第三十二章 魔法剣
よろしくお願いします
外へ出ると、空は夕暮れに染まっていた。
そのまま換金所へと向かう。余計な面倒を避けるため、門番の魔石と剣は出さず、九階までのものだけを換金した。
今日は色々とあり、少し疲れた。宿に戻って食事を済ませると、そのまま休むことにした。
翌日、少し遅く起きて朝食を取ってから、今後について話し合った。
十階の魔石と、燃える剣を組合に出せば、面倒事が起きる可能性がある。だが、今後さらに奥へ進むつもりなら、換金できないままでは困る。どうすべきか考えていると、マリーが提案した。
「クレアさんに、相談してみませんか。あの人は……信用できると思います」
確かに、少し話した感じでは、裏表のない人物に見えた。
(分かった。ただし、万一の時は街を出る覚悟をしておけ)
マリーは頷いた。
「あと、燃える剣の使い道も、聞いてみましょう」
話がまとまると、俺たちは魔石と剣を持ち、ケリュネと共に武器屋へと向かった。
店に着くと、クレアが声をかけてきた。
「マリー、いらっしゃい。鎧のお兄さんも、いらっしゃい。今日は鎧の調整かい? 普通は脱いで持ってくるもんだけどね」
クレアが軽く笑った。
「いえ、そうではなくて……武器を見てほしくて」
マリーは剣を取り出した。鞘から少し抜き、刀身を見たクレアが、感心したような声を上げる。
「へぇ、魔法剣じゃないか。この辺じゃ珍しいね。これがどうしたんだい?」
「その……魔法剣は、初めてで……使い方とか、分かりますか? 魔力を通したら火が出て、びっくりしたんです」
「ははーん、こいつは火の魔法剣なんだね。でも、使い方も分からないのに、よく買ったね! 魔法剣なんて、高い買い物だろうに……」
話の途中から、クレアの目つきが真剣味を帯びた。
「マリー。これ、買ったんだよね?」
マリーは黙り込んだ。
「……店を閉めるから、ちょっと待ってな。少し狭いけど、外のお兄さんの従魔も店の中へ」
そう言って、クレアは店を臨時休業にすると、戻ってきた。
「マリー、何がどうなってるか、教えてくれるかい?」
マリーは順を追って、十階まで行ったこと、門番を倒したこと、そこで剣を拾ったこと、それを売ろうとすれば騒ぎになるのが怖くて相談に来たことを話した。
話を聞き終えたクレアは、コップと水差しを手に取った。
「なるほどね。順番に話をしよう」
一口水を含んでから、クレアは話し始めた。
「魔法武器は、主に三種類に分けられる。一つは強化――魔力を通すと、切れ味が上がったり、頑丈になったりするやつだ」
「次に魔法。今回のそれだね。魔力を通してから剣を振ると、魔法が飛ぶ。威力は一定で、使える魔法は一種類だけって聞いてる」
「最後はその他。何が起こるか、使うまで分からない。使っても、何が起こったか分からないことすらある」
クレアはそう説明すると、水を一口飲み、息を吐き出した。
「火の魔法剣は、比較的よく出る種類だ。それ自体は、そこまで珍しいもんじゃない。問題は、このダンジョンで出たってことだ」
「魔法武器は、ダンジョンの十階以上からしか出ないと言われてる。今の伯爵のお祖父さんの代に、魔法剣を求めて大々的に動いたことがあってね。結果、冒険者にも兵士にも大きな被害が出て、迷宮に入る者が減って、領内の収入がガクッと落ちた。かなり大変だったらしいよ。その後、頑張って立て直して、今があるんだ」
「バロメアのダンジョンで魔法武器が出たとなると、どうなるか……私にも分からないよ」
クレアはそう締めくくった。
「そうですか……」
マリーが不安げに呟くと、クレアは少し表情を和らげた。
「まぁ、魔石は大丈夫だと思うよ。大ダンジョンや魔の森からは、ここよりデカい魔石も出るって聞いてるし。ちょっと有名になるくらいさ」
「さて、話が長くなったね。後は、お兄さんの鎧の修理だね。ここで外すかい?」
クレアがそう言って、俺の方を見た。マリーがこちらを窺うような目を向けてくる。
(ここまで来たら大丈夫だろう。伝えろ)
マリーは頷いた。
「あの……実は、ツヨシさんは、私の従魔なんです」
「ん? マリー、何を言って……」
クレアの視線の先で、俺は兜を外した。
がしゃん、と乾いた音が響いた。クレアの手から、焼き物のコップが滑り落ち、床で砕け散った。
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