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契約逆転 オーガと魔物使いの主従生活  作者: 山田二郎
第二部

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第四十八章 ラナの武器

よろしくお願いします

ケリュネには数日待ってほしいとマリーが説得し、小屋に預けてから宿に戻った。


翌日、クレアの武器屋へと向かう。道中、ラナに武器が必要か尋ねてみた。


「……武器、欲しい」


ラナがぼそりと呟いた。もう、ゾンビ犬を素手で殴りたくはないらしい。


店に到着すると、鎧とメイスを整備に出す。俺はローブを羽織り、少し離れて待機した。


ラナの武器について、マリーがクレアに相談を始める。


「今までは、素手で殴ったり、爪で戦ったりしていたので……武器を使うのは、初めてなんです」


「なら、とりあえず一通り振ってみようか」


クレアがそう言って、店にある武器を並べていった。短剣、長剣、槍、メイス、ハンマー――ラナは一つずつ手に取り、構えてみる。


だが、どれもしっくりこないらしい。腕を組んで首を捻り、最後にメイスを手に取った。


「どうしても、って言うなら、これかな。……でも、棒の先の重りが邪魔だね。棒だけでいいや。ゾンビ犬に触らなければ、それで十分だし」


投げやりな言い方に、俺は口を挟むことにした。指輪に魔力を通し、話し始める。


「投げやりになるな、ラナ。目標は、一人で十階の門番二体を倒せるような武器だ」


ラナが唸りながら考え込む。


一方で、クレアが目を丸くしてこちらを見ていた。


「マ、マリー。今、ツヨシがしゃべったのかい?」


「はい」


「オーガなのに、話せるのかい?」


「指輪をつけたら、話せました」


「……そうか。話せたのか」


クレアは何度も頷きながら、まだ信じきれない様子だった。マリーが向こうで補足の説明を始めているようだったが、今はラナの武器選びの方が先だ。俺は構わず、ラナへと視線を戻した。


「そう言われても、武器なんて使ったことないよ。あ、毒のある魔物が来た時は、棒で追い払ったことはある」


「武器の心得がないなら、とりあえずメイスも悪くないけどね」


話の区切りがついたのか、クレアがこちらの会話に加わってきた。


「でも、これだと素早く攻撃できないんだ。この、重りの無い棒だけの武器はないか?」


ラナがメイスを振り回しながら、そう尋ねる。確かに、メイスではラナの俊敏さを活かしきれない。


「あ、そう言えば……ちょっと待ってな」


クレアはそう言って奥へと引っ込み、しばらくして、五十センチほどの金属の棒を二本持って戻ってきた。


「ずいぶん前に、一括でまとめて買い取りした荷の中にあったんだけどね。ただの棒だし、倉庫の奥に置いて忘れてたんだ」


「お、これは良いね。ところで、棒の横に短い棒がついてるけど」


「これは多分、持ち運びのためだね。ここがあると、ベルトに差して固定しやすい。それに落としても転がっていかないから便利だよ」


俺はクレアの持ってきた棒から、目が離せなかった。


あれは、どう見てもトンファーだ。


「二本一組で売られたものだけど、一本だけでも売るよ」


二人の話に割り込み、俺はクレアに言った。


「その棒の使い方を教える。中庭に、模擬戦用の剣を持ってきてくれ」


「あ、あぁ、わかった。……マリー、ツヨシが棒の使い方を教えてくれるそうだ。どうなってるんだ」


クレアは混乱した様子で、マリーに視線を送った。


「クレアさん、棒を教えてもらうのはラナですよ? それより、早く中庭に行きましょう」


マリーがそう促すと、クレアは慌てて剣を取りに向かった。


中庭で、俺は一旦オーガの姿へと戻った。万が一剣が当たっても、この体ならば問題ない。


クレアが剣を構える。俺も両手にトンファーを構えた。


最初の一撃は、様子を見るような振り下ろしだった。俺は左のトンファーを斜めに当て、剣を横へと流す。剣先が空を切り、クレアの身体が僅かに泳いだ。


「……なるほど」


クレアが体勢を立て直す。今度は横薙ぎ。右のトンファーで受け、そのまま手首を返す。剣の軌道が下へ逸れ、刃が地面を掠めた。


クレアの目つきが変わった。


振り下ろし。横薙ぎ。突き。


先ほどとは明らかに違う速さで、次々と剣が繰り出される。


俺は左で流し、右で弾く。右で受け、左へ流す。迫る刃を最小限の動きで次々と捌いていく。


トンファーと剣が触れるたび、澄んだ金属音が中庭に響いた。


クレアはさらに踏み込む。斜めからの斬撃。返す刃。続けざまの突き。


それらを全て外へと逸らし、最後の一撃を待つ。


クレアが大きく振りかぶった。両手で握った剣が、一直線に振り下ろされる。


俺は両手のトンファーを交差させた。鋭い音とともに剣を受け止める。そのまま力を逃がさず、剣を止めた。


クレアが目を見開く。しばしの沈黙が流れる。


やがてクレアは剣を下ろし、大きく息を吐いた。


「……なるほど。そう使うのか」


隣で見ていたラナが、呆然と呟く。


「……すげえ」


その後、クレアにもう一度斬りかからせる。俺は本体を持ち、取っ手の部分を剣に絡め、クレアの手から奪い取った。地面に音をたてて剣が落ちた。


ひとまずこれでトンファーの使い方については終わりにした。


店の方に戻ってから、ラナの防具についてクレアに相談した。全身を覆うのは嫌がるので急所のみを重点的に守れる部分鎧とした。ラナ本人はトンファーを気に入って中庭で振り回していた。

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