↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/13

#02 冒険者ギルドのクエスト

 事故に遭い、異世界へ飛ばされた芸人コンビ、ノンタとキリオ。草原の上で、いまだ状況に戸惑うキリオが、困惑ぎみに尋ねる。


「で? どうすんだよ。これから」


 一方のノンタは焦った様子もなく、おっとりした調子で答える。


「まずは、あそこの街を目指そうよ~」


 そう言って、前方に見える城壁に囲まれた、石造りの建物が並ぶ街を指差し言葉を続ける。


「まあ、セオリー通りなら、こういう場合は王様に会うか、冒険者ギルドに行くと決まってるし~」


「セオリー……、どこまでもベタだな」


 キリオがジト目でツッコミを返した。

 

 そのまま二人は街へ向かって歩き始める。大きな門をくぐり街の中へ。すると、ノンタが何かを見つけた。


「あっ! 見てみてあそこ~」


 指さす先、街の入り口近くに建つ大きな建物。木製の看板が掲げられ、そこにこう書かれていた。


『冒険者ギルド』


「都合良すぎだろ!」


 思わず声を上げるキリオ。さらに、あることに気が付いた。


「てか、文字読めるんだな?」


 彼の疑問に、ノンタはひらひらと手を振り答える。


「ノンノン、そこに疑問を持っちゃいけないよ~。異世界って、そういうものだから。文字も読めるし、会話だって、きっと普通に通じるんだよ~」


「まじか……ある意味、海外行くよりハードル低いな、異世界」


 半ば呆れたようにキリオはつぶやいた。

 

 そのまま二人は、その建物へ足を向ける。建物正面、丈夫そうな扉の前に立つ。


「やっぱりあれかな……中には屈強な冒険者であふれてたり?」


 キリオが扉を見上げながら言う。


「壁には依頼書がペタペタ貼ってあって~」


 とノンタが続ける。


「制服を着た受付嬢がお出迎え、みたいな……」


「でも、気をつけないとね~。荒くれ者の冒険者に絡まれたりするかもしれないから~」


「いや、そっちのパターンはいらないんだけど」


キリオが即座に否定すると、ノンタが鼻の下を伸ばしながら言った。


「まあね~。どうせなら、可愛い猫耳娘と鉢合わせとかってパターンがいいな~」


「相変わらず、お気楽なやつ……」


 そう言ってキリオはノンタをひと睨みしてから、


「いいか開けるぞ」


 緊張した声でそう言うと、一度眼鏡の中央を押し上げた後、扉の取っ手に手をかけた。ゆっくりと開いていく扉、すぐに、二人の耳に喧騒が届いた。


 室内は石造りの壁に囲まれた広い空間。使い込まれた木のテーブルがいくつも並び、その上には酒や食事が乱雑に置かれている。壁際には剣や槍などの武器が立てかけられ、掲示板には無数の依頼書が貼られていた。


 そして多くの人、ざわめき、怒号、笑い声。活気に満ちた、まさに“冒険者ギルド”そのものの光景が広がっていた。


「ベタだ……」


「ベタだね~」


 喧騒を前に立ち尽くす二人、それ以外の言葉が見つからなかった。


 キリオはゆっくり周囲を見渡し、安堵の声をあげる。


「見る限り、絡んできそうな荒くれ者は見当たらないな……。てか、なんかスゲー顔色悪いやつがいるけど!」


 テーブルに頬杖をつき、気難しい顔で、木製ジョッキをあおる一人の男。ノンタもちらりと視線を向ける。


「よく見て~。悪いのは顔色だけじゃなくて、全身だよ。きっと、あれはゴブリンだね~」


「マジか! さすが異世界! 亜人とかもいるんだな」


 改めてよく見ると、あちこちに人間以外の種族が混じっている。


 獣の耳や尾を持つ者。ずんぐりとした体格の小柄な男。筋骨隆々で牙を持つ者──知識通りなら獣人、ドワーフ、オークだろうか……様々な種族が、同じ空間で肩を並べていた。


「てことは、あそこにいる耳がとがった男は……」


 キリオの視線の先。長身で、すらりとした体躯。そして特徴的な、とがった耳。


 男に目を向けたノンタ、うなずきながら答える。


「そうだね……あれはきっとエルフだね~」


「おお、あれがエルフか……。しかし、よく見ると──」


 そこで言葉を止めたキリオ、だがノンタが容赦なく続ける。


「しょぼくれた顔してるね~」


「言葉に気をつけろよ……でも確かに、エルフってだいたいシュッとした顔してるイメージだけどな」


 キリオの言葉にノンタは肩をすくめて言った。


「ま~、全てがベタだと思うなってことだね~」


「それ、誰が誰に言ってるセリフだよ?」


 キリオの言葉を、ノンタはとぼけた顔で受け流した。


 その時、カウンターの奥から一人の女性が姿を見せた。制服を着た受付係──ヒロイン登場! かと心躍らせる二人。


 カウンター越しに立つ彼女は、制服の上からでもわかるスタイルの良さ……? はち切れんばかりに筋肉が盛り上がった二の腕。がっしりとした広い肩幅。別の意味で大きく厚い胸板。

 そのへんの男どもを圧倒する筋骨隆々で恰幅のいい女性だった。


「……あの人が、冒険者ギルドの受付嬢〜?」


 悲し気な声をもらすノンタ。


「みたいだな……」


「なんか違う~、もっとこう──」


 そう言いかけたノンタの口を、キリオが慌てて、手で押さえる。


「言いたいことはわかるが、それ以上言うなよ」


「どうゆうこと~?」


「こっちの世界のコンプラが、元いた世界より緩いとは限らないからな」


 諫《いさ》めるような目でノンタを見ながらキリオが注意した。


「面倒くさ~」


 小さな声でノンタがぼやいた。


 その時受付嬢が、ぎろりと鋭い目でこちらを見た。刺すような視線、思わず目を伏せるノンタとキリオ。


「……どうする? 受付する~?」


「いや……今日は止めとこうか」


 キリオが下を見ながら言葉を返した。


 出直そうかと扉へ向かうノンタとキリオ。近くのテーブルで話し込んでいた冒険者たちの声が、耳に入る。


「なんか今日、誰でも参加できる、スペシャルクエストがあるらしいよ~」


 話を聞きつけたノンタがすぐに反応する。


「スペシャルクエスト? どんな内容だ?」


「なんかね~、魔王の何かを崩壊させれば、金貨1000枚が貰えるらしいよ~」


「え? 魔王?」


 目を見開き、キリオは思わず聞き返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。