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17-C.摩擦

知性のコロニーたるマテ二との対話によって戦争を回避する。その言葉にマテ二とリンは固まった。それからゆっくりと椅子に戻った。

どうやら話を聞くつもりはあるようだった。


「カケル君。もしあれが核ミサイルで、ここにそれが落とされたらみんな死んじゃうんだよ。だから今から絶対に止めないといけない。今そう話したばかりだよね」


リンの声は涙ににじんでいた。もとより感受性の高い女の子だ。もう実際にそうなってしまった時のことを想像してしまっているのかもしれない。

今度はランドが声を低くして


「どうして奴と対話する必要がある。奴は今、あの飛翔体にかかりきりでこちらに戦力を割く余裕がない。だったら今のうちに全戦力をかけて奴を叩き潰す。そうすれば話し合いなんかするまでもなく、知性のコロニーもあの飛翔体も奴から取り戻すことができる。これが今できる最善だ」


まさか本当のことを言うわけにはいかない。重病の幼馴染の願いをかなえるために戦争より短時間で済む方法をとっているだけだなんて。

僕は本心を吐露したくなる気持ちをぐっとこらえて


「確かに奴は今もっとも余裕がない。それでも奴に勝てるという保証があるわけじゃない。知性のコロニーには自律ロボットがたくさん。だから奴が別のことに集中しているからと言って戦力が大きく下がるというわけじゃない。それに仮に勝てたとしてもこちらの犠牲は多大になる。知性のコロニーは取り戻したが、コロニーが維持できませんでは話にならない。より犠牲の少ない対話の道を模索することを捨てちゃいけない」


これは詭弁だろうか。自分でもよくわからなくなっている。

それでも一定の説得力はあったようで、ランドは上を向き、大きく息を吐いた後しばらく考え込んだ。目の前にいる変人を前にどうしたらよいのか考え込んでいるのか。

それからランドはあーと歯切れの悪い言い方で切り出した。


「あれと対話できるという保証はあるのか」

「事実僕とパトリオは知性のコロニーの心理調整局で奴と対話した。そこで奴は単に暴走しているわけじゃなく、何かしらの目的をもって動いている。そう感じたんだ。対話の余地はあると思う」

「その目的に手を貸す、ということか?」

「それは目的次第だ。でもそれを知る前に対話を芽を摘むということはすべきではないと思う」

「あいつにそんなつもりがあるならどうしてあんなミサイルじみたものを作る」

「それは」


僕は一瞬言葉によどんだ。


「そもそもあれはミサイルじゃない。もっというとミサイルかどうかわからないだろう」

「でなければあれはなんだ」

「わからない」


ランドは大きくため息をついた。話にならないとでもいいだけだった。

僕は負けじと続けた。


「知性のコロニーと医療のコロニーの距離はせいぜい車で数時間だ。そんな距離を飛ばすのに核パルスエンジンなんてものつける必要があるか? それに仮に核爆発が医療のコロニーで起きたらこの距離感じゃ知性のコロニーだってただじゃすまない。こんなのほとんど自爆だ」

「だから奴には俺たちを滅ぼす以外の目的があって、それに手を貸すことで共存できる可能性がある、と。言いたいことはそれで全部か?」


僕は黙ってうなづいた。するとランドが一気に詰め寄って僕の胸ぐらをつかんだ。

ほとんど唾がかかるような距離感で彼は憤怒の表情を浮かべて叫んだ。


「いいか? お前が言っているのはすべて仮定だ。可能性だ。しかも飛び切り甘え切った、な。ひとつでも予想が外れた瞬間、俺たちは滅びる。そんなものに乗っかる奴がどこにいる」


僕は何も言えなかった。ランドの言うことは正しい。結局すべて想像でしかない。奴に確かめる以外にすべてはない。そして奴が本当のことを言う保証などどこにもない。


ランドは僕を放り出すとリンを連れ立って部屋を出ていく。

その去り際、ランドが言った。


「今までのよしみで最後に一言言っておいてやる。お前、人工知能といっしょにいすぎておかしくなっちまってるぜ」

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