はじめての依頼客
私が復讐屋で働き始めて1週間経った。
Kは本当に部屋から出ることがない。エルドも滅多に外に出ていないようだ。
そのため、私の仕事はエルドが食事を作る際に使う食材の買い出しだった。
前までエルドがしていたようだけど、Kの能力で扉を開かないと行き来ができずに不便だったらしい。
でも私は自由に入ることができるため、目的地までKに扉で送ってもらったら帰りは自分で帰ってこれる。
「では、今回はこちらをお願いします」
エルドに買い物メモを渡されて私は扉をくぐった。
基本的にエルドが使う食材は高級品ばかりだ。私の給料もしっかり払ってくれるというし、いったいどこからそんなお金を手に入れているんだろう。
不思議に思いながら買い物を済ませ、人目につかない路地から扉をくぐって部屋に戻ると、人が訪れていた。部屋は薄暗い図書館に戻っている。
・・・明らかにヤ〇ザの風貌だ。よく見ると机に小型のナイフが突き刺さっていた。
「つまり、この依頼は引き受けられねぇってことか?!」
「あぁ。それに君は対価を支払うことができない」
「ふざけんじゃねぇ!!」
その人はKの胸倉に掴みかかったが、その腕をエルドが掴んで真顔で締め付けた。
「くそ・・・離しやがれ!!」
まさかこんな細身の男が恐ろしく強い力を持っているなんておもわないだろう。
「先にKを離してください」
「・・・ちっ」
男がKを離すとエルドもその男から手を離した。
「ここは誰でも消してくれる殺し屋だと聞いた。だが、お前らは理屈ばかり並べて依頼を受けようともしねぇ。ふざけんじゃねぇよ・・・今にも妹が殺されそうになってるっていうのによ」
「・・・まず、僕たちは殺し屋ではなく復讐屋だ。それに、対価を支払うことができない君の依頼を受けてやろうという気持ちも起きない」
「対価だと・・・?金ならいくらでも払ってやるよ」
男は自分のかばんから大量の札束を取り出してKに投げつけた。
でも、Kはそれに微塵も興味を示さずただ男のほうをみつめていた。
「僕が欲しいのは金じゃない。だからこんなものは不要だ。だが、君には復讐心と呼べるような強い感情を持ち合わせていない。だから、僕は君の依頼を受けることはない」
「復讐心だと・・・ふざけんじゃねえ!妹を殺そうとしたやつを殺したい。それのどこが復讐心じゃねえってんだ」
「残念だが君のそれは復讐心とは呼べない。エルド、引き取ってもらってくれ」
エルドが無言で男の両腕を掴んでズルズルと扉のほうまで引っ張ってきたので、私はそっと扉の前から退いて道をあけた。
そして、男が喚き散らしているのをお構いなしに扉の外に放り投げたのだった。
バタンと音を立てて扉が閉まると、エルドが私におかえりなさいといって持っていた袋を受け取ってくれた。
「ありがとうございます、エルド。ただいま戻りました、K」
「あぁ」
「このあとは何をすればいいんでしょうか」
Kに聞くと、Kは少し驚いたような顔をして私を見た。
「君は本当に周りへの関心がないな。今の騒ぎを見て不審にはおもわなかったのか}
「え・・・別に。依頼者を見たのは初めてだったなと思ったくらいです」
そういうとKは小さなため息をついて私を手招きした。
「このナイフをエルドに持って行ってくれ」
「はい。わかりました」
先程の男が刺したであろうナイフをKから受け取り、キッチンにいたエルドへナイフを手渡した。
エルドはそのナイフをキッチンのさらに奥にある貯蔵庫にもっていったので、私は再びKのところへ戻った。




