17-B.疑心
ランドとリンに知性のコロニーから脱出したことを通信で伝えると、二人と合流することとなった。
「じゃあ、スミコちゃんもいっしょなんだね。よかった」
少し涙ぐみながらリンが言った。
「そうだね。ひとまずは安心ってところかな」
その言葉に僕は努めて冷静に返した。まさかいきなり本当の病状を話すのは憚られた。
医療のコロニーが用意してくれたのは広めの一室。学校の教室からいきいきとした生命の気配をすべて抜き取ったような場所。僕たちはそこに集まった。何から何まで真っ白なもので構成されており、もう少し室内の明かりが強ければまぶしくて目を開けていられなかっただろう。ここには医療にかかわるものは何もないはずなのに、少し消毒液のにおいが鼻をくすぐる。医療のコロニーではどこもかしこも似たようなにおいがするのでだいぶ鼻が慣れてわからなくなってきてはいるのだが。
無機質なパイプ椅子に座って、ランドが言った。
「これからについてだが、それを考える前に一つ気になることがある。知性のコロニーは宣戦布告してからどうして何もしてこない。確かに武装のコロニーの長を暗殺したが、逆に言えばそれだけだ」
「パトリオ、何かわからないか」
パトリオが全員の脳内で言った。
『奴とて無限の計算資源を持っているわけじゃない。計算資源をあてにしていたところで邪魔をされた結果、計画に必要な計算能力を手に入れられずすぐさま行動に起こせないのだろうな』
パトリオの言葉を引き継いで僕は言った。
「スミコを助けに行ったとき、知性のコロニーで何かを作っているのを見た。マテニの計算能力は今それの建造にほとんど注がれているんじゃないかと思う」
「何か、とは?」
パトリオが僕の視界情報をランドとリンに共有した。
「これは、なんだろうね?」
「巨大な柱、それとも」
パトリオが画像の一部を拡大しながら
『解析したところ、こいつの全長は20m程度。また下部から核パルスエンジンのものと思われるエネルギー反応が検知された。したがってこの建造物、いや飛翔体を奴は飛ばすつもりだ』
それはつまり、とランドが口火を切った。
「ミサイル、ということか」
『おそらくは』
「もし、この飛翔体に核弾頭を積んだらどれほどの威力となる」
『計算するまでもない。ここらにはまた核の冬がやってくる。誰もそれを目にすることはないだろうけどな』
僕たちは押し黙った。知性のコロニーは僕たちを絶滅させるに足る力を着々とつけつつあるということだ。そこに一切の妥協はない。
ランドが立ち上がって大声で叫んだ。
「方針は決まったな。奴がそのミサイルを発射する前に知性のコロニーに突入し、奴を止める。これしかない」
「そう、だね。このままじゃみんな死んじゃう。このことを急いでレイさんやほかの医療のコロニーのみんなにも伝えなきゃ」
そのまま部屋を出ようとした二人に僕は言った。
「僕はマテニと交渉すべきだと思う」
二人の怪訝な視線が僕に突き刺さる。
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