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契約逆転 オーガと魔物使いの主従生活  作者: 山田二郎


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第二十九章 魔力の上限

よろしくお願いします

翌日、朝からダンジョンへと向かった。


入り口で入場料を支払うと、受付の職員が不思議そうな顔をした。


「毎回料金を払うより、登録した方が安上がりだと思いますけどねぇ……」


そう呟きながらも、いつも通り通してくれた。俺は特に気にせず先へと進んだ。


一階と二階は、俺一人であっさりと蹴散らして通り過ぎた。三階では、槍と剣のスケルトンが現れた。マリーは迷いなくメイスを構え、バックラーで槍を弾き、剣の振りをメイスで受け流してから、それぞれのスケルトンを一撃で砕いた。


「二体なら、問題なさそうです」


危なげのない様子で、マリーはそう報告した。俺たちはそのまま次の階へと進んだ。


四階に降りたところで、俺はマリーに魔法について尋ねた。


(拘束と火球で、魔力の消費はどれくらい違うんだ)


「うーん……はっきりとは分からないですけど、感覚だと、多分……一・五倍くらい違う気がします」


正確な数字は出せないらしい。ならば、拘束の魔法を基準にして、おおよそを把握すればいい。この階では、拘束の魔法で敵を縛り、メイスで仕留める、という流れを繰り返すことにした。拘束の魔法を毎回三体にかけることで、使用回数の把握がしやすいだろう。さらに、魔法と武器の切り替え、メイスそのものの練度を上げる訓練も兼ねる。


しばらく進むと、通路の先に三体のスケルトンが姿を現した。剣、剣、槍――マリーは杖を構え、一体ずつ狙いを定めて詠唱を放った。


「鎖縛!」


一体目の剣持ちの足元から光の鎖が這い上がり、全身を完全に縛り上げる。


「鎖縛!」


二体目の剣持ちにも同じ鎖が絡みつき、身動きが取れなくなった。


「鎖縛!」


最後に槍持ちの四肢が締め上げられ、三体とも完全に動きを封じられる。マリーは杖をホルダーへと押し込み、メイスを引き抜いた。


まず一体目の剣持ちへ。メイスを大きく振りかぶり、そのまま頭部へと振り下ろす。乾いた音とともに、骨が砕けて崩れ落ちた。すぐさま向き直り、二体目の剣持ちへ。再びメイスを持ち上げ、同じように振り下ろす。拘束されたまま、ろくに抵抗もできず、二体目も骨片となって地に伏した。


最後の槍持ちへと歩み寄り、三度目のメイスを振り上げる。締め上げられた体は僅かに震えていたが、それだけだった。振り下ろした一撃で、槍持ちも粉々に砕け散った。


「三回とも、しっかり縛れてました」


マリーが安堵したように息を吐いた。


次の敵を探しながら歩く途中、俺はふと聞いてみた。


(メイスは、振り下ろししか使わないのか)


「振り下ろししか、教わってないです。クレアさんが、色々やるより基本を一つやる方がいいって……。あと、突きは隙が少ないから、牽制とか防御代わりに使えるって、教わりました」


なるほど、と俺は頷いた。


(分かった。次からは、メイスの突きとバックラーの殴打で戦え)


「え?」


マリーが意外そうな顔をした。メイスの一撃は確かに強力だが、ここまでの敵にはいささか過剰だ。それに、振り切った後は姿勢が崩れ、次の攻撃までに時間がかかる。俺はそう説明し、拘束されたスケルトン相手なら、隙の少ない突きとバックラーの殴打だけで十分だと伝えた。


「……分かりました」


マリーが頷いたところで、ケリュネが不意に警戒を見せた。曲がり角の先から、剣持ちが二体、盾持ちが一体、計三体のスケルトンが現れる。


マリーはすぐさま拘束を放って動きを封じると、剣持ちの一体をメイスの突きで胸骨を砕いた。隣の剣持ちにはバックラーで殴打を叩き込み、盾持ちの横から頭部を突く。全て、一撃で終わった。


「……こんなに、あっさり」


マリーが少し驚いたような顔をしている。


(この調子で行くぞ)


「はい!」


そこから先は、鎖縛、鎖縛、鎖縛――突く、殴る、突く、の繰り返しだった。実戦を重ねるうちに、杖からメイスへの切り替えも、当初より素早く滑らかになっていく。


五回ほど戦い終えたところで、マリーが息を整えながら報告した。


「魔力が、少し減ってきた感じがします。まだ魔力不足の感じは無いです」


さらに五回戦ったところで、再び声が上がった。


「結構、減った気がします……体調は変わりないんですけど、何ていうか……体の中の魔力が、さらに減った感じがします」


(体調に何か表れたら、すぐ言え)


「はい」


そのまま次のスケルトンを探して進む。


「鎖縛! 鎖縛! 鎖縛……あっ!」


マリーが一瞬、驚いたような顔を見せた。だがすぐに気を取り直し、そのまま駆け寄って残る敵を蹴散らす。


戦闘が終わると、ケリュネがマリーの傍らへと近づき、鼻先をすり寄せた。マリーは小さく礼を言いながら、その首筋を撫でる。


(どうした)


「……ケリュネとの契約が、一瞬揺らぎました。魔力はまだあるんですけど、これ以上魔法を使うと、契約が切れちゃうかもしれません。ケリュネは大丈夫だって言ってくれてるんですけど……」


マリーの表情には、隠しきれない不安が滲んでいた。今日のところは、ここで切り上げることにした。


地上に戻ると、魔石を換金し、屋台でいくつか買い物をしてから宿へと帰った。買い物のとき、マリーは干し果物を扱う店で、いくつか品を選んで買い込んでいた。


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