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契約逆転 オーガと魔物使いの主従生活  作者: 山田二郎
第二部

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第四十一章 戦利品

よろしくお願いします

監督兵と相談し、燃えていない荷の一部を、鹵獲した馬三十頭に積み分けた。敵の補給部隊を殲滅し、物資と馬三十頭を持ち帰るだけでも十分な功績だろう。燃え残った十一台の馬車は、道の真ん中で車軸を破して放置することにした。持ち帰れない分の荷は、倒した敵兵と共に焼いた。


マリー、ツヨシ、ケリュネを除く、監督兵を含めた二十二人は、馬三十頭と共にバロメア軍の陣営へと引き返すことになった。


「姉御、気を付けて下さい」


ケインがそう声をかけてきた。夜明け前、その一団は森を抜けて去っていった。


敵の警戒が強くなる前に、次の部隊を仕留めておきたい。俺たちは一度森の拠点に戻り、昼過ぎまで仮眠を取った。


昼を過ぎた頃、馬車の残骸が見える場所まで戻り、少し離れた草むらから様子を窺うことにした。


しばらくすると、敵国方向の道の先に、次の補給部隊が見えてきた。斥候らしき数人が先行し、道に転がる馬車の残骸に気づいて周囲を警戒し始める。ケリュネもマリーも、草むらの中でじっと動かずにいた。


やがて、馬車を円形に並べる作業と並行して、壊れた馬車を道の端へ退かす作業が始まった。一台につき七、八人ほどが集まり、力を合わせて動かしている。一台動かすのに三十分以上かかっていた。


やがて日が暮れ、夜になった。今は監督兵もいない。


(マリー、やるぞ)


念話でそう伝えると、マリーはうなずいてケリュネの背にまたがり、杖を構えた。俺は円形に並んだ馬車を見据えながら、その時を待った。


ケリュネが駆け出す。


敵との距離が縮まるとマリーはケリュネの背から、馬車へ向けて火球を放った。距離はおよそ六十メートル。油壺とは比べ物にならない火柱が、馬車から立ち上る。そのまま馬車の周りを一周しながら、マリーは連続で火球を撃ち込んでいった。円陣の外を固めていた護衛たちも、駆けるケリュネには追いつけない。マリーから放たれる火球によって次々と馬車と積み荷は炎に包まれていった。


一周し終えたマリーと入れ替わりに、俺は馬車へと向かって走った。燃える馬車を飛び越え、内部へと降り立つ。目についた兵を、片っ端から棍で薙ぎ払っていく。


ろくな抵抗も受けずに兵を殲滅すると、燃えていない馬車の一部を持ち上げ、外へと投げ飛ばした。火に囲まれ暴れる馬を必死になだめていた御者が、こちらに気づいて腰を抜かしている。俺は指輪の力を使い、人の言葉で告げた。


「今すぐ砦の方へ向かえば、命は取らん」


逃げる御者たちを横目に燃え上がる円陣形から外に出ると、数名の兵が呆然と立ち尽くしていた。こちらに気づき剣を構えるが、切っ先が震えている。同じように砦の方角へ向かうよう告げたが、動かない。歩いて近づき、腰の引けた一人を棍で殴り飛ばした。もんどりうって燃える馬車に突っ込む兵の姿を、他の者たちが見ていた。


「砦へ向かうか、死ぬか選べ」


その一言で、残った兵たちは砦の方角へと走り去っていった。


しばらくして、離れていたマリーが戻ってきた。


「お疲れ様でした」


(大した事はない)


空いた円陣から馬を連れ出し、草むらへと移動させる。ケリュネがうまく誘導し、三十頭の馬は草むらでおとなしく休んでいた。


兵が道の端へ退かしていた壊れた馬車を、俺は再び道の真ん中へと戻した。先の戦いで燃えずに残っていた馬車二台も追加で破壊し、道に放置する。多少なりとも、嫌がらせにはなるだろう。運ぶ手段のない馬は、そのまま残して森の拠点へと戻った。


朝方まで休み、日が昇ってから行動を再開した。そろそろ警戒が強まる頃合いだろう。十分すぎるほど働いたとも思う。伯爵の夜営地に戻っても良いが、身軽なうちに奪われたという砦を一度見ておくのも悪くないかもしれない。


そうマリーに伝えると、マリーも同意した。


街道沿いを、砦の方角へと歩く。万一誰かに見られた時のため、マリーはフードを深く被った。


しばらく進むと、遠くに砦の方角から、馬車の一団がやってくるのが見えた。脇に避け、草むらに隠れ様子を窺う。馬車は二台、多くの人が乗っているのが見て取れた。かろうじて見える様子からして、怪我をしている者が多いようだった。傷病兵を後方に下げているのだろうか。


少し考え、馬車の残骸がある場所まで先回りすることにした。見た限り、護衛の数もそう多くはなさそうだった。傷病兵ならば、襲撃して砦へ送り返すのも一つの手だ。


馬車が森に入る。木々に隠れながら見ると、護衛はおよそ十人ほど。馬車の中の兵は、皆一様に暗い顔をして、元気がないように見えた。やはり、傷病兵らしい。


マリーに、このまま一人で襲撃する旨を伝え、森の中で待機させた。俺は道に立ち塞がり、棍を肩に担いだ。やがて俺を見つけた先頭の兵士が声を上げる。


「周囲を警戒しろ!」


「周囲敵影ありません!」


「一人だと? 馬鹿な……もしや、馬鹿なのか?」


先頭の兵が、訝しげにこちらを見ながら歩み寄ってくる。


「お前、何のつもりか知らんが……」


言葉の途中で、棍を薙いだ。男の体がくの字に折れ、吹き飛んでいく。そのまま一番近くにいた敵に駆け寄り、棍を振り下ろした。盾を構えたが、盾ごと叩き潰される。


そのまま敵を全滅させると、馬車の荷台から歓声が上がった。よく見れば、乗っていた者たちは皆、手足を縄で繋がれている。


マリーと合流し、俺たちはバロメア伯爵軍の別働隊だと名乗り話を聞いた。こいつらは敵に捕まり、捕虜として後方へと送られていたらしい。


とりあえず全員を解放し、体力のある者を十数名選んで、仮拠点まで戻ることにした。食料をケリュネに積み、馬を放した場所まで行くと、まだそこに馬たちがいた。手綱をつけ、馬車の場所まで引き返す。体力のない者は馬に乗せ、歩ける者は徒歩で、道を離れて遠回りしながらバロメア軍の拠点を目指した。


道中、若い兵に声をかけられた。


「あの、どうすればあなたのように強くなれますか」


変身すれば体力が落ちる。面倒だったので、マリーに任せることにした。マリーは毎日ダンジョンで戦っているからだと答えていたが、若い兵は少し不機嫌そうな顔をしていた。実力も分からない、自分より年下の娘に助言されたのが、気に入らなかったらしい。


こまめに休みを挟みながら、二日ほどかけて、俺たちはバロメア伯爵軍の拠点に辿り着いた。


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