22 煤かぶり姫に送る、光の貴公子からの贈り物
言わずもがな絶品だった朝食をふたりで慌てて食べ、ベルティアとエドワードは、使用人に見送られて急かされるように馬車に乗り込んだ。
理由は簡単、時間が諸々押してしまった関係で、現在、遅刻待ったなしの時刻であるからである。
少し荒々しい馬の嘶きが聞こえ、馬車はグングンスピードを上げ始めた。
揺れる馬車の中、エドワードが1つの箱を取り出す。
「ベルティア、一昨日の謝罪だ。受け取って欲しい」
手渡された箱を、ベルティアは拒めなかった。
そのぐらい真っ直ぐに、彼の視線はベルティアのことを射抜いていた。
「………謝罪を受け入れます。ですから、これ以上貴方が罪悪感を抱く必要はございません。そもそも、昨日の看病で、貴方は十分にわたくしに誠意を見せてくださいました」
「………そうか」
少し寂しそうに頷いた彼のそわそわした様子に、ベルティアは少し首を傾げた。
「何か?」
「――………、………学校で使えるものだし、普段使い用に購入したから、その………、」
「………開けても?」
「あぁ」
嬉しそうに、けれど、緊張したように頷いた彼に、ベルティアはくすっと笑い箱を開けた。
中には2つのジュエリーが収まっていた。
美しすぎるそれらは、ジュエリーの相場に全く詳しくないベルティアにも、きっととても高価な物であると予測することができた。
金のバレッタに、繊細なカットの施されたアメジストの小粒のブローチ。
「………高価すぎます」
「っ、すまない………」
項垂れる彼に、自然と口元が緩んだ。
「………大事に使います」
「あぁ」
ゆっくりとジュエリーを愛しみたいところだが、おそらく数分もしないうちに学園に到着してしまう。
ベルティアは名残惜しさを押し込み、バレッタとブローチを手探りで身につける。
「似合いますか?」
「あぁ、とても」
煤かぶりが何をしたって煤かぶりだろうに、感嘆したように答えてくれたエドワードに、ベルティアの気分はとても良くなった。
今日1日誰かに意地悪をされても、ベルティアは機嫌よく過ごすことができるだろう。
この時のベルティアは、おそらくまだ寝ぼけていたのだ。
今の自分の状況を甘く見積もってしまうほどに。
だからだろう。
ベルティアは、自分で自分の首を絞めることになった。
煤かぶりとして影を生きてきたにもかかわらず、突然陽の当たる場所へと放り込まれるような事態へと追い込まれてしまった。
馬車から降りた瞬間に盛大に、普段よりも色濃く浴びることになった忌避と嫌悪、そして憎悪を、ベルティアは一生忘れないだろう。




