第二十七章 六階層へ
よろしくお願いします
朝早く、ケリュネに荷物を積み、俺たちは再びダンジョンへと向かった。
入場料を支払い、中へと入る。一階の雑魚は無視して、まっすぐに二階へと降りた。
(メイスを試してみろ)
「分かりました」
マリーがそう答えて、剣持ちのスケルトンへと向かっていく。振り下ろされた剣をバックラーで受け流し、体勢を崩したところへメイスを振り下ろした。骨は砕け、スケルトンは粉々になって崩れ落ちる。以前と比べ、ずいぶんサマになっていた。
「武器屋のクレアさんのおかげです!」
マリーが弾んだ声を上げた。あの女店主は、クレアという名前らしい。動きに大きな乱れはなく、この調子なら問題はなさそうだった。
魔物は三階で二体、四階で三体、五階で四体――階層を降りるごとに、数が増えていく仕組みらしい。
三階に入ると、敵は二体一組で現れるようになった。剣持ちと槍持ちのスケルトンだった。
俺はまず、一人でその二体を相手取ることにした。突き出された槍の柄を掴み取り、そのまま引き寄せてカウンター気味に頭部へ一撃。剣の方は、間合いを詰めて振り上げた瞬間を狙い、同じく頭部を打ち抜いた。強さの変化は、正直よく分からない。この程度なら、どちらも大した相手ではなかった。
マリーも二体相手にいけそうだったので、次の組を任せることにした。今度は槍持ちが二体。片方の突きをバックラーで防いだ瞬間、もう一体が横から突いてくる。マリーは一度体勢を立て直すと、次の攻撃を今度はバックラーで弾き、片方へと押し流した。そのまま肉薄し、メイスを大きく振り下ろす。もう一体がこちらへ向き直ろうとしたところへ、バックラーを叩きつけてよろめかせ、隙をついてメイスを振り下ろした。
「二体いると、なかなか厄介ですね……」
マリーが息を整えながらそう漏らした。
(次は魔法で二体を相手にしてみろ)
そう伝えると、マリーはケリュネの背にメイスを括り付けて、代わりに杖とバックラーを構え直した。次に現れたのも槍持ちが二体。マリーは拘束の詠唱を続けて二回放ち、両方の体に光の鎖を絡みつかせて動きを封じた。そのまま火球を二発撃ち込み、あっさりと終わらせる。
やはり、この階層の相手には過剰な火力だった。
(しばらくメイスを置いて、杖とバックラーで戦え。魔力は、鎖と火球、どちらの方が多く使う)
「拘束の方が、多く使います。でも……慣れてるのは、拘束の方です」
マリーは正直にそう答えた。
(なら、しばらく火球の方で戦ってみろ)
「はい」
続いて現れたのは剣持ちが二体。マリーの火球が一体に命中し、残る一体は俺が仕留めた。魔石を拾い、さらに奥へと進み、下へと続く階段を見つけた。
四階に降りると、通路の奥に人の気配があった。先客の冒険者パーティが、盾持ちのスケルトンを相手に戦っている。長槍を構えた男が牽制し、その隙に短剣を持った女が背後へと回り込む連携だった。危なげのない、慣れた動きだった。
戦闘が終わらなければ先へは進めない。俺たちは少し道を逸れ、別方向から先へと進むことにした。
この階から出てくる盾持ちが、さっそく現れたようだ。三体一組――盾持ち、剣持ち、槍持ちが、通路の先で姿を現した。
俺は一人でそちらを引き受けることにした。盾持ちを槍持ちの方へ殴り飛ばし、剣持ちの一撃を払って頭部を打ち抜いた。倒れてもたついていた槍持ちの胸骨を、そのまま踏み抜いて終わらせる。
次の敵はマリーに任せた。同じ盾持ち、剣持ち、槍持ちの三体組だった。マリーは杖を構え、姿を見るなり続けざまに三発の火球を撃ち込んだ。盾ごと焼き払われた一体が崩れ、残る二体も為す術なく灰になっていく。
この様子ではメイスの使い所が難しい。しかしマリーの魔法も無制限に撃てる訳ではないだろう。ひとまず、次の階層を目指すことにした。
五階に降りた。
しばらく進むと、闇の奥から甲高い風切り音が聞こえてきた。俺は反射的につかみ取ったそれを見た。錆びた鏃の付いた矢が、手の中でへし折れている。
(暗闇の奥に火球を撃て)
マリーがそれに応じ、闇の中へと火球を放つ。遠くで盾持ちが炎に包まれ、その明かりで周囲がぼんやりと照らし出された。槍持ち、剣持ち、そして弓持ちがそこにいる。俺はすぐさま踏み込み、槍の突きを腕で払って一撃、剣の斬撃を躱して一撃、次の矢を番えようとしていた弓持ちにも一撃を叩き込んだ。
掴んだ矢の感触からして、この鎧なら刺さることはなさそうだ。マリーの強化された服がどこまで耐えられるかは分からないが、ケリュネならまず問題はないだろう。これなら、十分にやっていける。
戦いが終わった後、少し進むと、薄暗闇の向こうの離れた場所で別のパーティが戦っている姿があった。矢を放つスケルトンを盾役が引きつけ、他のメンバーが手際よく各個撃破していく。
俺たちは余計な接触を避け、そのまま先へ進んだ。その後、もう一度敵と戦い問題ないと判断して、俺はマリーに向けて念話を送った。
(六階層に行くぞ)
六階に降りると、通路が急に広くなった。横五メートル、高さ四メートルほどはあるだろうか。周囲に敵の気配はない。
しばらく進むと、剣を持ったスケルトンが一体現れた。近づくと、剣で斬りかかってきたが、明らかに以前より剣の振りが速い。俺はそれを躱し、頭を殴り飛ばした。骨はバラバラに崩れ落ちる。
拾い上げた魔石は、これまでのものと比べて、僅かに大きく、色も濃かった。
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