5 煤かぶり姫と図書館
***
何がどうしてこうなってしまったのだろうか。
図書館にて、教科書と本、ノートを広げるベルティアの目の前には、今し方恋人同士となった美丈夫が若干1名。
勝手にベルティアの前を陣取り優雅に教本を開いている。
視線に気付きにっこりと顔を上げる彼に、つい『うえぇっ』という何とも言えない表情を向けてしまったベルティアは、正直なところ1番状況が捉えていない。
「こんな奥まったところにも椅子と机って設置されているんだね。西向きだし、夕方の学習にはもってこいだ」
爽やかに告げてくる美丈夫、エドワードにベルティアはとりあえず当たり障りのない返答を行うことにした。
無視して機嫌を損ねても面倒臭い。
「………そうですね」
「君は毎日ここで放課後に勉強しているのかい?」
「………はい」
「偉いね。僕には無理そうだ」
「………そうですか」
肩をすくめる仕草さえも華のある彼は、そう言いつつも入試から現在に至るまでほぼ全てのテストで満点近くの点数を取り続け、首席たるベルティアの次の席、つまり次席を取り続けている。
方便ではあろうが勉強していないのならば、彼は天才なんて言葉が生易しく聞こえるほどの才能の持ち主だ。
「それは何をやってるの?」
「………復習です」
「へぇー、なんで?」
「………わからなかったからです」
「どこが?」
「………ここです」
面倒臭さにそろそろ限界が来そうながらも、どうせ明日には破局する運命、今日だけの我慢だと言い聞かせ、ベルティアは彼にノートと教本を見せる。
「あぁ、ここか。ここの内容は卒業試験には出ないから勉強する必要ないよ」
「………?」
「ん?どうしたの?」
「いえ、何も」
引っ掛かりを覚えながらも、話が途切れたのをいいことに勉強へ集中する。
「ん?なんでそこ勉強するの?試験には出ないってば」
集中しようとしたのに、なんで邪魔するかな?
面倒臭さよりも我慢への限界が先に来そうなベルティアは、溜め息を飲み込み返事をする。
「………知識は無くすことのない財産です。わたくしは試験の結果のためではなく、知識を得るために勉強をしているのです。試験結果はあくまで副産物であり、最も重要なことは知識を余すことなく身につけることです」
「―――」
瞠目した彼に、ベルティアは瓶底眼鏡の奥から視線を寄越す。
「もう、よろしいですか?」
「あ、あぁ、」
困惑したように黙り込んだエドワードを放って、ベルティアは勉学に集中する。
結局、今日は、いつもの3分の2しか勉強が進まなかった。
そして、結局わからなかった部分は半分までしか理解できなかった。
散々すぎる1日だったと綴っておこう。




