」
ガイが、割り込む。
「全部ぶっ壊す」
ニヤリと笑う。
「了解だ」
その瞬間。
怪物が、動く。
「左後ろ!!」
ミナの声。
リオが、回り込む。
ガイが、踏み込む。
挟む。
「いけぇぇ!!」
二人の攻撃が、同時に叩き込まれる。
ドォンッ!!!
衝撃。
手応え。
「やった――」
その瞬間。
“ズルッ”
違和感。
ガイの腕が――
“消える”。
「……は?」
肘から先が、ない。
喰われている。
「ガイ!!」
リオが叫ぶ。
だが、遅い。
怪物の“穴”が、ガイの腕を飲み込んでいる。
「っ……!!」
ガイが、歯を食いしばる。
だが、引かない。
「離れろ!!」
リオが踏み込む。
全力の一撃。
ドォォン!!!
怪物が、吹き飛ぶ。
ガイの腕が、解放される。
――が。
「……チッ」
肘から先。
“ないまま”。
再生しない。
リオの顔が、固まる。
「……おい」
「お前……」
ガイが、腕を見て。
笑う。
「大したことねぇよ」
強がり。
でも。
血が、止まらない。
ミナが、震える。
「……違う」
「これ……普通じゃない」
怪物を見る。
「削られてる……存在ごと」
沈黙。
理解する。
“再生できないダメージ”
ガイが、舌打ちする。
「クソゲーかよ」
それでも、前に出る。
「まだ動ける」
その瞬間。
怪物が、こちらを見る。
“理解した目”。
次の標的。
ミナ。
「――っ!!」
リオが、動く。
ガイも、同時に動く。
だが。
遅い。
怪物が、消える。
「ミナァァ!!」
叫び。
ミナが、固まる。
動けない。
その瞬間。
ガイが、割り込む。
残った腕で、受ける。
ドゴォッ!!!
体が、沈む。
地面が、割れる。
「……っ……!!」
膝をつく。
それでも、倒れない。
「……触んな」
低い声。
息が、荒い。
「そいつは……」
視界が、揺れる。
それでも。
「……俺の、仲間だ」
その言葉。
リオの中で、何かが切れる。
「……もういい」
低く、呟く。
ミナが、振り向く。
「リオ……?」
リオの目が、変わる。
怒り。
後悔。
恐怖。
全部、混ざる。
「……届いてねぇんだよ」
拳を、握る。
震えている。
「俺の力じゃ」
「守れてねぇ」
一歩、踏み出す。
「全部、足りねぇ」
地面が、軋む。
空気が、震える。
ミナの目が、大きく開く。
「……リオ?」
違う。
いつもの気配じゃない。
ガイも、顔を上げる。
「……おい」
「それ――」
リオが、顔を上げる。
その目。
“何かに触れた目”。
「……まだ、上があるんだろ」
誰に言っているのか分からない。
でも。
体の奥から、“何か”が溢れる。
ドクン。
ドクン。
心臓の音が、響く。
空気が、歪む。
怪物が、初めて“警戒する”。
一歩、下がる。
ミナが、震える声で呟く。
「……何、それ」
リオが、笑う。
初めて。
「……知らねぇよ」
その瞬間。
“何か”が、弾ける。
――ドンッ
視界が、白く染まる。




