17 光の貴公子の失敗
ベルティアが何故教師にわからない箇所を尋ねないのか、それは教師が尋ねることを彼女に許していないからだと1限で気づいてからは、彼女が疑問に思うであろう箇所を授業で質問しまくり、なお分からなかった部分は授業終了後に教師に尋ねて回った。
これほどまでに授業に集中した日は今までになく気疲れしてしまったが、ベルティアに喜んでほしくて、彼女の得意分野に関する討論が頻繁に行われているコーヒーショップに、エドワードは放課後彼女を連れて行った。
けれど、これが大きな間違いだった。
目を離した自分が全面的に悪いし、彼女への扱いの酷さを軽く見ていた自分に非がある。
教科書の扱いを聞いた時点で気がつくべきだった。
初めての外デートだと舞い上がっている場合ではなかった。
コーヒーと雑巾で汚された彼女を引っ張り出して、どうしようもないほどの怒りに自らを支配されて、だからだろうか、エドワードはまた間違えてしまった。
でも、間違えたからこそ、久しぶりに彼女の相貌を拝むことができた。
想像の数倍、否、数千倍美しく可憐に成長したベルティアは、とても美しかった。
コーヒーに濡れながらも波打つ漆黒の艶やかな髪が美しいのはもちろんのこと、黒髪だからこそ映える白磁のような汚れを知らぬ肌、そして何よりも美しいのは漆黒に縁取られた宝石のように煌めく知的なアメジストの瞳。
僅かに釣り上がった猫を彷彿させる瞳に真っ直ぐ射抜かれた瞬間、エドワードの心は早鐘を打った。
制服の洗濯の為に帰ると言った彼女は、エドワードを置いてさっさと帰って行った。
嫌なことをしてきた相手と長時間一緒にいるのは苦痛に感じさせてしまうと判断したエドワードは、その足で学園の制服制作を請け負っている婦人服の店と宝石店に向かった。
ベルティアのサイズで自分の要望を含ませた制服を制作させる。
スカートの丈は変更せず、フレアの広がりとより美しい形への変更、裾に同色で百合の刺繍をプラスさせる。
ブレザーのジャケットは腰までの短い丈に変更し、最優秀生徒の証たるバッヂがもっとつけやすくなるように襟へのボタンホールを最初から開けてもらった。
ブラウスはとても悩んだが、悩みに悩んだ末、淡いブルーのカッターシャツをブラウスに仕立て直してもらった。
自分用のカッターも購入した。
制服は明日の朝には屋敷に届けられると言われ、少し安心した。
これで、もし制服にシミが残っても大丈夫だ。
宝石店では3つのものを購入した。
1つ目はベルティアの髪飾り、2つ目はベルティアの胸元のリボンのブローチ、3つ目はベルティアのブローチと揃いのデザインのタイピン。
非常にこだわった。
髪飾りは彼女の凛とした上品な美しさに合うよう、飾りを一切排した純金の細いバレッタ。
ブローチは、彼女と僕の瞳をイメージした金の台にアメジストが嵌め込まれた小粒のもので、タイピンが揃いであるものを。
明日渡そうと決意し帰宅したエドワードは、次の日、まさか熱に冒された彼女が必死になって学園に登校しようとしているのを自宅へ連れて帰る羽目になるとは思っても見なかった。
そして、弱っている彼女につい気持ちが溢れて要らないことまで喋ってしまうことになるとも思っても見ていなかったのであった。




