契約成立
・・・温かい。死後は温かい世界だったのか。それにふかふかしている。
そっと目を開けると、そこにはどこか見覚えのある天井が広がっていた。
紅茶のいい香りがして、どこかで本をパラパラとめくる音がする。
「・・・うん?」
「やっと起きたか」
その声に私は飛び起きた。周りを見渡すと、本当に見覚えのある部屋だった。
「ここは・・・復讐屋の部屋ですか?」
「あぁ。ここで丸1日眠ったままだった」
私が寝ていたのは、部屋の端にあったソファだ。狭いソファで寝ていたせいか、体中が軋んで悲鳴を上げていた。
「文句は言うな。寝かせていただけ感謝されたいくらいだ」
「・・・ありがとうございます。でも私はなんでここにいるんですか」
「君がこの部屋の扉を呼んだんだろう。しかも、扉を開けることなく突き破って入ってきたんだ」
そういわれ、私は自分になにが起こったのかをしっかりと思い出した。
あいつらに屋上から落とされて、途中で気を失ってしまった。
「君のその復讐心がここの扉を強く呼び寄せたし、僕もそのくらいの心なら依頼を受けてもいいと思っている。君はどうしたい?」
「どうもこうも・・・向こうの時間を止めることはできないと言ったのはKですよね。私がいま元の世界に戻ったとしても、落ちて終わりなんじゃないですか」
「それは心配ございません。美波さまが死んでしまうようなことはありませんよ」
奥からエルドがでてきて、私にホットココアを出してくれた。がちがちになった体に甘いココアが染みた。
「でも、報酬は?復讐屋というほどなのですから、お金が必要なのでしょう?」
「いいや。僕はその復讐心がもらえればそれでいい。お金は必要ない」
またよくわからないことを言われたが、元の世界で死なずに済むならそっちのほうがいい。
「じゃあ、お願いします」
その一言にKが二コリと笑った。営業スマイルなのだろうか。
ソファから立ち上がると私のほうに近づいてきて、頭をガシッと掴まれた。
「じゃあ、先に報酬を受け取る」
にやり、と不気味な顔が見えたのを最後に、私は再び意識を手放したのだった。




