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第四十八話 安命院での療養——治す者が、治される側へ

第四十八話

安命院での療養——治す者が、治される側へ


——これは、わたくし曲直瀬やよいが、

安命院に運び込まれ、

初めて“治される側”として横たわった日の記である。


---


◆ 【序章】安命院の天井

目を開けると、

見慣れた木の天井があった。


(……ここ……

 安命院……

 わたしの……院や……)


しかし、

身体は重く、

足は痛み、

肩は動かない。


(……わたし……

 患者になってしもうた……)


その現実が、

胸にじわりと広がった。


---


◆ 【第一幕】弟子たちの慌ただしい声

襖が開き、

弟子の少女・お凛が駆け寄った。


「やよい様!

 目ぇ覚めはったんですか!」


続いて、

若い見習いの弥助も顔を出す。


「よかった……

 本当に……よかった……」


二人とも涙ぐんでいた。


やよいは微笑もうとしたが、

頬の傷が痛んだ。


「……ただいま……

 心配かけたね……」


お凛は首を振った。


「心配なんて……

 当たり前です!

 やよい様は……

 うちらの……先生なんですから!」


その言葉に、

胸が熱くなった。


---


◆ 【第二幕】尼僧の見守り

尼僧が静かに入ってきた。


「やよい殿。

 無事で何よりです」


やよいは手を伸ばした。


「尼さま……

 助けてくださって……

 本当に……」


尼僧はやさしく手を握った。


「あなたは多くの命を救ってきた。

 今度は、救われる番です」


やよいの目に涙がにじんだ。


(……救われる番……

 そんな日が……

 わたしにも来るなんて……)


---


◆ 【第三幕】治療の時間

安命院の医師・お蓮が入ってきた。


「やよい様。

 動いたらあかんよ。

 足首は腫れ、

 肩は打撲、

 顔の傷も深い」


やよいは苦笑した。


「……自分の院で……

 自分が治されるなんて……

 情けないね……」


お蓮は首を振った。


「情けない?

 そんなこと言うたらあかん。

 医も人や。

 倒れることもある」


「倒れたとき、

 支えてくれる人がいるかどうかが……

 大事なんやで」


その言葉は、

やよいの胸に深く染みた。


---


◆ 【第四幕】やよい、初めて“患者の気持ち”を知る

夜。

安命院の静かな部屋で、

やよいは布団の中で目を閉じた。


(……痛い……

 動かれへん……

 息をするだけで肩が響く……)


(……患者さんは……

 いつもこんな痛みの中で……

 わたしの言葉を聞いてくれてたんや……)


(……わたし……

 まだまだや……)


やよいは、

医としての自分の未熟さを

初めて“身体で”知った。


---


◆ 【第五幕】弟子たちの夜番

お凛がそっと入ってきた。


「やよい様……

 痛み、強うないですか……?」


やよいは微笑んだ。


「大丈夫やよ……

 ありがとう……」


お凛は布団を直しながら言った。


「やよい様が倒れはったと聞いて……

 うちら……

 怖かったんです」


「でも……

 帰ってきてくれはった……

 それだけで……

 十分です」


やよいは涙をこらえた。


(……帰ってきたんや……

 わたし……

 この院に……)


---


◆ 【終章】静かな決意

深夜。

痛みで目が覚めたやよいは、

天井を見つめながら思った。


(……わたし……

 もっと強くならなあかん)


(医としても……

 人としても……)


(この院で……

 もう一度、立ち上がる)


外では、

郡山の冬の風が静かに吹いていた。


——こうして、

わたくしは安命院で療養しながら、

医としての新しい一歩を

静かに踏み出したのである。



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