ようこそ、復讐屋へ
「ただいま戻りました」
「!・・・美波の能力で帰ってきたのか。エルド、紅茶をいれてくれ」
「かしこまりました」
何事もなかったかのように、エルドは部屋の奥へと入っていった。
「今回は君が復讐をしなかったからあの程度で済んだ。だが、普通復讐心に取りつかれた奴は自分自身でめちゃくちゃにするほうが多い。何せ、殺したいほど憎んでいる奴が多いからな。それでも君はここで働きたいか?」
「はい。正直自分以外の人がどうなろうと私には関係ありませんから」
「そうか・・・改めて歓迎する。ようこそ、復讐屋へ」
Kはにこりと微笑んだ。相変わらず顔は無駄にいい。
「よろしくお願いします」
「なにか聞いておくことはあるか?」
「Kは復讐心が代価としてますが、従業員に支払うお金はどこから出ているんですか?」
Kは微笑んだままなにも答えなかった。きっとお金の出どころはろくでもないところなのだろう。
「じゃあ・・・暗闇に消えた人間は、現実の世界ではどういう扱いになるんですか?」
「行方不明だ。その場に居合わせた復讐の依頼人は疑われることはないようになっている」
「どうやって?」
「・・・だいたいの人間が自我が保てなくなり、精神科へ入るか、自分で消える。まれに自我が保てたままでも、僕が扉で遠くへ飛ばしてアリバイをつくる手伝いをする」
そこまで聞くと、エルドがKの紅茶と何かの契約書をもってきた。羊皮紙?でできている。
「契約書だ。そこにサインをしたら、この部屋の制限がなくなる」
「制限?」
「実際に書いてみればわかる」
あまり深く考えるのも面倒くさい。私が羊皮紙に自分の名前を書くと、空間がぐにゃっと曲がった。
「目をあけて周りをみてみろ」
「・・・え?」
先程までみていた風景とは全く違う。薄暗い図書館から、洋風のカフェのような場所になった。
「さっきまでの部屋は表向きだ。本来はこっち。あんな薄暗い部屋にいたら気が滅入るだろう」
「それはそうですけど・・・こんなに広いとはおもいませんでした」
「薄暗くなっている分、暗い場所には目がいかないように幻術のようなものがかかっているんだ」
もうなんでもありだ。この先何が起こっても驚かない気がする。
「ようこそ、復讐屋へ。改めて、歓迎いたします」
エルドが奥からケーキと紅茶を運んできてくれた。
「ありがとうございます。これからよろしくお願いします」
こうして、私は復讐屋で働くことになったのだ。




