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16-B.尾行

さて、と僕はふたたび締まりきった重厚な扉を確認すると、振り返った。

ここまで誰にも会わなかったし、どんな警報システムにも引っかからなかった。これがマテニによるものかはわからないが、この幸運がずっと続くとは限らない。

やると決めたのなら手早くやってしまわないと。

なるべく人に出会わない道を選んで、僕は病院への道を歩き出した。


真っ白に磨き上げられたビル群。ここで生まれ育ったはずなのに、その美しさよりもよそよそしさが際立って感じられる。外のコロニーと比べれば時代が千年は離れているほど洗練された場所であるはずだが、そのことに感動することはこの先も恐らくないだろう。

病院のある丘への道はひときわ大きくて美しくに舗装されている。さすがにその道にはいくらか人通りがあった。

僕は一つ奥に入った路地からそれを眺めて、人が途切れるのを待った。見ていると一つ分かったことがあった。彼らは先ほど心理調整で見たように完全に生気を失った顔をしていたが、比較的足取りはしっかりとしていた。

その足で彼らはおそらく一つの場所に向かっていた。

好奇心に負けて僕はそのあとをつけることにした。マテニが言っていたことがなにかわかるかもしれない。


『おい。病院はそっちじゃないぞ』


パトリオが脳内で言うが、僕は無視をした。


『スミコを助けた後あとにマテニをどうにかできないんじゃ、助けた意味がない。少しでも情報を今のうちに得ておきたい』

『まあ、お前がいいのならこれ以上は止めないが』


気付かれないギリギリの速度で僕は歩く人を追いかけていく。

病院方向に大通りを進んだ彼らは不意に大きく左にそれる。

その先を進んでいくと、見たこともないほど大きな建物が不意に現れた。ドーム状のそれが完全に道をふさぐように建っている。僕は歴史の授業で見た野球というスポーツをするためのドームを思い出した。今の今までここにこんな建物が立っていた記憶はない。僕がこのコロニーから排除されてから建築されたのだ。だとしたらとんでもない速度だ。

まるで悪夢のような唐突さだった。


僕はあたかもコロニーの一員であるかのようにふるまい、その敷地内に入っていく。

そのままぐいぐいと進み、ドームの入り口の一つをくぐる。中は階段になっており、そのまま上がるとドーム内の全景が見回せた。


『何かを作っている。パトリオ、何かわかるか』

『いや、何もわからない。なんだこれは』


とんでもなく大きな黒い塔のようなものが横たわっている。よく見るとそれは電子部品の塊であることが分かった。ドームの端から端まであるそれに多くの人が何か作業をしている。ここからだと巨人の足にたかる蟻のように見えた。


『これがマテニの作戦なのか』

『見たところ、大半の人間がこの作業に関わっているようだ。通りで表に人がいないわけだ』


不意に周りの人からの怪訝な視線を感じ、僕は急いでドームを後にする。


そうして、僕はあの坂にようやくたどり着いた。

坂を一人一歩ずつ踏みしめて上りながら、僕は前にここに来た時のことを思い出していた。

思えばあの時から状況は大きく変わってしまった。

どうして世界は僕たちはこんな風になってしまったのか。

堂々巡りにそんなことを考えているうちに坂を上り切り、病院の前に立った。

それほど長く離れていたつもりはないが、以前より明らかに生気が失われている。

というより明かりすらついておらず、扉も開けっ放しになっている。


まさか。


誰かに見つかるリスクも構わず、僕は病院の廊下を走ってスミコの病室に向かう。


『院内のすべての機器が動いていない。様子がおかしい』


今はパトリオの言葉を聞いている余裕はない。僕は頭は完全に真っ白になっていた。

スミコの病室の鍵は開いている。僕は病室にまさしくなだれこんだ。


「スミコ!」


スミコはいた。しかし、今にも消えてしまうそうなほど弱々しくベッドに横たわっている。

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