第二十八章 十階の魔物
よろしくお願いします
マリーもメイスを構え、六階の通路で現れたスケルトンと戦った。バックラーで攻撃を反らし、振り下ろしたメイスの一撃で骨の身体が鈍い音を立てて崩れ落ちる。戦い終わってからマリーは小さく息を吐いた。
「……前に戦ったスケルトンより、力が強くて丈夫な気がします」
確かに、階層が深くなるほど骨の密度が増しているような感触があった。俺は魔石を拾い上げながら、ひとまず地上へ戻ることにした。
ダンジョンの外へ出ると太陽はまだ高かった。水も食料も十分に残っている。
出張所へ向かい、魔石を袋から取り出し買い取り用の台へと置いた。それを見た受付のおばさんが目を丸くした。
「あら、今日はずいぶんとたくさん取れたわねぇ」
続けて、その中に六階の魔石を二つ見つけると、さらに驚いた顔をした。
「あら、二人で六階まで行ったの? お嬢さん、見た目によらず強いのねぇ」
「ありがとうございます……」
マリーが少し照れたように答えると、おばさんは続けて言った。
「二階から五階の魔石は同じ値段で買い取りなの。六階から九階も同じ値段だから、次から沢山あるなら袋を二つに分けると査定が早く終わるわよ」
おばさんは書類を取り出しながら続けた。
「さて、六階以降の地図を買うなら許可証を出せるけど……必要かい?」
「お願いします」
「じゃあ、簡単な質問に答えてね。五階の魔物は何が出た?」
「弓を持ったスケルトンです。四体一組で、一体だけ弓を使ってきました」
「はい、いいわよ。これ許可証ね。これで六階以降の地図が買えるわよ。無理はしないでね」
礼を言って出張所を出ると、そのまま組合本部へ向かった。窓口で六階から十階までの地図をまとめて購入する。金額を確認していると、職員が改まった様子で声をかけてきた。
「十階の地図をお求めの方には、簡単な説明をさせていただいております。こちらへどうぞ」
案内された奥の小部屋には、簡素な机と椅子が置かれていた。職員は地図を広げ、指し示しながら説明を始める。
「十階は、こういう構造になっています」
地図に描かれていたのは、短い通路と、その先に広がる一つの大部屋だけだった。他の階層のような迷路ではない。
「ここに、私たちが『門番』と呼んでいるモンスターがいます。非常に強力な個体でして……正直、十階へ足を踏み入れることは、まったく推奨していません」
「どんなモンスターが出るんですか?」
マリーが尋ねると、職員は静かに首を振った。
「申し訳ございません。門番についての情報は、討伐を推奨していない都合上、一切お教えできない決まりになっております」
それ以上は聞けなかった。地図を受け取り、組合を後にする。
そのまま武器屋へ立ち寄り、メイスの運用について相談した。クレアが顎に手を当ててマリーの話を聞いていた。
「メイスと魔法の杖を、素早く切り替えたいんですけど……」
「うーん、腰にベルトをつけて、杖とメイスのホルダーを付けるって手はあるね」
そう言って店の奥から取り出してきたのは、ベルトにメイスを固定するための金属の輪と、杖を差し込める頑丈なホルダーが付いた一式だった。マリーはそれを早速腰に装着してみせる。片手で杖を抜き、また戻す動作を何度か繰り返し、感触を確かめてから購入した。
武器屋を出て宿へ戻るとケリュネから荷物を降ろし、今日の成果とこれからの方針について話し合うことにした。
マリーは椅子に腰を下ろし、軽く肩を回して息を整えている。約半日だが六階までの戦闘で疲れが出ていてもおかしくない。表情はまだしっかりしているように見えるが、俺は調子を聞いた。
(疲れはどうだ)
「大丈夫です。まだ動けます」
マリーは真っ直ぐこちらを見て答えた。
(なら、明日も迷宮へ行く。六階以降まで行かず、お前の魔力を確かめる)
「魔力を、ですか?」
(戦闘でどれくらい魔法を使えば魔力切れの症状が出るか把握する)
マリーは迷いなく頷いた。七階以降へ踏み込む前に、今の力を正確に把握しておく必要があった。
そのまま、明日の準備を整えながら、俺たちは静かに夜を迎えた。
ご意見、感想お願いします




