↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/13

#03 魔王を崩壊?

「魔王の何かを崩壊させれば、金貨1000枚が貰えるらしいよ~」


 冒険者ギルドを訪れたキリオとノンタ。そこでノンタが何やら物騒なスペシャルクエストの話を聞きつけた。


「魔王? 崩壊? ……なんか色々やばそうだな」


 眉をひそめてキリオが確認する。


「で、何を崩壊させるんだ?」


「さあ~、そこはよく聞こえなかったんだよね~」


 ノンタはのほほんとした顔で続ける。


「まあ~、魔王の剣とか宝……または魔王城とか? とりあえず、行ってみようよ~」


「正気か?」


 キリオが驚いた顔で声を上げる。


「異世界来たばっかりで、いきなり魔王? それってレベル1でラスボスに挑むようなもんだぞ?」


 諭すように言うキリオに対し、ノンタは肩をすくめた。


「でも~、魔王の顔を拝むだけでも記念になるし~。行ってみてヤバそうなら、引き返せばいいって~」


「記念って、そんな適当な……」


「え~俺たち、賞レースとかもだいたいそんな感じだろ~」


「お前、記念で受けてたのか? そんなんだから、落ちまくってんだろうが!」


 過去のお笑いコンテスト、予選落ちを繰り返してきた苦い記憶……思わずキリオのツッコミ声も大きくなる。


 だがノンタは気にも留めることなく、くるりと踵を返し扉に向かう。


「よ~し、一千万! じゃなかった、金貨一千枚目指して、レッツゴ~♪」


 そのまま、そそくさとギルドを出ていこうとするノンタ。


「おい! なに勝手に決めてんだよ!」


 キリオは慌ててその背中を追った。

 

 魔王城を目指し、石造りの建物が並ぶ賑やかな通りを進む二人。

 行き交う人々──いや、人だけではない。ゴブリン、ドワーフ、エルフ。さらに獣人やリザードマンまで、多様な種族があたり前のように、街に溶け込んでいた。


 道行く人に場所を尋ね、歩き始めてわずか数分。視界の先に、現れた巨大な建造物をノンタが指さした。


「どうやら、あれが魔王城みたいだね~」


「近っ! 駅前のコンビニか!」


 キリオが思わず声を上げる。


「それ、微妙かも~」


「え? 何だよ急に。こんな所で、ツッコミのダメ出ししなくてもいいだろ……」


 ノンタの思わぬ反撃に、キリオはもごもごと言葉を返した。

 

 紋章の描かれた旗が風になびく石造りの城壁、その奥に高くそびえる魔王城。大きく開かれた城門、その前に直立する衛兵たち。襟の立った黒い制服に身を包み、腰には剣。そして頭に生えた一本角。

 さすが魔王城と言うべきか……だが、意外なことに流れる空気は威圧的ではなく、むしろ──


「……なんか、普通に人多くない~?」


 ノンタの言う通り、周囲には大勢の人々が行き交っている。若い男女や親子連れの笑い声でざわめき、殺伐とした気配などは微塵もなかった。


「魔王城ってこんななんだ~」


 周囲を見回し感心するノンタ。


「これでいいのか魔王城感があるけどな……」


 キリオは複雑な表情を浮かべて言った。


 その時、ノンタが派手な文字で書かれた立て看板を見つけた。


「見て~、あの看板。本日、魔王城、一般公開って書いてあるよ~」


「いや、どこの観光地だよ!」


 キリオが間髪入れずツッコんだ。


 そのまま二人は誘われるように城内へ。模擬店が立ち並び、料理の匂いが漂う。笑顔で食べ歩き、浮かれた様子の人々や亜人たち。


 キリオのぼやきが止まらない。


「なんか酒飲んで騒いでるやつまでいるし、まるで花見かお祭りじゃねーか」


 やがて視界の先に、ひときわ賑わう一角が現れる。


「なんだろあそこ~?」


 指さすノンタ。


「確かに……すげー盛り上がってるな」


 キリオも興味を引かれる。


 時折聞こえてくる笑い声。二人はその声をたどり、人混みをかき分け、奥へと進んだ。やがて視界が開けると、そこにあったのは、人の目線ほどの高さで大きく張り出した空間──それは、まるでステージ。その上で何かの出し物を演じる人の姿が見えた。


 ステージのさらに上、上空を見上げたキリオが気づいた。


「ん? 上の垂れ幕に何か書いてあるけど」


 顔を上げたノンタが読み上げる。


「え~何々、スペシャルクエスト……大魔王様の腹筋崩壊! で、金貨1000枚~!」


 一瞬の沈黙……。


「いや、崩壊ってそっちかよ!」


 今日一番、声を張ったキリオのツッコミがさく裂した。


 一方ノンタは妙に安心したように口を開く。


「でもよかったね~、異世界にも“お笑い”があったみたいで~」


 だが、それを聞いたキリオは、深刻そうな表情を浮かべ、


「けどさー、大魔王だぜ、そんな大物を笑わせるって……」


 そう言いかけて、ノンタと目が合う。そして二人同時に、口を開いた。


「「それ、俺ら一番苦手なやつー!!」」


 スペシャルクエスト、そして崩壊の意味を理解した二人。どうやら目の前のステージで行われているのは、言わばお笑いコンテスト。

 だが──魔王どころか、大魔王という“絶対的な大物”を笑わせるなど、今の二人には高すぎるハードル。


 ノンタは大きくため息をついた。


「はあ……戻ろうか~」


「そうだな」


 キリオも、力なく答えた。


 肩を落とした二人、そっとその場を離れようとする。その時だった、背後から、二人に野太い声がかかった。


「なんだ、お前ら参加希望者か?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。