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21-C.再会

僕とレンは僕が作り出した空間の中ではるか昔の記憶を見下ろしている。知性のコロニーの保育施設。真っ白な空間で交わした僕とレンとスミコの会話。


幼いレンが話すことが言った。


「スミコちゃん。ダメだよ。俺たちは大人になったらこのコロニーのために働く立派な人になるんだ。こんな風に一緒に遊ぶことなんてできないんだぞ」


そうだった。レンは昔、スミコのことをちゃんづけしていたのだった。スミコと呼ぶようになったのは一体いつからなのだろう。

スミコが僕のほうを向いて


「ねえ、カケル。レンが意地悪言うの」


レンも同じようにして


「カケル。お前からも言ってやってくれよ。俺たちはコロニーで働くために大きくなるんだぞ」


と僕の言葉を待つ。

前に僕がこの夢を見たとき、僕はこの時の自分が何を言ったのか忘れていた。そのことはずっと頭の中に残っていて、小骨が喉に引っかかったようなもどかしさがあった。

それでも今はありありと思い出せる。


小さな僕は言った。


「そうだ。僕たちはコロニーの大きくするために働くんだ」


小さなレンが得心した顔で大きくうなづいた。

小さな僕が言った。


「でもそれはこれからも三人で楽しく暮らすためだよ」


小さなスミコが満面の笑みを浮かべた。


「そうよ。カケルの言ってることが正しい。ねえ、レン。あなたもそう思うでしょ」

「うん。そうだ。カケルが正しい。俺もこの三人で楽しく暮らすために働くよ」


宙に浮かぶレンはそれをただじっと見ている。何を思っているのかはわからない。

僕はレンにつかみかかった。そしてその目を強く覗き込んで言う。

ここからが正念場だ。


「レン、思い出せ。君が何のために戦っていたのか」

「それはこの、知性のコロニーのためで、俺は」


レンは目をそらして何か小さくこぼしただけだった。

僕は畳みかける。


「お前はスミコと勘違いじゃなければ僕のためにも戦っていたはずだ。お前もマテニが何をしようとしているか聞いただろう。このままじゃスミコも僕もそして、お前も何もできずに死ぬかもしれない。また核の冬がやってくるかもしれないからだ」

「今からでも遅くない。一緒にマテニのところに行こう。まだできることがあるはずだ」


レンが何かを決心したように僕を見る。

その口が開く瞬間、周りを囲む空間が元の知性のコロニーの大通りに戻った。

空間が消えた。もちろん僕が消したわけじゃない。


「うううううう」


レンがうなり声をあげながら頭を押さえてのたうち回っている。

パトリオが割り込んで言った。


『マテニからのインターセプトだ。レン・トキムラの洗脳が溶けかけたから慌ててその強度を上げたんだ』

『どうすればいい』

『カケル・ミスミ。俺たちにできることはない。あとは奴の意思次第だ』


できることはない。それでも僕の体は止まらなかった。レンに通った僕はその体に触れる。

そのまま苦悶の表情を浮かべるレンに叫ぶ。


「レン! 頑張れ! 今このときしかない。戻ってこい。スミコを救いたいならお前の手で帰ってこい!」


あきらめずにレンに叫び続けると、やがてレンの動きがゆっくりと止まった。

立ち上がった僕はレンに向かって手を差し伸べる。


その手をレンが強くつかんで立ち上がった。

それだけではない。レンが突然僕を強く抱きしめた。

それから言った。


「お前は俺の大切な幼馴染だ。でも俺はお前が嫌いだった」


すっと出てきた言葉。さすがにぎょっとしたけれど、それでも僕は受け止めることにした。

それがレンの心からの言葉だと思えたからだ。

僕はただ返した。


「うん」

「お前はずっと何かを見通したようなことを言っていて、スミコもお前を認めていて、しかもどこか俺の知らないところでずっと分かり合っているような気がした。それもとても深く」

「そんなことない。僕とレンとスミコ、三人でひとつだ」

「ああ。そうだ。あの時の記憶、俺はあれを見て思い出した。俺たちは俺たち三人のために戦えば、それでよかったんだ」


レンの言葉に涙が混じる。僕は笑ってその背中を何度か叩いた。

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