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第21話∶王子脱ぐ、そして商人動揺する。なお第三者乱入あり


暗闇の中、金色の瞳が俺を見つめていた。


「……必ず見つけ出す」


静かで、けれど絶対的な声。


(……誰だ? 俺は、誰を待っている?)


胸が締めつけられる。


「お前がどこにいようと」


月明かりに照らされた龍王が、俺の手を取る。


その瞬間——世界が崩れた。


「っ……!!」


目を開くと、見慣れた天井。

荒く息をつきながら、顔を手で覆う。


(……なんだ、今の夢……)


確かに"俺"の記憶じゃない。

なのに、奥深くに刻まれている感覚がする。


ふと、手の甲を見る。

何もない。


(……夢、だったのか?)


「キース!」


突然、小さな重みが膝に飛び乗る。


「お前……」


金色の瞳が俺を覗き込む。


(……夢の中の、あの男と同じ瞳……?)


 


「良かった! 大丈夫?」


ナディアの声に、ゆっくりと顔を向ける。


「あなた三日も寝てたのよ!」


「……三日?」


驚いて起き上がろうとすると——


「無理しないで!」


ナディアが慌てて制止する。


(……三日間も?)


息を整える俺を見て、ナディアが笑った。


「でも、本当に良かった……ずっと、ずっと心配してたんだから」


その表情は、明るいけれど、どこかホッとしていて——

まるで、俺を"大切な何か"と認識しているようで。


「……お前、泣くほどか?」


自分でも驚いたように、ナディアは目を擦る。

「あれ……? 変ね……涙が止まらない……」


俺が呆れて息をつくと、ナディアは涙を拭いながら笑った。

「キース、リカルドを助けてくれて……ありがとう」


(……なるほど)


「リカルドはお礼を言いたがってたけど、今朝、商談のためにルーヘルムを出発したの」


控えていたセツが静かに告げる。


「ヴェルフェン商国はこの恩を決して忘れない、との伝言です」


「大げさだな」


俺が肩をすくめると、ナディアは真剣な眼差しで言い切った。


「違うわ。帝国と戦うなら、キースには味方が必要でしょ?」


(……なるほど)


本気で俺を支えようとしている。その気持ちが、なぜか心に響いた。


「……レオンとディアナは?」


「ディアナ様は、同行が王にバレてお叱りを受けに行っております」


「……はは」


妙に納得した。


「レオンは?」


「帝国の動きが慌ただしく、対応に追われています」


俺は軽く息をついた。


(みんな、動いてくれてるんだな……)


そのとき、セツが

「汗をかかれたでしょう。着替えをお持ちします」


そう言って部屋を出ていった。



---

 

部屋には私とキースの二人だけが残った。

  

「……ふぅ」

キースは無造作に上着を脱ぎ、放った。


「……は?」

突然のことに、私は固まった。

 

汗に濡れた引き締まった上半身。無駄のない筋肉のライン。

そして、胸元で光るレギオンとの契約のペンダント。


(……待って、これは商機? 売れる? ……いや違う!!)

  

「……どうした?」


キースが平然とした顔でこっちを見る。


「……ど、どうしたじゃないわよ!! なんで突然脱ぐのよ!」


「なんでって……汗で気持ち悪くてさ」


(だからって突然脱ぐなーーーー!!)


「お前、顔赤いけど、大丈夫か?」


「~~~っ!!」


思わず顔を背ける。


(……まずい。なんか、変に意識してる気がする)


ちらりとキースを見ると、膝の上のレギオンを撫でながら、何か考え込んでいる。


そのとき——


「おまえは本当にお前なのか?」


「……え?」


突然、レギオンがぽつりと呟く。


「……なんだ、それ」


「知らない。でも、そう言わなきゃいけない気がした」


金色の瞳が、じっとキースを見つめる。


私はさっぱり意味が分からなかったが、とりあえずこの妙な空気を払うために、軽く咳払いをする。


「ちょ、ちょっと! 上着くらい羽織ったらどうなのよ!」


「なんで?」


「なんでって……」


言葉に詰まる。


ちょうどそのとき——


「お待たせしました」


部屋の扉が開き、セツが戻ってきた。


(よし、これで話題が変わる! 助かった!!)


……と思ったのに。


「背中は自分では拭きにくいので、ナディア様、拭いて差し上げてくださいますか?」


「……は?」


何を言っているのよ、セツ!


キースは特に気にする様子もなく、当然のようにそのままの体勢でいる。


(えええ……これ、やるしかない流れ!?)


仕方なく、タオルを握る。


(……落ち着け、私は商人。冷静に対処すれば問題ない。)


震える手で、そっとキースの背中を拭う。


(……近い。)

目の前に広がるのは、しなやかに鍛えられた背中。

銀髪が首筋にかかり、思ったよりも肌が熱い。

それに、なんかこう……無防備で……。


(いやいや、ダメでしょ。これは色々とダメなやつでしょ。)


そう思いつつも、妙に意識してしまう自分がいる。


(おかしいわね、今までこんなことで動揺することなんてなかったのに。)


そんなことを考えていた、そのとき――


バンッ!!


「ちょっとぉおお!!! アンタなにしてんのよ!!」


扉が勢いよく開かれ、ワインレッドの瞳が怒りに燃えていた。


(ディアナ……!?)


「ナディア! キースから離れなさい!!!!」


怒気をはらんだ声が、部屋中に響き渡った。


私は深く息を吐く。


美しくて価値の高いものに、商人が惹かれるのは当然のこと。

それだけ。

優れた品を見抜くのは、私の本能だもの。

 

でも、ディアナに向けたキースの笑顔を見た瞬間——


胸の奥が、ちくりと痛んだ。


(……何よ、これ。別に気にすることじゃないでしょ?)


なのに、視線をそらしたくなった。

 

 

私は軽く肩をすくめ、ひとまず考えるのをやめた。

 

(……ま、そのうちわかるかしらね。)




 

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