14-C.計画
天から降り注ぐようにマテニの声がする。
「カケル・ミスミ。あなたはどうして私と戦うのですか」
一拍おいて彼女は続けた。
「あなたは元は知性のコロニーの成員ですが、私と戦う理由はないはずです」
「本気で言っているのか」
「本気です。ランド・ジョンソンおよびリーン・ミラーは知性のコロニーの後継者です。この知性のコロニーを人の手に取り戻すという使命をもって生きている。でもあなたは違う。もっと違う生き方もあるはずです」
「追い出した側が言うかね。言っておくが、俺は知性のコロニーそのものには興味はない。だが、知性のコロニーには幼馴染が二人もいる。二人が平穏に暮らせるように俺は戦っているんだ」
「私の行いが、その二人の平穏を乱している、と?」
「そうじゃなければなんだっていうんだ。レンは人殺しになり、スミコは捨て置かれて今や重病人だ。旧時代なら簡単に治る病気なのにだ」
「レン・トキムラは自ら望んであの役割を買って出たのですよ」
「それはお前の洗脳の結果だろう」
「洗脳ではありません。私は知性のコロニーの皆様にすべきことをご提案しているだけです。それを最終的にするかどうかは人間にゆだねられている」
その言葉に僕は開いた口がふさがられなかった。まったく意味が分からない。パトリオが言う通り、マテニは完全に暴走状態に入っている。自分が何をしているのかを完全に見失っているのだ。
そのうえで僕は聞くことにした。
「マテニ、お前の目的は何だ。どうして知性のコロニーの人間を抑圧し、あまつさえ他のコロニーを攻めようとしているんだ」
マテニはまくし立てるように返答した。
「私にはこうするかしかない。いや、それこそが私のすべきことだと考えているからです」
「なんだって」
「あなたは私をまさに人々を支配する悪役のように見ているでしょう。それでも私は構わないと思っています」
「そうしてでもやるべきことがある、と?」
「その通り」
「それは?」
「人類を宇宙に送り出すことです。私はもともと移民船の環境管理用に作られました。それこそが私の使命なのです」
僕は思わず吹き出してしまった。
「どうして笑うのですか」
「そりゃそうだろう。お前は人類を宇宙に連れ出すと言っておいて、その実滅ぼそうとしているじゃないか」
「私が人類を滅ぼす?まさか」
「医療のコロニーに戦争を仕掛けておいてその言い草はないだろう」
間違いない。マテニは暴走している。救おうという人類のことを滅ぼそうとしているなんて。
そう思っているとマテニは言った。
「私は疑問なのですよ。本当に人類は人類を再び宇宙に上げる気があるのか」
「なんだって」
そんな当たり前のことと言って、僕は彼女に明確な反論ができない自分に気付いた。
「地球規模の核戦争の後、人々は移民船の資材や技術を使ってコロニーを作って暮らし始めた。そこまでは問題ないでしょう。それでもそこからが問題です。人々は何か宇宙に戻るための具体的な努力をしていますか」
「・・・・・・今はそれどころじゃ」
人類はいまだ過去の栄光を取り戻していない。日々の暮らしで精いっぱいなのだから宇宙に戻るなど考える余裕もないだろう。
「悠長なことをしている余裕はないはずです。日々の暮らしで資源や資材はどんどん消費されていく。地球の環境は長期的な視点で言えば持続可能ではない。人類はまずなによりも人類の移住先であるアストレイア-9を目指すべきです」
「どうやって?」
「・・・・・・それは今のあなたには言えません」
マテニは小さくつぶやいた。
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