18 煤かぶり姫の復活
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次に目が覚めた時には、次の日の早朝だった。
身体からは気怠さも熱っぽさも消えており、万全とは言い難いが、学園に通うには問題がないレベルには回復していた。
ベッドサイドの椅子で眠っているエドワードを横目に、ベルティアはひっそりと起き出した。
足音を立てぬように注意を払い、部屋の外へと抜け出す。
寝室同様暗色でまとめられた上品な廊下でキョロキョロと周囲を見回していると、焦茶の髪をした、おそらく使用人であろう女性と目が合った。
年はおそらく………、結構上。
けれど、白髪はまだ少ない、そのぐらいの年頃の方だ。
「ベルティアさま?」
「………帰宅したいのですが」
ダメ元で聞いてみるが、やはりダメらしい。
おっとり首を振った彼女は、困ったように微笑んだ。
「坊っちゃまが悲しみますので。さあさ、お風呂はいかがですか?先程沸かしたばかりですよ」
汗を沢山かいたことにより若干身体が気持ち悪いベルティアは、とりあえず、促されるがままにお風呂に入った。
淡いピンクの薔薇の花弁が浮かぶ泡風呂は、正直とても気持ちが良かった。
石鹸からはきつい花の香りもなく、優しいシャボンの香りのみがし、心が温かく洗われた。
使用人の女性は温かな人だった。
平民階級出身だと言った彼女は、ベルティアの髪に一切の忌避感を感じている様子もなく乾かすのを手伝ってくれた。
香油を塗り込みながら艶やかに乾かす腕前は、流石は公爵家お抱えの使用人と言わざるを得ず、また、髪を結うのも勿論上手かった。
複雑な編み込みを施しながらハーフアップへと纏められた髪に非常に満足をしていると、着替えを手渡された。
女性ものの制服に、エドワードが遊び人であったことを悟り、なんとも言えない表情をせざるを得なかった。
促されるがままに、ライトブルーのブラウスにフレアのスカート、短めのジャケットを羽織り、リボンを結ぶと、あまりにもピッタリで、すごく驚いた。
それに何より、
「………可愛い」
スカートの裾とジャケットの袖に紺糸と銀糸で施された百合の刺繍に、ベルティアの瞳は奪われてしまった。
「ピンブローチをお付けさせていただきますね」
金の花形のブローチは、首席の生徒の証。
ちなみに、銀が次席、銅が三席を表しており、1年生が水仙、2年生が百合、3年生が薔薇と決まっている。
ベルティアは3年連続首席をコンプリートしている為、全ての花の金のブローチを持っている。
「このジャケット、ボタンホールがあるのですね。珍しい」
「坊っちゃまがわざわざ開けるようにご命じになられたそうですよ」
「へぇ………、」
ここ数年、女子生徒でブローチを手に入れたのはベルティアだけだったはずだが、どこかで記憶違いを起こしてしまっているようだ。
「この制服、お気に召されましたか?」
「えぇ、とっても。返したくなくなってしまうぐらいには」
女子同士、そしてベルティアを嫌っていない人との会話は、こんなにも楽しいものだったのかと思っていると、唐突に扉が開け放された。
「………坊っちゃま、はしたないですよ。ベルティアさまがお着替え中だったらいかように責任を取るおつもりだったのです?」
やってきたのは余裕を失ったエドワードだった。
髪をボサボサに乱し、必死に走ってきたであろう彼の初めて見る姿に、ベルティアは息を飲んだ。
「綺麗だ………」
「坊っちゃま!!」
「!?」
彼が呆然と呟き、ベルティアに向かってふらふらと歩いてきて、そしてベルティアを力強く抱きしめた。
「あぁ、幸せな夢だ。大好きなベルティアがこの腕にいるだなんて………、」
背骨が痛みを訴えるほどに強く抱きしめられたベルティアは、脳がショートを起こしてしまうぐらいには大混乱を起こしていた。
(な、な、何が起きているの!?)




